2019年3月12日火曜日

ネパールからの報告(下)夢のビザ 独り歩き

Source:https://www.nishinippon.co.jp/feature/new_immigration_age/article/492460/
日本語力 留学より上
 少子化が進む日本と違い、ネパールには10~30代の人口が圧倒的に多い。だが、彼らの受け皿となる産業は乏しく、若さを持て余す世代の一部が留学や出稼ぎで海外を目指す。
 現地で期待が高まる日本の「労働ビザ」解禁。若者への認知度は想像以上に高い。泊まったホテルの男性従業員(23)が「日本で働けるらしいですね。僕も日本語を勉強しようと思う」と話し掛けてきたほどだ。
 ただし、「労働ビザ」の取得は、留学よりも難易度が高い。この事実を、ネパール人の多くは正しく認識していない。
 留学の条件は、日本語能力試験で最低ランクの「N5」相当。「基本的な日本語を、ある程度理解できる」レベルだ。一方、労働ビザの条件はワンランク上、基本的な日本語を理解できる「N4」以上。「N5」に到達できない大学生も少なくない中、労働者はそのさらに上を求められる。
 介護や外食、建設など受け入れ業種別の技能試験に合格する必要もあるが、試験対策に乗り出している日本語学校は極めて少数だ。
 期待感だけが膨らみ、独り歩きする現状に、カトマンズの日本語学校経営、ラムさん(仮名)は強い危機感を抱く。「労働ビザは良い制度だ。ただし、日本人にとってはね」
 ラムさんは、韓国が2004年に創設した外国人労働者の受け入れ制度の例を挙げ、日本の新制度を厳しく見つめる。
 「同じことを繰り返すに違いない。当時は7万人が韓国語を学習したのに、実際に働けたのはわずか2千人。6万8千人の若者のお金と時間を浪費した」
 企業の目で厳しく選別され、運良く働くことができても、企業の都合で切り捨てられる。そんな同胞の姿を見てきたラムさんは「人手不足ならば留学生を雇えばいいのに、立場が弱い労働者のほうが都合がいいんでしょうね。日本人は賢い。いや、ずる賢いね」
 帰国便を待つカトマンズの空港。ドバイ行きの深夜便にはネパール人の長い列ができていた。過酷な出稼ぎ先に向かう暗い表情を眺めていると、「日本で働きたい」と話してくれた人たちの顔が浮かぶ。家族を養う父親、子育て中の母親、貧困から抜け出そうとあがく若者…。ふと、ある学校で出会ったネパール人女性の問い掛けを思い出した。
 「私、本当に日本に行けますか?」
 彼や彼女たちにも「黄金の仕事」が巡ってくるのか、ラムさんの懸念が当たってしまうのか。新制度が始まる4月以降、答えは明らかになっていく。
=2019/03/05付 西日本新聞朝刊=

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