2016年1月12日火曜日

日本が難民に“負わせ過ぎている”もの ホームレスになる人も〈AERA〉

Source:http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160106-00000005-sasahi-soci

dot. 1月6日(水)、ヤフーニュースより
 難民なんて自分には関係ない。そう思っている人も多いのではないか。人々を覆うこのムードそのものが、日本の難民支援の貧しさを物語っている。

 2015年12月7日、東京都で一人のアフリカ人女性(20代)がシェルターに保護された。女性は母国で望まない結婚と性器切除を強要され、なんとかビザが下りた日本にバックパック一つで逃れてきたという。しかし、母国と日本の物価は、文字通りケタが違う。所持金は数日で底をつき、ホームレス状態に。女性の保護から4日後、東京を季節はずれの豪雨が襲った。アフリカ出身の彼女がまだ路上にいたら、真冬の雨はどんなにこたえたことだろう。

 やっとの思いで迫害を逃れたのに、雨を遮る傘もない。これが日本にいる難民の現実だ。なぜか。正確には彼女は、日本社会では「難民」とは認められていないからだ。

 14年の1年間で、争いや迫害で国を追われた難民・国内避難民は世界で5950万人にのぼり、過去最多を記録した。世界人口の122人に1人が難民という異常事態だ。

 日本でもネパールやミャンマー、トルコなど73カ国から逃れてきた5千人が難民認定を申請した。これも過去最高の数だが、日本が難民として「認定」したのは、わずかに11人。認定率は0.2%で、世界平均の100分の1にも満たない。

 400万人以上にまで急増したシリア難民については、国連が世界各国に受け入れを要請しているが、約60人の申請者のうち日本が認定したのは3人のみ。島国という立地、鎖国という歴史のなごりなのか、日本の難民支援は、世界各国と比べても大きく遅れている。

 問題とされているのが、難民認定申請の煩雑な手続きとそれに要する期間の長さだ。審査には平均3年、長い場合は5年。その間の生活は困窮を極める。

 就労が認められるのは申請から6カ月が経過してからで、それまでの命綱となるのが生活保護の3分の2程度の金額を外務省が支給する「保護費」だ。しかし、その受給にも審査があり、15年3月時点の受給者は160人。認定から支給されるまでに、さらに2~3カ月を要するため、冒頭の女性のように、来日直後にホームレスになってしまうケースも多い。

 難民申請から生活全般のサポートを行う難民支援協会の大きな課題は「凍死者を出さずに冬を乗り切る」ことだ。越冬支援として寝袋や防寒着、温かい食事を提供している。極寒のバルカン半島ではない。私たちが暮らす、東京の路上での話だ。

 国際社会の批判の対象となっているのは、迫害の立証責任を難民本人に“負わせ過ぎて”いることだ。難民申請書類は計12枚だが、迫害の証拠となるような報道、人権リポート、虐待の傷の写真などを追加資料として添付できる。難民支援協会代表理事の石川えりさんは、難民認定された人は追加資料を600枚以上提出していることが多いという。迫害の資料がないことも多く、リサーチに時間がかかるうえ、全て日本語に翻訳しなければならない。そのための多額の費用は、難民が負担しなければならないのだ。

 こうして提出された書類を審査し難民認定を行うのは、入国管理局だ。しかし、問題がある外国人の「送還」を基本業務とする組織が、「受け入れ」のための認定を行うこと自体、矛盾をはらんでいるとする有識者は多い。事実、取るものも取りあえず国を逃れ、偽造パスポートで入国することも多い難民が、収容・送還されそうになるケースも発生している。

※AERA  2016年1月11日号より抜粋

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