Source:http://jp.wsj.com/articles/SB11979503982683104418104582224111708335658
GOOGLEニュースより
【マッラプラム(インド)】慢性的な原油価格の低迷を受けて、アジア各国から湾岸諸国への出稼ぎ労働者による本国への送金が急速に細っている。出稼ぎ労働者の出身国では重要な外貨獲得手段が失われつつある。
これら出稼ぎ労働者の送金は原油価格が高水準にあったときは急増し、アジア各国の経済成長を押し上げてきた。巨額の送金は教育費や医療費などを賄い、貧困層家庭を中間層に引き上げた。
しかし現在、原油安のあおりで中東産油国では仕事が失われつつあるため、出稼ぎ労働者からの送金も消えつつある。ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)の原油先物は1バレル=41ドル前後と、今年初めの30ドル割れ水準からは持ち直している。だが、2014年2月につけた高値100ドル超からは程遠い。
サウジアラビアでは7月30日、解雇されて仕事を失ったインド人労働者数千人が抗議のデモを行った。あわてたインド政府は週末、これら労働者に食料を配給するなど対応に追われた。
出稼ぎ労働者からの送金の急減で打撃を受けたスリランカは今年に入り、国際通貨基金(IMF)に15億ドル(約1530億円)の融資を仰がざるを得なくなった。出稼ぎ労働者の送金が国内総生産(GDP)の約28%に相当するネパールでは、送金の落ち込みが昨年の大地震からの復興にブレーキを掛けている。インドでも、海外からの送金減は若年層の雇用創出を難しくさせている。
世界銀行のエコノミストであるディリップ・ラサ氏は、湾岸諸国からの富の移転に頼っている国にとっては「これがニューノーマル(新常態)だ」と語る。
世銀によると、南アジア諸国のこうした海外からの送金は2015年には総額647億ドルに達し、5年前の366億ドルから大きく膨らんだ。2016年上期に関する世銀の統計はそろっていないが、各種データからは急速な減少が見て取れる。バングラデシュ中央銀行によれば、今年5月までの過去1年間の出稼ぎ労働者からの送金は、前年同期比で4.1%減少した。同国では、これら送金はGDPの15%強に相当する。
またフィリピン政府は、サウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)からの送金が過去数カ月間で6%減少したとしている。スリランカやインド、ネパールも同様の報告をしている。
サウジの建設大手サウディ・ビンラディンの関係筋によると、同社は5万人の労働者を解雇したが、その大部分はアジア人だった。同社幹部はリストラを進めていることを認めたが、それ以上のコメントは差し控えた。
インド南西部ケーララ州マッラプラム出身のニヤス氏(31)は、湾岸諸国で大工として3年間働いてきたが、サウジ当局が外国人労働者への規制を強化したのを受け、昨年12月に帰国した。月収は出稼ぎ時代の約540ドルから180ドル前後に激減し、自動車を手に入れる夢をあきらめた。今では中古のスクーターに乗り、3歳の息子を学校に通わせるだけの収入が得られるのか心配している。
「よき時代は過ぎ去った。今はここで得られる収入でやり繰りしていかなければならない」と話す。
マッラプラムでは、送金で潤っていた時に建設が開始された住宅やビルが、完成しないまま放置されている。同州カリカット大学の社会学者、N.P. ハフィズ・モハメド氏は、「ここでは何もかも湾岸マネーに依存している」と指摘する。「湾岸諸国からの送金で住宅建設や自動車購入、結婚式の費用が賄われてきた。送金がストップすれば、何もかもストップする」
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