Source:http://www.nishinippon.co.jp/feature/new_immigration_age/article/296020
2016年12月16日 、GOOGLEニュースより
真新しいマンションや古びたアパートが混在する福岡市南区の住宅街。一角にある約300メートルの細い路地を夕暮れ時に歩くと、褐色の肌をした外国人と頻繁にすれ違う。
時に摩擦、寄り合いも
ネパール人やベトナム人が多い。彼らが主に暮らす3棟のアパートは、住人の大半が外国人。中廊下を歩くと香辛料の香りが漂い、聞き慣れない音楽が漏れ聞こえる。日本人の住民たちは、いつしかこの通りを「国際通り」と呼ぶ。
築39年の2階建てアパートの1階には、「KYODAI」と書かれた看板がある。ネパール人向けの食材調達からアパートの紹介まで、何でもこなす「よろず相談所」だ。
別の築33年の3階建てアパートは、44部屋に60人以上の外国人が住む。一室を訪ねると、洋室6畳とキッチン3畳の間取りに、ベトナム人の男性留学生2人が暮らしていた。
洋室は布団2枚を敷くとほとんどスペースはなく、ベランダにぎっしりと干された洗濯物がカーテン代わり。昨年4月に先輩の紹介で入居したベトアンさん(24)は「古くて汚れているけど、安いのが魅力」。家賃の2万3千円を折半している。
管理会社によると、このアパートは当初、日本人の学生や若い会社員が入居した。2000年ごろから空室が目立ち、外国人を入居させ始めた。連帯保証人も必要なく、敷金や礼金もゼロ。入居者の8割以上が日本語学校の留学生という。
同様の現象は、福岡市東区や博多区にも広がっている。都会の片隅に、小さな異国の村ができている。
◇ ◇
福岡市南区に住む外国人は8月現在4658人で、09年に比べ1・5倍。中国人が減る一方、ベトナム人やネパール人が増え、それぞれ千人を超えた。近くに日本語学校があるためとみられ、外国人留学生は約1400人に上る。
急激な変化に戸惑いを隠せない日本人の住民も多い。70代の女性は「差別はいけないけど、ぞろぞろと歩いていると気味が悪い」。
地域との摩擦も生まれている。「毎年外国人がどんどん増え、正直なところ住民からの苦情が絶えない」と地元の自治協議会の山口英則会長(75)は明かす。
トラブルは文化や生活の違いが原因となるケースが多い。ネパールにはごみ分別の習慣がなく、清掃車が回収しないため、カラスが食い散らかしてしまう。アパートには、ネパール語でごみ分別の方法を書いた看板がある。
共存を目指す動きもある。福岡市南区は昨年から「縁むすび事業」として、日本人住民と留学生の交流会を各地域で開いている。
10月、ある公民館で住民約20人がベトナム人留学生16人とちらしずしやベトナム料理の揚げ春巻きを作り、食卓を囲んだ。グエンさん(23)は「これまで住民との交流はなかった。仲良くしていきたい」とほほ笑んだ。
実は「国際通り」周辺は経済的に厳しい1人暮らしの高齢者も多い。9月には、通り沿いの共同住宅で80代の男性が孤独死した。「互いが寄り添える関係になれば、地域にとってもプラスだ」と南区役所の副島信次企画振興課長は言う。
1人暮らしの池田トキ子さん(70)は4~5年前から毎日、国際通りに近いネパール食材店に通う。ネパール人店主の1歳の子どもをあやし、店番に立つ時もある。代わりにネパール料理を教えてもらう。
「持ちつ持たれつで、この店が私の憩いの場。近くで暮らす住民同士、話せば理解し合える」。池田さんとネパール人親子の草の根の共生が続く。
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西日本新聞「新 移民時代」取材班
imin@nishinippon-np.jp
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=2016/12/08付 西日本新聞朝刊=
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