Source: http://www.nishinippon.co.jp/feature/new_immigration_age/article/296561
ネパール人留学生のネパリさん(27)=仮名=は10月17日、失意のまま福岡空港から帰国した。
学校乱立、生徒犠牲か
通っていた福岡市内の専門学校から自主退学を迫られ、ネパール行きの片道航空券を渡された。旅費の9万2310円は、10月25日に振り込まれるアルバイト代から学校が差し引くとして、同意書に署名し、キャッシュカードを学校に預けさせられた。
「とにかくびっくりして、訳が分からない。いきなりの自主退学はあまりにも厳しい」。自宅のあるネパール南部チトワン郡に向かう途中のネパリさんは、納得できない口調で語った。
自主退学の理由は、10月上旬、同じ学校の友人と夜中に酒を飲み、住民からの騒音の苦情が警察を通して学校に寄せられたためだ。
ネパリさんについて、知人はみな「授業の出席率も高く、真面目な留学生だった」と口をそろえる。
学校側は「警察に通報されただけで退学にはならないが、今回は夜間に騒がないように再三注意したばかりにもかかわらず約束を破った。本人も親も納得し、自主退学した」と説明する。
だが、同校の別の関係者は「こんなに軽微なケースで自主退学を迫るのはやり過ぎだ」と指摘する。実は同校の系列の日本語学校では夏から秋にかけ、留学生による器物損壊や強姦(ごうかん)致傷など事件が相次いでいた。関係者はこの点を挙げ、「警察や入国管理局から目を付けられないための見せしめではないか」と漏らした。
◇ ◇
外国人向けの日本語学校や専門学校は、失踪者や事件が相次ぐと入管当局から管理能力が低い「非適正校」と見なされ、ビザの審査が一層厳しくなる。
「適正校から非適正校に格下げされると、ビザの交付率が6~7割から3~4割に半減する。生徒が減るとビジネスが成り立たなくなるので、常に意識している」と福岡市のある日本語学校職員は言う。
きめ細かな指導をするため、生徒数を一定の数にとどめる学校も多いが、利益優先で留学生を増やす学校もある。留学生が支払う1人当たりの費用は、日本語学校の2年間で百数十万円に上る。
ネパリさんが通っていた学校が経営する日本語学校・専門学校の生徒数は、2014年の約1140人から今年は約1620人まで急増した。関係者は「もはや器があふれ、コントロールできない状態だ」と告発する。
学校の中には「学級崩壊」状態も少なくない。机に突っ伏して寝る。イヤホンを使ってスマートフォンで映画観賞する。試験はカンニングが横行し、日本語が上達していない学生が満点を取ることもある-。留学生数百人が在籍する福岡市の専門学校の風景だ。
出席数が足りないと学籍を剥奪され留学ビザを失うため、学校には出てくる。教壇に立つ教師は「彼らも勉強しに来ているわけじゃないからね」と苦笑いした。
九州の外国人向け日本語教育機関は、07年の33校から今年は64校と、ほぼ倍増した。その中身は玉石混交。真面目に勉強するため来日する留学生がいる一方、留学ビザを取るため学校に籍を置き、就労がメインの「出稼ぎ留学生」が増える原因となっている。
ネパリさんは学校ビジネスの犠牲者なのか-。「日本の大学に進学して、日本の会社に就職したかった。悔しい」。慌てて荷物をまとめたアパートには今も、漢字学習のプリントや日本語能力試験の問題集、パソコンの参考書などの勉強道具のほかに、学費を稼ぐために働いたバイト先の制服が残ったままだ。
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西日本新聞「新 移民時代」取材班
imin@nishinippon-np.jp
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=2016/12/11付 西日本新聞朝刊=
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