2019年6月11日火曜日

エベレストのゴミ問題 酸素ボンベ、排泄物……11トンをネパール政府が回収

Source:https://newsphere.jp/sustainability/20190610-1/
Niranjan Shrestha
 今年エベレストでは、11人の登山者が亡くなっている。その原因の一つに登山者の増加があげられているが、彼らが出すゴミもまた、深刻な問題となっている。毎年数百人の登山家、シェルパ、ポーターが頂上を目指すが、大量のゴミを途中に残しており、いまやエベレストは世界でもっとも高いところにあるゴミ捨て場だという皮肉も聞かれる。
◆清掃部隊がゴミ集め なかには驚きの回収物も
 ネパール政府は4月14日から2ヶ月かけてエベレストの清掃活動を行い、11トンのゴミを回収している。ロイターによれば、20人のシェルパで構成された清掃部隊が4月と5月に、5トンのゴミをベースキャンプより上にある複数のキャンプから、6トンをその下のエリアから集めてきたという。ゴミには、空になった酸素ボンベ、ペットボトル、缶、電池、食べ物の包装材、大便、生ごみも含まれており、軍のヘリコプターに載せて、エベレストのベースキャンプからカトマンズに運び込まれた(タイムズ・オブ・インディア)。
 ゴミとともに4人の遺体が回収されており、そのうちの2遺体は、ロシア人登山家とネパール人登山家のものだと報じられている。ロイターによれば、エベレストではこれまでおよそ300人が亡くなっている。遺体はゴミとともに冬場は雪の下に隠れているが、雪が溶ける夏場になると地表に現れてくるということだ。
◆ゴミ問題への懸念 90年代から登山隊も回収
 エベレスト登頂に成功したメラニー・ウィンドリッジ氏は、フォーブス誌に寄稿しエベレストのゴミ問題を語る。同氏によれば、1980年代後半から1990年代初期はかなりひどかったらしい。当時は登るのに精いっぱいで環境保護について考える登山家も少なく、酸素ボンベからゴミくずまで、いらないものは置き捨てるか、燃やしていたという。また、クレバスのなかに放り込んでもいたそうだ。こういった昔からのやり方と登山者の増加で、エベレストのゴミ問題は作られたとしている。
 増え続けるゴミをなんとかしようと、ネパール政府は探検隊ごとに4000ドルの環境ディポジットを徴収しゴミの持ち帰りを促そうとした。また、「環境許可証」を導入し、清掃に貢献するチームには、規則を上回る人数でも登山許可を出した。この制度を利用し、1994年にアメリカのブレント・ビショップ氏のチームがサガルマータ環境探検隊としてエベレストに挑戦。登頂に成功するとともに、斜面を清掃し2.3トンのゴミを持ち帰った。その後企業の協力を得て、1990年代にもエベレストに入り、11トン以上のゴミを回収している。
◆格安登山、温暖化 ゴミ問題さらに悪化か?
 以来登山隊の意識も変わり、ゴミ対策としての制度も作られた。たとえば、2014年から登山家一人あたり少なくとも8キロのゴミを持ち帰ることが、ネパール政府から命じられている。タイムズ・オブ・インディアによれば8キロとは、登山者一人が出すゴミの量ということだ。
 また民間や政府が行う清掃登山で状況は改善されたが、新たな変化の局面がやってきているとウィンドリッジ氏は話す。低価格のエベレスト登山の運営会社がこれまでの伝統的な登山隊に取って代わり始めているとし、彼らにはゴミの後始末をするマンパワーがないばかりか、それをやる価値も理解していないと懸念を示す。
 同氏は、この先登山者がさらに増加したり、地球温暖化によって氷が解けて古いゴミが現れたりすれば、問題はさらに悪化しそうだと話している。また回収したごみの処理方法などはNGOまかせの部分が多く、ネパール政府のさらなる努力も必要だとしている。
Text by 山川 真智子

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