2022年3月9日水曜日

入管が外国人犯罪者の「出会い」の場になっていた!在日ネパール人ギャングの生活とは

Source: https://gendai.ismedia.jp/articles/-/92978

2022.03.03
# 裏社会# 格差・貧困、Googleニュースより

アジアン・ギャングたちの証言【後編】

インド人オーナーが連れてきたネパール人たち

もう一つ、外国人ギャングで増えているのが、ネパール人だ。

「東京ブラザーズ」「ロイヤル蒲田ボーイズ」といったグループができた背景は、ベトナム人のそれとは異なる。

日本にネパール人が増えたのは、1990年代以降に増えたインド料理店だった。それ以前に来日していたイラン人やパキスタン人は不法滞在が多かったが、インド人はビザを取得してインド料理店を出店した。この時、インド人オーナーが、人件費を安くおさえるために連れてきたのが、ネパール人だったのである。もともとインドにはネパール人が出稼ぎに来ていることが多く、そうした者たちを日本に連れてきたのだ。

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インド料理店で働くネパール人たちはアパートで共同生活をして、母国に残してきた妻子に仕送りをした。ただし、ネパールには家族が一緒に暮らす習慣がある。そこで何年か働いて慣れてくると、妻子を日本に呼び寄せた。

ここで問題が起こる。夫の給料だけでは生活が厳しいので、妻はホテルのベッドメイクなどアルバイトをしなければならない。子供たちはいきなり親の都合で母国から日本に連れてこられるが、日本語もわからなければ友達もいない。親は忙しくてまったく相手にしてくれない。孤立するのは必然だ。

大阪にある在日外国人支援団体の職員は次のように述べる。

「2014年くらいからネパール人の子供の問題が増えてきたように感じます。彼らはみんな、母国に友達がいて、ちゃんと勉強し、将来に向けての夢を抱いていたんです。それなのに、親の都合でいきなり引き離され、学校で勉強することさえできなくなった。​親も相談に乗ってくれない。そんな中で、自暴自棄になってしまうケースが目立つようになったのです」

外国人コミュニティーとの連携

ネパール人の子供の場合は、中学生から高校生くらいで日本に連れてこられることが多いため、幼児に比べると適応が難しい。それが彼らの疎外感を余計に大きくしたのだ。

このようなネパール人の若者たちが、日本に居場所を見つけられないまま徒党を組んで結成したのがギャング組織だった。蒲田や大久保がその拠点となったのは、そこに在日ネパール人たちのコミュニティーがあるためだ。

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私が取材をしたメンバーの一員は、その生業を「盗品の転売」「ドラッグの密売」「インド、ネパール系の店からのみかじめ料」の三つであると明かした。ベトナム人ギャングと重なる部分があるだろう。同じネパール人コミュニティーに巣食って上前をはねたりしているのだ。

とはいえ、日本で暮らすネパール人の数は、ベトナム人に比べれば4分の1ほどだ。そこからのあがりだけでは、十分な収入にはならない。そこで彼らは別の外国人コミュニティーと連携しようとする。

8歳で来日してギャングの一員となったベトナム出身の男性は次のように述べる。

「日本で逮捕されると刑務所を経て入管に連れて行かれるんだ。入管には、刑務所を出た外国人がたくさんいる。ブラジル人、フィリピン人、イラン人、中国人……。すぐに仲良くなるよ。

懲役になると本来はビザを取り上げられるんだけど、日本で結婚して子供がいたりする場合は仮放免といって特別に滞在が認められる。それで入管で知り合った、ブラジル人とか他の外国人と手を組んで“仕事”をするんだ。つまり入管が出会いの場になっているんだよ」

2万人の不就学児たち

言うまでもなく、ここでいう「仕事」とは違法なビジネスだ。彼らは刑務所から入管へ移された後、そこで仲良くなり、日本の社会にもどってから手を組んで犯罪をすることがあるのだ。

このように見ていくと、日本における外国人ギャングの活動は新たなフェーズに入っているといえるかもしれない。

考えなければならないのは、なぜ彼らが日本でそのようなことに手を染めなければならないのかということだ。

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すでに述べたように、彼らの多くが日本社会で受け入れられず、親など周りからの愛情に恵まれなかった。それは外国籍の子供(小中学生相当)約12万人のうち、約2万人が学校に籍がない不就学の状態にあるということからもわかるだろう。義務教育さえ受けられていないのだ。

こういう実態を書くと、「犯罪者は母国へ返せ」などという意見が出る。そういうのは簡単だ。だが、日本が労働人口不足解消のために制度までつくって彼らを招いている実態がある以上、考えるべきこと、やるべきことは他にたくさんあるのではないか。

アメリカにおける黒人解放運動に尽力した、キング牧師は次のような言葉を残している。

「最大の悲劇は、悪人の暴力ではなく、善人の沈黙だ。沈黙は、暴力の陰に隠れた同罪者なのである」

外国人ギャングを批判するだけでなく、彼らを通して今の日本に欠けているものを考える必要がある。

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