Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/4d989c6e4aa22a1be119ff41a401b3c804c1b966
2020年春以降、ほぼ2年間にわたり、多くの日本人にとって海外旅行は無縁のものとなった。とくにネックとなったのが帰国後の自宅待機要請である。待機期間は14日間から10日間そして7日間……と次第に短くなったが、いずれにしても長期の休暇取得が難しい人には大きな壁となって立ちはだかった。 その自宅待機が2022年3月1日以降、条件を満たせば免除されることになった。では、海外に気軽に行けるようになったのだろうか。
結論からいうと、まだハードルは低いとはいえない。だが、いずれも自宅待機に比べたら、乗り越えやすい壁ともいえる。「コロナ前」とは、海外旅行をめぐる状況が大きく変化しているので、改めて海外に行くために重要なポイントをまとめてみた。渡航先の入国条件などは日々変わるので必ず最新の情報を確認してほしい。 ■3回目のワクチン接種は必須 まず、自宅待機免除の前提となるのは、3回目のワクチン接種が完了しているということだ。
3回目の接種完了をクリアしているなら、次は日本への入国時の水際対策の条件を確認する必要がある。厚生労働省では、相手国の感染状況に応じて入国条件をこまめに変更している。 おさえておきたいキーワードが「指定国」である。この指定国に定められると、かりに3回のワクチン接種が完了していても、自宅待機が求められる。 2022年3月17日時点で3日間の待機が求められる指定国は以下の14カ国である。 ロシア、トルコ、サウジアラビア、スリランカ、モンゴル、韓国、インドネシア、ミャンマー、イラン、シンガポール、エジプト、ネパール、パキスタン、ベトナム
(厚生労働省「水際対策上特に対応すべき変異株等に対する指定国・地域について」より) なお、ワクチンを3回接種していない人は、指定国以外への渡航であれば、3日間自宅待機し、3日目以降に自主検査で陰性が確認できればそこで終了。自主検査をしない場合は7日間の自宅待機が求められている。一方、指定国への渡航ならば宿泊施設で3日待機し、3日目に受ける検査が陰性であれば待機期間終了となる。 これ以外の「非指定国」から帰国する場合、自宅待機は求められない。
次に相手国に入国する条件を確認する必要がある。日本に戻るときに待機がなくても、相手国に入国時に待機があれば、結局大きな支障となってしまうからだ。 各国の入国条件については外務省の「新型コロナウイルスに係る日本からの渡航者・日本人に対する各国・地域の入国制限措置及び入国に際しての条件・行動制限措置」にまとめられている。 ただし、個別の国の細かい事情については「日本橋夢屋 海外出張情報」のサイトのほうが詳しい。このほか、各国の大使館のサイトや、現地の日本大使館のサイトを参考にしてほしい。
■西ヨーロッパは陰性証明書も不要の流れ ここでは、比較的日本人の渡航者数が多い国を中心に入国条件をまとめてみた(2022年3月18日時点)。なお、ワクチンの接種の有無などで条件がかなり異なるため、今回はワクチン接種済みの人の例を挙げた。多くの国で求められる「ワクチン接種証明書」やコロナ以前から必要なアメリカ入国時のESTAなどの条件についてはふれていない。 入国先によっては、PCR検査の英文証明書に本人の名前が印刷されていること(アメリカなど)、RT-PCR形式(タイなど)が求められている。格安の料金で受けられる検査ではこれらの条件を満たさず、タイ国際航空などで搭乗拒否となったケースも報告されている。
同じ国へ飛ぶフライトであっても航空会社によって対応が異なるので事前に航空会社に確認したい。とはいえ、航空会社に問い合わせても明言を避けることが少なくなく、ツイッターなどで過去に搭乗できたか、あるいは拒否されたのかなどの情報を参考にせざるをえない状況が発生してしまっている。 ■アメリカ ・出発前1日以内(出発前日または当日)に採取した検体によるPCRか抗原検査の陰性証明書の取得が必要 ・アメリカの空港経由で第三国へトランジットする場合も入国と同条件となる
・日本を出発する空港で、航空会社へ提出する英文の宣誓書が必要 ■タイ ・渡航前72時間以内に実施したRT-PCR検査の陰性証明書 ・タイ滞在期間すべてを対象とする新型コロナウイルス感染症の治療費を含む最低2万ドル以上の治療補償額の医療保険の英文証明書 ・SHA Extra Plus(SHA++)ホテルの到着1日目の予約確認書 ・1回のセルフATK検査(抗原セルフテストキット)(5日未満の滞在の場合は不要)
SHA Extra Plus(SHA++)に指定されたホテルはバンコクの場合、全体のほぼ半数ほどとなっており、入国後のPCR検査や空港からホテルへの送迎なども含めて1泊1万4000円程度からとなっている。 保険の英文証明書は、クレジットカードなどに付帯する保険でも可能だ。これは保険会社から無料で入手できるケースが多いが、入手までに7~14日ほどかかることが多いので、渡航の予定がある場合は、あらかじめ入手しておいたほうがいい。
なお、4月1日以降は陰性証明書などの提示もなくなることが発表されている。 ■フィリピン ・出発日時48時間以内に実施したRT-PCR検査の陰性証明書、または24時間以内に医療機関で実施した抗原検査の陰性証明書の取得が必要 ■カタール ・出発日時48時間以内に実施したPCR検査の陰性証明書の取得が必要 ■オーストラリア ・出発3日以内に受けたPCR検査、もしくはフライト出発時刻の24時間以内に受けた抗原検査の陰性証明書の取得が必要
・オーストラリアへ出発する72時間前までにオーストラリア内務省のサイトでデジタル渡航者申告が必要 ・そのほか到着する州によって取り決めの条件が異なる ■ニューカレドニア ・渡航前24時間以内に採取した検体によるPCR検査、または抗原検査の陰性証明書の取得が必要 ・到着2日後にPCR検査または抗原検査を実施する必要がある ■モルディブ、カンボジア、トルコ、アラブ首長国連邦(ドバイ・アブダビ)、ドイツ、フランス、イタリア、イギリスなど
・陰性証明書は不要 このほか、マレーシアでは4月1日以降、2日前以内のPCR検査と、入国後24時間以内の抗原検査を条件に隔離を免除することを発表している(2022年3月8日)。 また、ニュージーランドも5月2日から、出国前の検査で陰性であり、到着時と5日目もしくは6日目の2回の抗原検査も陰性であれば隔離を免除することを明らかにしている(2022年3月16日)。 全体的に西ヨーロッパ諸国や中東の条件が緩い。アジアでは入国に際して陰性証明書を条件としているところが多いが、すでにモルディブやカンボジアは陰性証明書が不要となっており、今後は陰性証明書なしに入国を認める国や地域が増えていきそうだ。
■日本入国時のPCR検査 実はこれが短期旅行をするうえでの最も高いハードルといえる。日本政府は日本再入国に際して求めているPCR検査(相手国出国前72時間以内に実施)について、定められたフォーマットを求めており、このフォーマットに適合した証明書を発行しないかぎり、PCR検査を受けても無効となる。 例えば、アメリカやドイツなどの一部の国をのぞくと、証明書に医師の名が記されることが条件となっている。こうしたフォーマットの様式を満たす証明書を発行する病院の情報については、各国にある日本大使館のサイトの情報が詳しい。なお、これらの病院によっては、検査が可能な曜日や時間が限られているし、事前に検査の予約をする必要がある。
有効な「出国前検査証明」フォーマットや、細かい条件については外務省のHPを確認してほしい。 なお、3月9日日本到着以降は、「鼻腔ぬぐい液」についても有効な検体に追加されることになった。 このほか、スマホに入国者健康居所確認アプリ「MySOS」や接触確認アプリ「COCOA」をダウンロードして、日本到着の16時間前までに事前申請をすませておく必要がある。 入国条件を把握したら、次に注意したいのがフライトの有無である。3月17日現在、国際線が就航している空港は、羽田・成田・関西・中部・福岡の5空港にかぎられているうえ、長いコロナ禍の間に、多くの路線が運休となってしまっている。さらに、直行便で飛べる都市はかぎられている。経由便となる場合、その経由地によっては、現地到着時の入国での隔離免除などの条件が異なる可能性があるので注意が必要となる。
コロナ前は、国際線の価格が史上最安といっていいほど安かった。筆者が2020年1月末に購入した、羽田発上海経由ロンドン・ガトウィック空港往復(中国東方航空)は、総額4万1440円だった。現在、ロンドン往復の底値は7万6000円台となっているほか、おしなべてコロナ以前より、航空券の相場はかなり上がっている。 現時点での東京発の各国への最安値は旅行比較サイト・スカイスキャナーなどで確認できる。例えば、ZIPAIRの成田発ホノルル往復が8月のお盆のピークでも7万4000円台など、路線を選べば、コロナ以前よりも安い航空券が見つかる。
とはいえ、中国経由の安い航空券がなくなってしまったこと、ウクライナ情勢により、ロシア上空を飛行することができず、北回りもしくは南回りを強いられて欧州方面へは時間がかかること、さらに原油の高騰にともない、燃油サーチャージの高値が予想されることなどから、しばらくは航空券の相場は高止まりする可能性が高い。 ■燃油サーチャージ上昇を回避するには? こうしたなか、おすすめなのが、特典航空券の利用である。有償航空券が高くなったということは、相対的に特典航空券の利用価値が高くなったことを意味する。JALやANAなど、有効期限のあるマイルを持っている人であれば、コロナ禍の間国際線でマイルを消費せず、マイル残高が増えた人も少なくないだろう。
ユナイテッド航空、アメリカン航空、デルタ航空、アラスカ航空など、北米系のマイレージプログラムで貯めている人であれば、特典航空券に燃油サーチャージが課されないことが多いので、さらに好条件といえる。 いずれにせよ、相手国の入国時と日本の帰国時の計2回、PCR検査が求められることが多い。PCR検査と英文証明書の発行には1回1万円以上かかるケースも多く、その費用は短期旅行だと大きくのしかかってくる。また、日本出国前や短い現地滞在時間の間に陰性証明の検査などに時間をとられるのもマイナス面だといえる。
また、「コロナ後」の海外旅行で気をつけなければならないことが一点ある。それは無症状でも陽性と判定されるリスクである。相手国がPCR検査を要求する場合、日本出国前に実施することになるが、そこでかりに陽性となれば、旅行はすべて直前でキャンセルせざるをえない。 そのため、航空券やホテルはキャンセル料がかからないか負担額が少ないもののほうが安全だ。それ以上にダメージが大きいのは、日本再入国前に現地でPCR検査を行い、陽性が判明した場合だ。この場合もちろん日本に帰国できず、事情を職場などに伝えなければならない。
一方で、国内旅行については、都道府県民割を拡張させた「ブロック割」やGo Toトラベルなどの促進策が今後しばらく続くだろう。海外旅行には、「コロナ前」にくらべて費用がかかるうえ、情報収集や手間などが格段に増えた。だが、今後は、観光客誘致にむけて、検査免除も進むだろう。 当然のことながら、入国のハードルが低い国へ人が流れることになる。日本を含むおおむねすべての国で検査が不要となるまでしばらくの間、海外旅行はちょっと高嶺の花という状態が続きそうだ。
橋賀 秀紀 :トラベルジャーナリスト
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