Source: http://www.christiantoday.co.jp/articles/20677/20160429/nepal.htm
2016年4月29日、GOOGLEニュースより
2016年4月29日、GOOGLEニュースより
今ある一つのブログに人々の関心が集まっている。パキスタンやネパールなどで暮らすクリスチャンたちの迫害や現状を紹介した「貧困・迫害・災害の中にあるパキスタンの人々に愛の手を!」というブログだ。ここに現地から英文で送られてくる報告を日本語に翻訳するのは、クリスチャンで翻訳業界をリードしてきた小川政弘氏。フェイスブックを通じて数年前から小川氏と交流をしてきたネパールの医療従事者に、耳を疑うような信じられない事件が発生した。今も解決をしていない。
今回の緊急レポートに2人の人物が登場する。1人は岩村昇博士である。彼は敬虔なクリスチャンで、広島の原爆で被曝した経験から医療への道に進み、夫人と共に1962年から18年以上ネパールで医療に従事した。当時のネパール人平均寿命が37歳という環境の中、善きサマリア人の例えのように生きて仕えたいと、現地での医療向上に尽力した。
アジアのノーベル賞といわれるマグサイサイを受賞。2005年11月に78歳で召された。“ドクター岩村”“ネパールの赤ひげ”の愛称で親しまれ、彼の功績は今も高く評価されている。
そしてもう1人。今回の緊急レポートを送るシャローム氏(身の安全を考慮し仮名)。ドクター岩村の養子で長年彼らと共に医療に従事しているワーカーだ。彼もまた熱心なクリスチャンである。
さまざまな危険と制約のある中で、小川氏がシャローム氏と電子メールで連絡を取り合っている。
突然襲いかかった暴力と迫害
シャローム氏からのレポートをまとめてみた。
シャローム氏は、ドクター岩村夫妻の養子の1人で共に医療に従事。50年以上暮らし続けてきた岩村氏の家を継いで娘、姉2人、本人、弟で生活をしていた。ところが突然、彼の身に信じがたい恐怖が降りかかることになる。
2016年3月1日午後4時半ごろ、岩村記念病院で勤務をしていたシャローム氏に、娘のグレイスからただならぬ声で電話が入る。内容は「家が25~30人の警察官、15人のネパール行政局(自治体の役人)、さらに30人近い暴徒たちに包囲されている」というものだった。
シャローム氏が急いで帰宅すると、暴徒が自宅の鉄扉を壊し、敷地にまさに乱入する瞬間であったという。この時点でシャローム氏も家族にも一切の通告はなく、まさに襲撃だったという。
日本では当然、法的に不法侵入罪が適応されるが、立法府が存在するネパールでも明らかな違法行為である。それでも、警察官や行政局は大切な家財道具や献品された医療品を破壊し、家の外へ次々に投げ捨てていく。
娘のグレイスさんと2人の姉、病気を患う弟は必死に「乱暴はしないでほしい」と懇願。警察はそれでも屋外へ出るように命じ、夜の11時すぎまで抵抗をしたものの、家から追放されてしまった。
シャローム氏は「家族への暴行も行われた。親しかったはずの近所の人や多くの群衆も恐怖で助けてくれず、その様子も非常に傷ついた」とレポートしている。なんとか身一つで逃げてたどり着いた知人の家の地下でかくまってもらうことができた。
行政局の不当な数々の悪行
その後、行政局は不当に住居を封鎖。勝手に2人の事業家に売却をしてしまう。やっと話ができたかと思えば「取り戻したければ8500万ルビーを払え」と命じる。日本円にして9500万円もの額になる。そして家の建て壊しが行われ、今は何もない更地となってしまった。
このような中でも、神への信仰はゆらぐことがなく祈り続ける。「身も心も疲弊しています。祈りを必要としています」
彼はこうつぶやいている。「弟は糖尿病、姉は高血圧・・・この試練は神のみぞ知る。私たちのために勝利してくださると信じます」
今も根付く毛沢東思想 内戦を経て今なお国は揺れている
ここでネパールという国について少し触れてみる。国名「ネパール連邦民主共和国」。人口は2011年の調査で2649万人とされ、国土は北海道の約1・8倍。宗教はヒンズー教が大半を占め、仏教とイスラム教徒もわずかながら存在する。
100以上の民族が入り交り、独自のカースト制(階級)を持つのも特徴だ。日本には約5万人の在日ネパール人が暮らしており、親日国家でもある。古くから登山文化交流が盛んであった。
情勢は長らく内戦、クーデター、暗殺と混乱をしていたが、2006年から情勢は比較的落ち着いているという。2008年に王政が廃止されて以降は、大統領をトップとした民主主義国家として今日に至っている。
実際はいまだ与党の大半を共産主義派、マルクス主義派、毛沢東主義派が占めており、彼らが内戦を主導していたことから、決して平穏であるとは言い切れない情勢下にあることも事実のようだ。
今回、シャローム氏が不当に受けた弾圧の背景には、ネパールという国が抱える貧困が影響しているのだという。先ほども述べたように、政府機関には毛沢東思想に感化された官僚が多くはびこり、暴力と金、人権を無視した不当や不正が「腐敗した慣習として日常化」していることも事実だ。
今回も政府や行政、さらには警察が賄賂で秘密裏に暴徒を雇い、さらには地区のトップまでもがこの暴力事件に加担している。シャローム氏が緊迫した状況下で「ネパール全てが腐敗している」と仲介人の小川氏にメールで嘆いている様子からしても、この国がいかに腐敗しているかが分かるのではないだろうか。
クリスチャンであるがゆえに迫害を受ける
ドクター岩村夫妻が50年以上もの間、貧困に苦しむネパール人を救い、医療の発展や教育の向上に貢献してきた事実は、歴史としても高く評価されるべきことである。しかし、そのようなネパール人を救った1人の人間への敬意や歴史を払い捨て、クリスチャンであることを憎む暴徒たちにより、今回の事件が起こった。
大切な家財道具は今も野ざらしのままだという。この様子をシャローム氏は「蹂躙(じゅうりん)された」と表現している。この事件の背景は、思想に感化された官僚たちとキリスト教弾圧主義者による不正から始まったことと思われる。
なんとか救いたい、助けたい。小川氏は、そんな思い一心でブログを更新し続ける。ここでは掲載できないような痛々しい怪我を負ったシャローム氏本人の写真も紹介されている。暴徒襲撃の際に、必死に抵抗したために受けた傷である。それを見る限り、殺されかけたことが分かる。
彼らの怒りはどこから来ているのだろうか。小川氏は語る。「日本に暮らしている私たちクリスチャンは、命がけで信仰を守った経験はない。しかし、世界ではイエス様を信じているだけで命を失う神の家族たちが大勢いることを忘れないでほしい」
聖書の中で、回心する前のサウロが、クリスチャンを捕らえるために躍起になっているシーンを思い起こす。
精神的、経済的な困窮下のシャローム氏に支援の手を
シャローム氏は2カ月以上の地下生活を余儀なくされ、自身が運営している孤児院やエイズ患者や貧困のガン患者対策、多くの生徒を抱える学校経営など、故・岩村氏の遺志を引き継ぎながら七つもの団体に携わってきた。しかし、仕事ができないために資金が底を突き、命の危険にさらされ、精神的にも疲労困憊(こんぱい)している事実をありのままに訴えている。
今後法廷で争うことが可能となったとしても、弁護士費用をどうするのか。間もなく雨季に入ることから、50年間の思い出の詰まった貴重品も含め、野ざらしで放置されたままの家財道具の緊急な保管も必要で、生活環境がさらに悪化することも心配されている。
5月10日に裁判が行われることとなったが、「全ては金次第という国、どう転ぶか分からない」とシャローム氏は不安を漏らす。それでも、神様の正義が示されることを期待しているという。祈りと支援の輪が広がることを願ってやまない。
今回、小川氏は特設サイトを立ち上げ、パキスタンや貧困国のクリスチャンの現状をリアルタイムで紹介している。ページ内では緊急の基金を募っている。小川氏はFNDK福音ネット伝道協力会(伝道団体協議連絡会所属)の代表を務め、40年間ボランティアで聖書ドラマ放送を今も放送し続けている。
元ワーナーエンターテイメント・ジャパン株式会社製作室長で、在職中の46年半の間に「マトリックス」など話題作のシリーズや「ラスト・サムライ」の監修、「偉大な生涯の物語」「老人と海」の字幕翻訳など2千本を超える映画に携わり、現在は字幕翻訳者養成学校の講師をして後進の指導に当たっている。
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