2019年3月28日木曜日

受け入れ過多で教室足りず「銭湯で授業」 消えた留学生たちのゆくえ

Source:https://dot.asahi.com/aera/2019032500066.html?page=1
澤田晃宏 


3年間で1400人もの留学生が所在不明になった東京福祉大学。6割超が留学生といういびつな姿を生んだのは、ビジネス至上主義の絶対権力者だった。

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 同大の留学生急増を支えたのが、16年度から始めた「研究生」という形での募集方法だ。

「日本留学がベトナムやネパールなどの東南アジアの若者の間でブームになった結果、大学も系列の専門学校も日本語学校からの留学生でいっぱいになった。そこで考えられたのが、定員のない研究生での受け入れ方だった」(同大関係者)

 研究生とは原則1年間、学部生になる準備などをするコースだ。このコースに3年間でおよそ5700人が入学。所在不明となった約1400人の大半が、この研究生たちだ。都内の日本語学校幹部はこう話す。

「アルバイトに精を出したせいで学校の出席率が低く、日本語能力が足らずに進学も就職もできない留学生が、それでも日本に残りたいと言ったとき、無条件で受け入れてくれる大学の筆頭が東京福祉大の研究生だった」

 留学生たちはなぜ「消えた」のか。この幹部は言う。

「留学ビザで許される週28時間を超えて働いていることがばれ、ビザを更新できずにそのまま帰国したり、逃げたりすることが考えられる。また、学校を退学、除籍となれば在留資格が失われることを知らず、ビザ更新直後に学校を辞める人もいる」

 大学側も、留学生の行方がわからなくなる可能性は織り込み済みだった可能性がある。同大の関係者は言う。

「研究生の学費は年間62万8千円。それを最大6分割で支払うことができるので、1回当たり10万円。少しでも回収しようとしていたのではないか」

 増え続ける学生に、北区の王子キャンパスでは、銭湯の2階やアパートの一室を授業に使用するなど、教室不足が深刻化していたが、異論は出なかった。前出の現役職員は言う。

「キャパシティーを超えた留学生の受け入れも中島恒雄元理事長の方向性である以上、おかしいと思っても誰も声を出せなかった」
別の関係者も「(中島氏の)ご意向に異を唱えれば閑職に追いやられるか、最悪解雇になる」と打ち明ける。

 同大を取材して驚かされるのは、こうした物言えぬ体制だ。

「職員は毎日、教員は週2回、A4用紙1枚の『業務報告書』の提出が求められます。問題がなければ上司ら6人程度のハンコが押されて返ってきますが、不満や意見でも書いたらすぐに呼び出されます。中島氏からの年賀状も毎年届く」(現役職員)

 中島氏の独裁は、学内では「公然」というより「公」だ。系列の専門学校の関係者は一昨年、学則変更の案内に目を見張った。

「これまでは『役員とは理事長及び理事』だったのが『理事長及び創設者』に変わった」

 日本私立学校振興・共済事業団は3月20日、18年度の私立大学等経常費補助金の交付額を発表した。同大は文科省には関与させないと報告していたのに、中島元総長の関与があったとして50%を減額している。

 自身の施策が国会でさえ問題になる中、中島氏はどのように過ごしているのだろうか。

 中島氏は今でも採用面接に携わり、例年、卒業式後の3月末頃に行われる教員研修には必ずいつも黄色のポロシャツを着て参加するという。

 重度の糖尿病で一人での歩行は困難だが、まだまだ元気だ。饒舌に話をするが、系列の専門学校関係者は「話の大半は自慢話だ」という。

「自己顕示欲を形にすれば、中島氏になるでしょう。アメリカのトランプ大統領誕生後は、私はトランプの同窓生だという自慢話が多い。入学式や卒業式のパンフレットにトランプ大統領の写真を入れるほどです」

 関係者は、中島氏のもう一つの「疑惑」も明かす。

「中島氏が理事長を務めるNPO『日本・留学生交流援護会』が奨学金を出す形で、海外から女子学生を連れてくる。これらの留学生の中には、中島氏と個人的な関係がある者もいる」

 同NPOは「明日を担う世界の若者による交流活動の促進」などをうたい、個人や団体からの寄付を募っている。事実ならば、善意で支払われたお金が、中島氏の一族や関係者に還流していることになる。そんな事が本当にあるのか。同大に確認すると、文書で回答があった。

「奨学金の支払いに関しては存じ上げません」

「『個人的な関係』についても、存じません」

(編集部・澤田晃宏)

AERA 2019年4月1日号より抜粋

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