2019年1月11日金曜日

ヒマラヤの氷河湖、温暖化による決壊問題への取り組み ネパール

Source:http://www.afpbb.com/articles/-/3204031
2018年12月27日 、GOOGLEニュースより

【12月27日 AFP】世界最高峰エベレスト(Mount Everest)の山麓にあるエメラルド色の氷河湖イムジャ(Imja)──。もし壊滅的な洪水を引き起こす恐れがなければ、この湖は見る者の目を奪う「自然界の傑作」となっていただろう。
 ヒマラヤ(Himalaya)の氷河をめぐっては、温暖化で急激に融解する恐れがあると科学者らから指摘されている。その影響で、イムジャのような湖はさらに拡大して決壊することも考えられ、大洪水が引き起こされるリスクもそこにはあるという。貧困にあえぐ小国ネパールは、地球温暖化に翻弄(ほんろう)されているのだ。
 大洪水が発生すると、水、泥、岩が高速で下流に流されて大災害となることが予想される。もし実際に起きてしまうと、重要なエネルギー関連事業や村々をのみ込みながら、人口密度の高い南部の平原まで水が押し寄せることも十分に考えられる。
 ヒマラヤ周辺ではここ数十年、どこからともなく無数の湖が出現している。2014年に実施された調査では、1977年~2010年にネパール国内の氷河の4分の1が失われ、氷河湖の数は1466になったことが分かった。
 地球温暖化で国の地形が変化する中、21の湖に潜在的リスクがあるとの指摘を受け、ネパール政府は災害を食い止めるための努力を続けてきた。
 しかし、水文気象局のリシ・ラム・シャルマ(Rishi Ram Sharma)局長は、「氷河に起きている変化を食い止めるために、われわれのような小国ができることは限られている」と話す。
■標高5010メートルでの排水路建設
 急速に拡大するイムジャの氷河湖は、周辺にある村の人々を恐怖に陥れたことがある。
 1980年代初め、標高5010メートルの場所にあるイムジャ氷河の湖は非常に小さかったが、2014年までにその大きさは3倍以上に拡大した。湖は氷河が運搬して堆積した岩の塊や土砂からなる氷堆石でせき止められている状態で、専門家らは将来的に湖が決壊する恐れがあると警告していた。
 そして、2015年に大地震が発生した。人々はイムジャ湖が決壊し、村々を飲み込んでしまうのではないかと考え、恐怖に震えたという。この地域にあるスルキャ(Surke)村の住民はAFPの取材に、「地震によって湖が決壊し洪水を引き起こすと思った。走って逃げた」と語った。
 結果的に氷河湖の決壊は起きず、1万2000人の命は守られた。だが、大地震は政治家たちへの警鐘となった。さらに専門家は政府に対し、巨大な氷河湖は時限爆弾のようなものだと警告した。
 地震によって何千人もの命が危機にひんしたことを受け、2016年末に排水路の建設事業が始まった。当時のイムジャ湖の大きさは水深150メートル、直径2キロだった。
 同様の事業としてはまだ国内2例目で、その標高と厳しいアクセス状況から事業は困難を極めると考えられた。しかしそれは同時に、氷河湖の脅威が差し迫っていることの証しでもあった。ヤクやヘリコプターを使って資材や労働者を運び、薄い空気の中、6か月をかけて排水路と早期警報システムを設置した。水深は3.5メートル浅くなり、500万立方メートル以上の水が排出された。
 国連開発計画(UNDP)の気候変動専門家ディーパック・KC(Deepak KC)氏は、「水路ができたため、たまった水は流れ出ていくようになった。これによりリスクは軽減された」と説明した。
■気候変動の被害者
 今回の排水プロジェクトの費用は740万ドル(約8億2000万円)と、近隣の富裕国や国際援助に依存する貧困国のネパールにとっては膨大な額となった。昨年の同国の国内総生産(GDP)に占める国際援助の割合は12%に上っていた。
 今回は、発展途上国における環境問題に対する取り組みを支援する地球環境ファシリティ(Global Environment Facility)が費用の8割を、残りはUNDPが支援した。
 人口2600万人のネパールの経済規模は微々たるもので、二酸化炭素排出量も中国やインドのような近隣の大国と比べるとほんのわずかだ。この隣接する2か国だけで、世界人口の約3分の1を占めている事実からも、ネパールとの規模の違いは容易に見て取れる。(c)AFP/ Paavan MATHEMA

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