2017年2月7日火曜日

人手不足解消の救世主になるか? 外国人労働者初の100万人超え

Source: http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170204-00000008-zuuonline-bus_all

ZUU online 2/4(土)、ヤフーニュースより

2016年10月末時点の外国人労働者数が初めて100万人の大台を超え、108万3769人を記録していることが、厚生労働省のまとめで分かった。前年同期に比べて19.4%増え、企業に届け出を義務付けた2008年以来最多。全都道府県で前年の数を上回り、増加率もかつてない高さになった。

政府が労働力確保に向けて外国人労働者の受け入れを積極的に推進しているのに加え、地方の人手不足から企業が外国人労働者の採用に前向きになっているためとみられる。だが、一部に劣悪な労働環境を指摘する声もあり、働く環境の整備が課題となりそうだ。

■伸び率も調査開始以来の最高

厚労省外国人雇用対策課は2016年10月末現在で外国人労働者を雇用している全国17万2798事業所からの届け出数をまとめた。特別永住者や在留資格「外交」・「公用」は除かれている。

それによると、外国人労働者数は前年同期の90万7896人に比べ、17万5873人の増加。伸び率も調査開始以来の過去最高を記録した。外国人を雇用している事業所数は対前年同期比2万537カ所(13.5%)の伸びを示し、こちらも過去最高だ。

このうち、労働者派遣・請負事業を進めている事業所は1万6389カ所に達し、前年同期を801カ所、5.1%上回った。そこで働く外国人労働者は23万7542人で、前年同期に比べて3万2635人(15.9%)の増加。外国人を雇用している事業所全体の9.5%、外国人労働者全体の21.9%を占めている。

外国人労働者の国籍別内訳を見ると、最も多いのが香港などを含む中国人の34万4658人で、全体の31.8%を占めた。次いでベトナム人17万2018人(15.9%)、フィリピン人12万7518人(11.8%)、ブラジル人10万6597人(9.8%)。

特にベトナム人は前年同期比で6万2005人(56.4%)の大幅増加となった。このほか、ネパール人も5万2770人に達し、前年同期比1万3714人(35.1%)の伸びを示している。永住者、定住者、日本人の配偶者を持つなど在留資格を持つ人が38.1%を占め、留学生のアルバイトなど資格外活動が22.1%、技能実習が19.5%だった。

都道府県別では、東京都が27.6%でトップ。次いで愛知県8.0%、大阪府6.6%、神奈川県6.4%の順。産業別だと製造業が23.5%で1位になり、卸売・小売業が16.9%、宿泊・飲食サービス業が14.3%で続いている。地方では製造業や建設業の比率が高く、首都圏ではサービス業に従事する人が多かった。

■地方を中心に人手不足が深刻化

厚労省外国人雇用対策課は「政府が進める外国人留学生の就職支援や高度外国人材の受け入れが効果を上げてきたほか、留学生のアルバイト増加が影響した」とみているが、地方の人手不足も企業の外国人採用を後押ししている。

民間信用調査機関・帝国データバンクが全国1万285社を対象に2016年7月に実施した調査によると、37.9%の企業が正社員、24.9%が非正社員不足と回答した。半年前の調査に比べ、わずかに改善しているものの、地方では人口減少と高齢化社会の進行に伴い、人手不足が恒常化している実態がうかがえる。

正社員不足が深刻な業種は放送の76.9%をはじめ、家電・情報機器小売や情報サービスなど。非正社員では飲食店、飲食料品小売、娯楽サービスで高くなっている。

帝国データバンクは「人手不足による有効求人倍率の上昇や失業率低下は求職者に明るい材料だが、人材の獲得競争が激しさを増している」と分析している。

日本商工会議所が2016年4~5月に全国の中小企業4072社を対象に実施した調査でも、回答した企業2405社のうち55.6%が人手不足を訴えた。規模が小さい企業ほど人手不足が深刻で、零細企業の多くが外国人労働者に依存している実態は、厚労省のまとめでも明らみに出ている。

■求められる劣悪な労働環境の改善

しかし、外国人労働者のうち技能実習生や留学生について、劣悪な労働環境や賃金がしばしば問題視されるようになっている。2015年は賃金不払いなど労働基準関係の法律違反行為が厚労省の調べにより過去最多の3695事業所で発覚した。法務省入国管理局も273事業所に対し不正行為を指摘している。

中には無資格でのフォークリフト運転による死亡事故など悪質なケースも見られ、国内だけでなく米国政府からも批判の声が上がっている。

特に問題が多いといわれているのがベトナム人留学生で、ベトナムで日本留学ブームが起きているのを悪用し、有料で劣悪な労働環境のアルバイトをあっせんする違法ブローカーが暗躍しているという。

岡山県では日本語学校に通うベトナム人留学生が2015年、複数の工場で深夜のアルバイトを連日のように繰り返した末、突然死して問題になった。日本人が嫌がる長時間の深夜肉体労働に従事し、過労死したのではないかとみられている。

政府は留学生30万人計画を立て、発展途上国の若者を大量に受け入れようとしているが、国内では低賃金で重労働の仕事で働き手が不足している。単純労働での外国人入国が認められていないため、実習生や留学生として来日させ、実質的に単純労働者として受け入れている実態も垣間見える。

外国人労働者の増加を人手不足解消の救世主と喜ぶだけでなく、こうした劣悪な労働環境の改善も政府に求められている。

高田泰 政治ジャーナリスト この筆者の記事一覧(https://zuuonline.com/archives/author/takadatai)
関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆中。マンション管理士としても活動している。

0 件のコメント:

コメントを投稿