2019年3月19日火曜日

「セブン24時間見直し」の衝撃――ローソン竹増社長に問う“コンビニの持続可能性”

Source:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190318-00000015-zdn_mkt-bus_all
3/18(月) 、ヤフーニュースより
 コンビニの24時間営業の是非が取り沙汰される中、ローソン竹増貞信社長が3月7日、ITmedia ビジネスオンラインの単独インタビューに応じた。竹増社長は、24時間営業の見直しについて「社会の変化に伴い、(24時間営業の)ニーズがないのであれば、われわれは変化に対応していかなければならない」と説明し、24時間営業の見直しもあり得るとの見方を示した(ローソンが「24時間営業の見直し」を検討する理由で詳報)。

 ローソンでは現在も少数の店舗で時短営業を実施しているが、原則的には24時間営業の方針を取っている。竹増社長は「誰も求めていないのに24時間を続けることはあり得ない」とも発言。「24時間営業を続けることが(ローソンが目指す)“マチの幸せ”につながらないのであれば、変化に対して合わせていかなければいけない」と言及した。また、「マチの幸せにはオーナーも含まれる」「オーナーのやりがいがコンビニの土台」とも述べ、人手不足が深刻さを増す中、コンビニの働き方改革を急ぐ考えを示した。

 竹増社長はコンビニだけでなく、小規模小売業における働き方改革の現状と課題について踏み込んで語った。果たしてコンビニという業態は持続可能なのだろうか――。竹増社長のインタビューからその未来を考えたい。
23区では外国人クルーが4割
――ローソンは外国人労働者の採用や育成と、店舗におけるデジタルを活用した生産性向上に力を入れています。まず外国人の採用や育成の現状について聞かせてください。

 人手不足は年々逼迫(ひっぱく)度が高まっています。ローソンでも、今まで通りのやり方では、店舗のオペレーションにとって十分な数のクルーには集まってもらえていない状況です。

 人手不足に対応するポイントは3つあります。1つ目は、本部も一体となってクルーを大事にし、福利厚生を含めて「長く働きたいな」と思えるローソンであり続けることです。2つ目は店内のオペレーションを、デジタルを使って効率化していくことです。昨年、全店に入れた自動釣り銭機能付きのPOSレジもその一環ですね。店内の作業の負荷を、できるだけ軽くしていきたいと考えています。

 3つ目は、作業負荷を減らすことによって、外国人やシニアのクルーを迎えていく点です。今までは「コンビニって、日本人の若い人が働く場だよね」というアンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)がありました。日本語も読めなくちゃいけないし、接客もあるしと……そういった見えないハードルを下げていきたいと考えているのです。

――外国人クルーからはどんな評価を得ていますか?

 外国人クルーに集まってもらって「どうしたらもっと働きやすいか」を聞いたことがあります。すると、彼らから「コンビニで働きたいと思う外国人留学生は意識が高い」と言われました。接客で日本語を使わないといけないので、日本語の習得も早いのです。コンビニで1年働いていると、正月からひな祭り、花見、卒業と入学、ゴールデンウィーク、お中元、月見、クリスマス、年末と、日本の文化風習も体得できます。そのようなことを留学生の方々が互いに話していると聞きました。

 ある外国人クルーから「だから竹増さん、(コンビニで働く外国人が最初はうまく言葉を話せなくても)1カ月間だけは笑顔で接してほしい」と言われました。最初は周囲に怒られたり注意されたりしても、なぜ自分が悪いのかがよく分からないのです。でも1カ月間は、失敗したときも「次は頑張ろう」と笑顔で接してもらえると、自分も頑張れるし、(留学生の)仲間にも「うちの店いいよ」と勧められるというのです。

 そうした話をオーナーにしていくと、口コミでいいクルーが集まります。東京圏だけの話ではありません。例えば香川県では、日本語学校で学ぶネパール人がたくさん(ローソンのクルーとして)来てくれています。ただ、彼らは週に28時間しか働けないので手分けすることによって、ネパール人留学生が一店舗をほぼ丸々回しているのです。

 現状は、全国約19万5000人のクルーのうち外国人は1万2000人ほどなので6%程度です。一方、東京23区ではすでに外国人クルーの割合が4割ほどになっています。
「小売業とは何ぞや」を実地で学べる
――人手不足に対応するために、4月から施行される改正入管法では、技能実習資格で3年間以上の実習を経験した人に新たな在留資格である「特定技能1号」を与え、最長5年間の滞在を認めるよう改正されます。人手不足が深刻な介護、農業、建設、宿泊業など14業種が「特定技能1号資格」に入りましたが、コンビニは入りませんでしたね。

 確かに改正入管法の(特定技能1号の)対象業種には入っていません。ローソンで働いた留学生は「コンビニってすごい」と言ってくれます。信頼されてくると発注も任され、店の数字を管理するようになって、「小売業とは何ぞや」を実地で学べるからです。ただ、語学学校は2年間なので、そこでビザが切れます。そのままアルバイトをしていた店に就職したいと思っても、なかなかビザは下りないため、後ろ髪を引かれるように帰国しているのが実態です。

 東南アジアには、海外資本の大規模なモールが進出している一方、小規模なパパママストア(夫婦などで経営している小規模の小売店)は近代化していません。日本のコンビニで働いた経験を生かし自国に帰って経営にチャレンジしてみたいという人は多いので、本当の意味で小規模小売業の発展に役立つのではないかと考えています。いろいろな国でマーケットリサーチをしていますが、日本のローソンで働いてベトナムに帰国した元留学生から「(ベトナムに)ローソンを進出させてほしい」と言われたこともあります。

 中国から日本に留学してローソン本社に就職し、ローソン社員として本国に渡り、中国2000店舗を引っ張っている人材もいます。本社に勤めると技能習得ビザが下りますが、加盟店では下りません。「外国人留学生をどんどん入れて人手不足を埋めたい」という発想ではなく、どちらかというと社員として外国人を迎えて、「日本のコンビニで学んで自国の小売業に寄与したい」という人の需要に応えていきたいと考えています。
技能習得のビザの対象になっていきたい
――確かに他業種の技能実習生の課題としては、日本で学んでも母国に帰った際に生かされない場合があると聞いていますが、そのようなパターンが確立すれば解決されますね。外国人を受け入れる際の研修の体制はどのようになっているのでしょうか。

 オリエンテーションではビデオを見てもらい、オペレーションのイロハを書いた数カ国後で書かれたハンドブックを読んでもらっています。あとはOJTですね。それにみなさん、コンビニの仕事について留学生仲間から話をよく聞いています。

――ベトナムや韓国にも研修施設を作られています。そういった研修施設は拡充していくのでしょうか。

 ベトナムや韓国とわれわれ、双方のニーズを考えながら検討していきたいと思います。日本に行ってチャレンジしたいというベトナムや韓国の方のニーズがどれくらい大きくなるか。日本で受け入れるキャパシティーはどのくらいか、というバランスですね。

――今の外国人受け入れの課題はどんなところにあるのでしょうか。

 今まではトライアンドエラーで進んできました。クルーの活用については、加盟店も受け入れの準備はできていますし、「来てくれるんだったらどうぞどうぞ」という感じです。ただ、やはり(法制度の改正に関わるが)技能習得のビザの対象にもなっていきたい。ここが課題ですね。
無人化は目指さない
――ポイントの2つ目にあげられた効率化についてもお聞きしたいのですが、「無人化」はなかなか難しいのでしょうか。

 技術的には難しくないのですが、無人化だけが価値ではないと考えています。私たちは「マチの暮らし」を幸せにしていきたいし、それを企業理念にも掲げています。リアルな店が、その街をいかに幸せにしていけるのかということです。

 これまでチェーンストアは、平準化された商品やオペレーションを追求していくことで成長を遂げてきました。「北海道から沖縄まで同じ」を価値にしてきましたが、もう今はそのような時代ではありません。他チェーンも含めコンビニは全国に約5万5000店あります。どの街に行っても同じ店だと面白くないのではないでしょうか。

 ローソンは今1万4500店舗あります。どの店も青いローソンの看板を付けてはいますが、その下には「オーナーさんの看板」があっていいのではないかと考えています。オーナーさんの看板とは、地域の代表の顔です。

 ローソンの看板を掲げる以上、安全安心は絶対です。「最低限のルールは守ってね。(生活の基盤となる)基本商品はみんな置こう」と。一方それ以外は、オーナーそれぞれがスーパーバイザーと一緒になって、その街を幸せにする店づくりの形を考えることが必要です。

 全国一律ではありません。都心のオフィスビルは、無人でいいかもしれないですね。一方で北海道や九州では、ゆったりと時間が流れる中で、常連さんとの会話を楽しむ。常連さんの車が駐車場に入って来るとクルーがコーヒーをいれ始め、常連さんが店内に入ると、コーヒーとたばこをさっと出す、という店もあります。個店の特性をどう出していくかがこれからの勝負だと考えています。

――面白いですね。ただ一般的なチェーンストアの論理とは異なる考え方かと思います。「脱平準化」は効率化に反しないのでしょうか。

 効率化がお客さまにとって価値を提供できていた時代はありましたが、今は違うのではないでしょうか。お客さまや街の在り方を見ながら、次の時代の価値を考え、われわれ自身も変化していかないと対応できません。「われわれはローソンです。北海道から沖縄まで、どこに行っても同じです」と言っても、「ああそうですか」となるだけです。

 沖縄では地場最大手のスーパー、サンエーとも提携しています。その意味は大きく、沖縄独自のプライベートブランド商品が店に並び、お客さまも「私たちのローソン」と思ってくれます。平準化で発展してきたコンビニに、地域性や店の個性をどう組み込んでいくかが重要だと考えています。
進む「オペレーション改革」
――ローソン本社が入居する(品川区内の)ビルの下の店舗でセルフレジも見学しましたが、今後増やしていくのでしょうか。

 下の店は、朝、長い列ができます。レジを担当するクルーを確保する意味で、レジは5台までしか置けません。ただセルフレジを入れれば、有人とセルフ合計で8台は置けるのです。また、スマホレジを使ってもらえばアプリを使って商品バーコードを読み取り、自分のスマホで決済まで完了できます。こういうオフィスビルにある朝昼が忙しい店舗では、セルフレジやスマホレジを増やし、お客さまのストレスを減らしていきたいと思います。

――掃除や品出し、簡単な調理といった作業でも自動化を目指していますね。

 床を拭く、トイレを掃除する、唐揚げを揚げるなど、みんなができることは「もっと簡単に」といった要望は、実はなかなか上がってきません。現状で何とかこなせてしまっていますし、しかも日本は、そういう作業を大切にする価値観を持った国だからです。

 他方レジは、効率化するほど機能が増え、操作方法が難しくなってしまうという矛盾も抱えています。デジタルネイティブの高校生、大学生には抜群に便利でも、高齢の方には難しい場合もあるのです。もっと使いやすく、という要望に応え、レジ周りの効率化を進めてきましたが、店内の7割の仕事は昭和の時代からほとんど変わっていません。今後はそういう仕事においても効率化を進めたいと考えています。

――今まで人がやっていた「基本の仕事」がデジタル化されたら、クルーは何をするのですか。

 無人化がゴールではないと考えています。温かい部分、リアルの店にリアルの人がいる価値、これをしっかり支えていくためにもデジタル化が必要なのです。そうでないと働く人が疲れ、店も疲弊してしまいます。

――平準化から個性重視へ、コンビニのビジネスは分岐点にきているということですね。

 コンビニはこれからどれだけ増えるのでしょうか。店舗数はこれまで大きく増え、ローソンも出店を続けていますが、店を減らし始めた競合企業もあり、コンビニ全体としては出店のピッチは緩くなっています。オーナーさんにとっては、(自分の運営する)一店舗が全てです。だからこそ一店舗、一店舗の価値を上げていかなければいけません。デジタル化を進めることで、店舗で働く人に余裕が生まれ、温かい心がお客さまに伝わる。ローソンの看板の下にオーナーの看板があって、オーナーの人柄が「店柄」になっていく。そこに人が集い、コミュニティーが生まれ、“マチの幸せ”につながっていく。それが私たちの目指す次世代型のコンビニです。
最も損をするのは消費者
 以上がインタビュー内容だ。要望があれば個別に対応し24時間営業の見直しも辞さないとの竹増社長の発言には、「朗報」と感じる加盟店オーナーも少なくないだろう。店ごとの個性を重視するという方向性も、地域に根差した食品スーパーが数多く成功しているモデルとも合致し興味深い。

 では今後の課題はどこにあるだろうか。人手不足やロイヤリティー(加盟店から本部への納付金)、近隣への出店など、コンビニ各社の加盟店オーナーからは、苦境の訴えが止まらない。世耕弘成経済産業大臣が3月1日の会見で言及した「本部と加盟店との間の適切な議論」といったような風通しの改善も急務だ。

 「(ローソンが目指す)“マチの幸せ”にはオーナーも含まれる」という竹増社長の発言は重い。利益を追って24時間営業にこだわるあまり、オーナーとその家族が無理な働き方を強いられた結果不幸になってしまったなら、それこそ本末転倒だからだ。そうなればコンビニのビジネスモデル自体の持続可能性が揺らぎかねない。その時に最も損をするのは誰かといえば、ほかならぬ消費者である。
(北健一)
ITmedia ビジネスオンライン

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