Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/6f8c6fe8dc900b584fd40da76a01de90b74713ad
一般に親しまれているレジャー要素の強い登山からは縁遠いが、ヒマラヤなどの高所への登山や未踏の山のピークを目指して難易度の高いルートをクライミングし、限界に挑む登山者たちがいます。そんなアルパインクライマーの世界は一体どんなものでしょうか? ◆【画像】絶景! 超快適! シャワーや売店、バレーコートまであるレーニン峰のベースキャンプ 山岳カメラマンとしても精力的に活動を続ける、クライマーの三戸呂拓也氏に中央アジア、キルギスとタジキスタンの国境に聳える「レーニン峰」登山の様子を語ってもらいました。馴染みのない中央アジア、さらに標高7,000mを超える高所での登山の様子はいかに? 「2023年夏、私は単身キルギスに渡りレーニン峰に登った。レーニン峰は国際キャンプの名残があり、様々な国から多くの登山者が集まる人気の山である。特別な能力は不要だが、標高は7,134m。登頂には最低限の体力や雪上技術、幕営生活能力、そして晴天のタイミングを必要とする」:三戸呂拓也氏談
■“中央アジアのスイス”キルギスへ
中央アジアの一国キルギス共和国。名前を聞いたことがあっても、具体的にイメージできる人は少ないかも知れない。「シルクロード」の一部として認識されているキルギス。砂漠のイメージが強いエリアだが、実は国内に砂漠はなく、一面に花々が咲き乱れる緑の高原と雪を纏った白銀の峰々が連なる景色から、“中央アジアのスイス”と称されていたりもする。
■レーニン峰って、どんな山?
レーニン峰はタジキスタンとの国境にほど近い、キルギスの南端に位置する山である。時代や地域によって呼び名は多数存在するが、“Mt.Lenin”が最も周知されている山名と思われる。これは革命家のウラジーミル・レーニンに由来し、1928年の初登頂時に採用された山名らしい。ちなみに山頂には、今もレーニンの像が置かれている。登山シーズンは7~8月。一般的には20日間ほどである。 首都ビシュケクから国内線に乗り、レーニン峰に最も近いオシュ空港に飛ぶ。今回は登山の前後で、オシュに滞在した。治安が悪いという情報もあったが、滞在中それは感じなかった。現地の人々は友好的で慎しく、どこか日本人に近い印象であった。昨今にあっては珍しく日本より物価が安い国であり、レストランでも1000円で腹いっぱい食べられる。日中は暑いため人通りは少なく、逆に夜になると道路は歩行者天国になり、賑やかだ。その光景を道端から眺める時間が楽しかった。オシュの通貨ソムへの換金はビシュケク以降でしかできないが、可能なら街中の換金所で行うのが最もレートが良い。
■単独(ソロ)とっても実は一人ではない
●登山のシステム レーニン峰には複数のエージェントが入っており、登山者は事前にいずれかのエージェントと契約して登山をすることになる。山頂に至るまで各キャンプの場所はほぼ同じだが、それぞれの会社で陣地を持っており、開催時期やサービスの内容も若干異なっているようである。ノーマルルートは3,700mのベースキャンプ(BC)を出発し、3つの上部キャンプ(C1、2、3)を経由して、7,134mの山頂を目指す。登山者は料金プランに従って、ガイドやポーター、常設キャンプ、食事の有無を選択できる。BC、C1には倉庫があり、上部で使用しない装備をデポすることも可能である。 ●ガイド、ポーター 今回のエージェントでは、シェルパが10名ほど在籍していた。彼らはローテーションしながら各キャンプに滞在し、ガイドやポーター、時には氷河工作員として活躍している。勿論カザフスタンのガイドも数名在籍しており、クライアントを連れてシーズン中に何度も山頂を踏む。ガイドやポーターの料金はキャンプ間で設定されており、上部に行けばそれなりの金額になってくる。 ●リスクマネージャー C1にはレーニン登山に精通したマネージャーが常駐していた。彼はエージェントに於ける全ての登山隊の行動を把握し、無線機で定時連絡を取る。時には危険のある登山者に、それ以上登ることのストップをかけることもある。かなり干渉は強いが、実力も経験もバラバラの多くの登山者は、どこかで管理が必要なのだろう。またBC、C1にはそれぞれドクターがおり、相談に乗り、場合によっては薬の処方を行ってくれる。
■登山の総合力が試される! 高所挑戦の山
レーニンという山は、ノーマルルートであれば技術的な難易度は低い。しかし、高度順応、雪上技術、幕営生活、クレバス通過など、高所登山の基礎が詰まっている。多くの目に見守られる中で計画を実行でき、天候が安定すれば、登頂するチャンスも大きいだろう。初めて7,000mという標高に挑戦するには最適な山だと感じた。それが私のレーニンに対する客観的な感想である。 三戸呂拓也(みとろたくや) 青春時代より山に没頭し続け現在にいたる。国内の厳冬期難ルートを踏破し、ネパールやパキスタンなどの高所登山の経験多数。2021年、パキスタンの未踏峰だったサミサール(6,020m) 初登頂。山岳カメラマンとしても多くの番組の撮影に携わっている。 2011年 新疆ウイグル自治区・ヤズィックアグル(6,770m)世界初登頂 2013年 ネパール・マナスル(8,168m)『世界の果てまでイッテQ』サポート 2021年 パキスタン・サミサール(6,020m)初登頂 NHK-BSプレミアム『グレートトラバース3』撮影 NHK-BS1『グレートレース』撮影 日本テレビ『世界の果てまでイッテQ!』撮影
三戸呂拓也
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