Source: http://www.jiji.com/jc/v4?id=foresight_00201_201702030001
2017年2月3日、GOOGLEニュースより
実は、急増しているベトナム人の43.3%が「資格外活動」で働いている留学生なのだ。ネパール人はさらに割合が高く、61.2%が資格外活動となっている。実際には、本当の目的が「留学」ではなく、働くことにあるという例も少なくない。現地の日本語学校やブローカーが日本の留学先と働き先を斡旋している例もある。実際には制限時間を守らず、複数のアルバイトを掛け持ちしてせっせと働いている外国人も多い。 統計で増えているのは、「資格外活動」の分類だ。2012年の10万8492人から16年には23万9577人へと2倍以上に増加。全体での割合も15.9%から22.1%に高まった。その「資格外活動」とは何か。大半は留学生である。大学だけでなく、専門学校や日本語学校に留学生資格でやってきて、放課後にアルバイトをするようなケースだ。本来は勉学が目的である「留学ビザ」で入国した人が働くため、「資格外」と呼ばれる。留学生には週に28時間まで働くことが認められている。また、学校が長期休暇の間は1日8時間、週40時間まで働ける「例外」もある。
その次の「便法」が技能実習生制度だ。技術移転云々は「建前」で、本音は人手不足に悩む農村などでの働き手である。やって来る外国人も「稼ぐ」のが本当の目的なので、技能実習先を出奔して、より割りの良い働き口に移るケースなどが問題視されている。 日本ではこれまで、外国人の受け入れについて真正面から議論がされてこなかった。かつて政治の世界では「千万単位の移民受け入れが不可欠」といった主張がされた時期もあるが、「移民」という言葉へのアレルギーもあって、制度整備が遅れてきた。その一方で少子化の結果、人手不足は年々深刻化しているため、様々な「便法」が繰り出されてきた。最初はブラジルやペルーなどの日系人に在留資格を与えるというものだった。「日系人」ならば国内の反発が小さいとみたのだろうか。
2017年2月3日、GOOGLEニュースより
磯山 友幸
外国人労働者の数がついに100万人を突破した。厚生労働省が1月27日に発表した「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ」によると、2016年10月末時点の外国人労働者数は108万3769人と、1年前に比べて19.4%増加、4年連続で過去最多を更新した。
この調査は、年に1回、すべての事業主に、外国人労働者の氏名、在留資格、在留期間などを確認してハローワークに届け出ることを義務付けているものをまとめたものだが、実は届け出していない事業者も多く、実際にはこれをはるかに上回る外国人が働いているとみられる。しかし、届け出に基づく公式な統計でも100万人を突破したことで、企業の人手不足が外国人労働者によって補われている実態が鮮明になった。
ベトナム人労働者が激増
外国人労働者の増加ピッチが上がっている。2012年は前年比マイナスだったが、13年には5.1%増加、その後14年9.8%増→15年15.3%増→16年19.4%増と、増加率が年々大きくなっている。2012年末に安倍晋三内閣が発足し、13年からアベノミクスが始まったのと時を同じくして、外国人労働者が急増している。もちろん、アベノミクスによって景気が底入れし、人手不足が深刻化したことも背景にある。何せ雇用者数は2013年1月以降、対前年同月比で毎月増加を続けている。それにもかかわらず、有効求人倍率は上昇を続け、2016年11月の有効求人倍率は1.41倍と、バブル期の1991年7月以来の高水準になっている。
安倍首相は繰り返し「いわゆる移民政策はとらない」と発言しているが、実際には外国人労働者なしに、日本経済は回らないところまで来ているとみていい。大都市圏だけでなく、地方都市や農村部でも、人手不足から外国人雇用の要件を緩和して欲しいという声が強まっている。
外国人労働者というと中国人が大挙してやってきているようなイメージが強いが、実態は異なる。中国人(香港含む)は2012年の29万6388人から16年には34万4658人と4万8270人増えたが、年率にすれば1ケタの伸び。2013年2.5%増→14年2.6%増、15年3.4%増→16年6.9%増といった具合だ。
最も伸びが大きいのはベトナムで、2012年には2万6828人に過ぎなかったものが、13年39.9%増→14年63.0%増、15年には79.9%増と激増、16年も56.4%増となり、実数では17万2018人になった。15万人近くも増え、今や中国に次いで2番目に多くなっている。居酒屋などでは中国人店員の姿が減り、ベトナム人を目にする機会が増えた。この数字をみると、なるほどと思うだろう。人数はまだ少ないが、ネパール人の労働者も増えている。2016年で5万2770人と、14年の2万4282人から2年で2倍以上になった。
かつて外国人労働者というと工場などで働くブラジル人が多かった。日系人の受け入れを優先的に行ったためだが、リーマンショック後の製造業の景気悪化で、帰国を促す政策などが取られた。2012年に10万1891人だったが、14年には9万4171人にまで減少、この2年は増えたが、16年は10万6597人だ。
減少した「身分に基づく在留資格」割合
もっとも、政府は外国人労働者の受け入れを全面的に認めているわけではない。外国人が国内で働くためには資格が必要だが、かつては「身分に基づく在留資格」が大きなウエートを占めていた。「身分に基づく在留資格」とは、永住権を取得した「永住者」や、日本人の配偶者、永住者の配偶者などが該当する。日本で働くブラジル人やペルー人はほとんどがこれに該当する。2012年の段階では外国人労働者のうち45%が当たっていたが、年々低下し、16年では38%になっている。
もう1つが「専門的・技術的分野の在留資格」と呼ばれるもので、芸術、宗教、報道、医療、研究などの業種が指定されている。ただ、中には「興行」という項目があり、これを利用したフィリピン人がキャバレーなどでの接客に当たるケースが長年続いてきた。この「興行」はともかく、政府はこの「専門人材」に該当する外国人労働者には積極的に門戸を開いていく姿勢だが、実際には全体に占める割合は18%程度で、ここ数年変わっていない。
さらに「技能実習」制度がある。これは日本の技術を海外に移転する国際貢献のための仕組みというのが「建前」で、工場だけでなく、漁業や農業の現場では多くの外国人が「技能実習生」として働いている。ただ、この制度では期間が原則3年と定められており、せっかく技能が身に付いたところで帰国になってしまう。もともと制度がそういう建前なのだが、人手不足にあえぐ現場では、技能実習を終えた経験者に日本で働き続けてもらう制度が必要だとする声が強い。そうした声を受けて、政府は技能実習の期間を5年まで延長できる制度を導入した。
こうした技能実習生も実数では大きく増えているものの、外国人労働者全体の中に占める割合は2012年が19.7%、16年が19.5%とほとんど変わっていない。では、身分に基づく在留資格の割合が減った分、何が増えたのか。
「国も損をしている」
実は、急増しているベトナム人の43.3%が「資格外活動」で働いている留学生なのだ。ネパール人はさらに割合が高く、61.2%が資格外活動となっている。実際には、本当の目的が「留学」ではなく、働くことにあるという例も少なくない。現地の日本語学校やブローカーが日本の留学先と働き先を斡旋している例もある。実際には制限時間を守らず、複数のアルバイトを掛け持ちしてせっせと働いている外国人も多い。 統計で増えているのは、「資格外活動」の分類だ。2012年の10万8492人から16年には23万9577人へと2倍以上に増加。全体での割合も15.9%から22.1%に高まった。その「資格外活動」とは何か。大半は留学生である。大学だけでなく、専門学校や日本語学校に留学生資格でやってきて、放課後にアルバイトをするようなケースだ。本来は勉学が目的である「留学ビザ」で入国した人が働くため、「資格外」と呼ばれる。留学生には週に28時間まで働くことが認められている。また、学校が長期休暇の間は1日8時間、週40時間まで働ける「例外」もある。
都内の中華料理店の中国人料理長は言う。
「皆、働くのが目的で日本にやって来る。28時間なんて守っている人はいない。記録に残さないで超過で働いている。われわれもそうした人材がいなければ商売ができない。正規に働けるようにルールを変えれば、その分、所得税も社会保険料も国に入るのに、ヤミで働いていたら税金も納めない。国も損をしているんだよ」
実際、28時間ルールを守っているのは大学留学生の一部だけ、という見方もある。つまり、人手不足を補う「便法」として外国人留学生が使われているわけだ。「資格外活動」で働く外国人は2015年に31.1%、16年も24.6%増加している。
次々生まれた「便法」
その次の「便法」が技能実習生制度だ。技術移転云々は「建前」で、本音は人手不足に悩む農村などでの働き手である。やって来る外国人も「稼ぐ」のが本当の目的なので、技能実習先を出奔して、より割りの良い働き口に移るケースなどが問題視されている。 日本ではこれまで、外国人の受け入れについて真正面から議論がされてこなかった。かつて政治の世界では「千万単位の移民受け入れが不可欠」といった主張がされた時期もあるが、「移民」という言葉へのアレルギーもあって、制度整備が遅れてきた。その一方で少子化の結果、人手不足は年々深刻化しているため、様々な「便法」が繰り出されてきた。最初はブラジルやペルーなどの日系人に在留資格を与えるというものだった。「日系人」ならば国内の反発が小さいとみたのだろうか。
そして、留学生制度も「便法」になろうとしている。日本はアジアの国々との将来にわたる友好を築くために、留学生の受け入れを国の方針として掲げている。そのための助成金を出したり、ビザの要件を緩めたりしている。その本来の狙いが徐々に「建前」になり、若い働き手を確保する手段として留学生が使われ始めているのだ。
深刻化する「ダブル・リミテッド」問題
1月25日に会計事務所の「太陽グラントソントン」が経団連会館で開いたセミナーで、元警察庁長官でスイス大使を務めた國松孝次氏がこうした「本音と建前の使い分け」が将来に禍根を残しかねないと警鐘を鳴らしていた。一時的な労働力として受け入れたつもりでも、外国人が定住するようになり、様々な問題が起きかねないというのだ。
実際、ブラジル人の多い浜松市などでは、なかなかコミュニティに溶け込めず、教育上の問題も発生しているという。日系人とはいえ、実際にはアジア人以上に日本人とは生活文化の異なるラテン系の人たちで、日本に定住化するに当たって、様々な障害に直面している。ブラジル人夫婦の間に日本で生まれた子供が、ポルトガル語も日本語も十分にできないまま育っていく「ダブル・リミテッド」と呼ばれる問題などが1つの典型例だ。
國松氏は言う。
「まずは国として定住外国人にどう向き合っていくのか。外国人受け入れの基本方針を示すべきです。そのうえで、単なる働き手としてだけでなく、生活者として受け入れることを考え、日本語教育などきちんとした手当てを国の責任で行う必要があります」
ドナルド・トランプ米大統領の誕生で、移民排斥のムードが世界を覆っている。だが、トランプ氏がことさら問題にするのも「不法移民」だ。日本のように基本的な方針を明確にせず、場当たり的な対応を続ければ、なし崩し的に外国人労働者が増えていくことになる。それこそ、日本人が最も恐れる「移民問題」に違いない。
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