2018年11月27日火曜日

「日本が外国人に汚染される」日本一多国籍な街・新宿で育った中国人の意外な一言

Source:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20181121-00009700-bunshun-soci
11/21(水) 、ヤフーニュースより
 いま大久保や百人町の学校は、外国人の子が半数なんですよ──。

 そんな話を聞いたのは数年前の春のこと。その時点ではすぐに取材に取りかかれず、時間が過ぎた。

【写真】多言語に対応する大久保小の「学校だより」

 外国人が多く暮らす地域は昨今各地にある。インド人が多く暮らす西葛西(江戸川区)、ネパール人が多く暮らす阿佐ヶ谷(杉並区)、ブラジル人が多く暮らす大泉町(群馬県)、あるいは、ベトナム人や中国人が多く暮らす「県営いちょう団地」の横浜市泉区(神奈川県)などだ。

 だが、そんな中でも新宿区は国別の多様さとしては最上位の自治体だろう。国籍内訳で134カ国、数にして4万2849人(2018年10月現在)と、同区の人口で8人に1人という数に達している。その新宿区の中でも、もっとも外国人の比率が高いのが大久保や百人町地区だ。同地区は、外国人比率が百人町2丁目で41.5%、大久保1丁目で47.4%と際立って高い(2017年1月)。また、日本屈指の歓楽街、歌舞伎町が隣接するという点でも特徴的だ。

 大久保地区は一般的にコリアタウンとして知られている。実際、新大久保駅の東側には、K-POPスターのグッズやコリアレストランがいくつも連なり、若い子たちが昼も夜も歩き回っている。だが、昨今は新大久保駅の西側にも変化があり、少し歩けば、ネパール、トルコなどと南アジアから西アジア、中東まで文化圏が広がっている。
子どもたちの差別といじめ
「大久保」という多国籍の人と文化が混在する街で、外国にルーツをもつ子どもたちはどのように多国籍と向き合っているのか。2ヶ月ほどかけて、同地区を中心に、行政をはじめとした各種関係機関を訪れつつ、さまざまな国の人に会っていった。

 基本的な関心事は、言語や習慣など文化が異なる中で、どのように言葉を学んだり、どのように友だちをつくったり、文化の違いをどう乗り越えているのか、ということ。ただ、それと同時に懸念していることもあった。そうした「違い」にもとづく差別やいじめだ。

 言葉が不十分なことや外見が違うことで差別やいじめが起きるのではないか、という懸念はすこし想像力を働かせば思いつくことだ。また、数年前、大久保地区では激しいヘイトスピーチデモなどがあり、大きな社会問題にもなっていた。そんな経緯を思えば、悪い想像をしてもおかしくなかった。 

 会っていったのは大久保周辺に暮らす、中国、韓国、ミャンマー、ネパールなど複数の国籍の人たち。また小学生、中学生、高校生、大学生と世代も偏らないようにした。

「いじめ」といった懸念の結論だけ記せば、大久保地区でひどい話を聞くことはなかった。

 もちろん小さいものがないわけではない。ちょっとした諍いやケンカに伴う悪口は耳にした。だが、それは解決が難しい複雑なものではなく、成長期であれば誰しも体験するであろう性質のものだった。

 おかしなことが起きないよう、学校が努力した面もあるだろう。だが、取材の実感で言えば、子どもたち自身がそもそも、そうしたネガティブな感覚をもっていなかったという感触のほうが大きい。言葉が不自由な段階での孤独感、友だちが少ない時点での疎外感はある。だが、言葉が扱えるようになり、友だちができていけば、そうした部分も薄れていく。また、外国人の子たちが多いということは、外国人という存在が珍しいことでもない。つまり、多様であること自体が平常状態なので、少数の存在を特別視しなくなっているのである。
「文化が侵食される」
 それどころか、数人の外国人からは驚くような感想を聞いた。

 それは、この先もっと外国人が入ってくると、もっと大久保は変わっていきますね、といった趣旨の質問を投げたときだった。

 5歳のときから大久保地区で暮らす、30代の中国籍の男性は「僕は、日本が逆に外国人に汚染されてしまうんじゃないかと心配です」と苦笑した。

 汚染という言葉も刺激的だが、そんな排外的な懸念を外国人である中国の人が語っていることにも驚いた。それはどういう意味なのか。さらに尋ねると、彼はこう答えた。

「日本に長く暮らしていると、日本のよさはすごくわかる。落ち着き、おもてなし、慎み深さ。私は子どもの時から日本に来て、そういう部分を自然と教わりました。これはいま中国に行っても習得できないことです。だから、この先、外国人が一気に多くなると、そういう日本のよさが伝わらないのではないか。むしろ彼らの文化に侵食されてしまうんじゃないか。そう心配してしまうんです」

 この取材を通じて、さらに驚かされたのは、そんな日本に親和感を抱いている大久保の外国人の子どもは少なくなかったことだった。

 彼らがどんなことを語ったかは、 「文藝春秋」12月号 の「日本一多国籍な教室の子供たち」という記事で記したので、参照いただければと思う。
森 健/文藝春秋 2018年12月号

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