2025年7月30日水曜日

謎に包まれてきた諏訪大社の神事の世界に分け入る。600年前までは続いていた神事の再現へ

 Source:https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/b9edb5ad6a569a35932fb98385f0d6f6f512ec98

水上賢治映画ライター
「鹿の国」より

 日本最古の神社のひとつとされる諏訪大社のことは、おそらく報道番組はもとより文化系番組や旅番組など、なにかしらの形で目にしたことはあるのではないだろうか?

 ただ、そこでどのような神事がとりおこなれているかを知っている人は限られるのではなかろうか。

 ドキュメンタリー映画「鹿の国」は、諏訪大社で脈々と受け継がれてきた、これまであまり表には出ていない「神事」の世界に深く分け入る。

 作品でも触れられているが、諏訪大社の祭礼は年間200回を超える。その中でも重要とされる神事では、「ミシャグジ」という精霊が降ろされる。そして、神事には鹿の贄が欠かせない。

 精霊?贄?いつの時代のことと思うかもしれない。

 でも、時代による変容はありながらも、原初からの神聖さをたずさえた形で続いている。

 これは見てもらうしかないのだが、その神事は驚きに満ちている。

 手がけたのは、これまでネパールやチベットの文化を中心に取材をしてきた弘理子(ひろ・りこ)監督。

 どのような経緯で諏訪大社を取材することになったのか、謎に包まれてきた神事の場にカメラが入ることを許された理由は?

 足掛け4年をかけて本作を完成させた弘監督に訊く。全五回/第三回

弘理子監督 筆者撮影

謎のベールに包まれてきた神事が大きなきっかけに

 前回(第二回はこちら)は、それまで見えていなかった作品への道筋が撮影開始2年ぐらいを経たようやく見えてきたことを明かしてくれた弘監督。

 では、「これは映画にできる、もしくは映画になるか」と思えた決定的なことはあったのだろうか?

「『御室神事(みむろしんじ)』と『少年の生き神・大祝(おおほうり)』の存在を知ったことが大きかったです。

 『御室神事』は、厳冬期の3か月間、神域の穴蔵で生き神・少年大祝の前で繰り広げられた神事で、ずっと謎のベールに包まれてきました。

 記録には残っていて、600年前まではやっていたことが確認できています。

 ただ、いつまでやっていたのかは記されたものが見当たらなくてわからないんです。

 諏訪信仰について調べている研究者のみなさんの間でも、『御室神事』は関心ごとのひとつで。

 どのようなことが行われてきたのか、謎のままだったんです。

 そのことを知って、わたしもやはり強く興味を抱いたといいますか。

 いちばん寒さの厳しくなる時期に、三カ月もの間、半地下の穴蔵に籠って神事を行っているって、どういうことなんだろう?と思うじゃないですか。

 ふつうに考えたら、穴蔵だからたぶん薄暗くて寒い。そこで三カ月もの間籠って、どんな神事が行われてたのか、ちょっと想像できないですよね。

 それで逆に想像を駆り立てられて、『御室神事』を再現できないかというアイデアにつながっていきました。

 そして、『御室神事』で行われていた芸能の再現は、作品において大きな要素になっています。

 ですから、このことを知ったことは、大きかったと思います」

「鹿の国」より

謎に包まれた「御室神事」の再現に挑む

 作品内で再現に挑んだ『御室神事』。

 ほとんど資料の残ってない神事芸能を、どのようなアプローチで再現していったのだろう?

「これはもうわずかな資料を手掛かりに、そこに諏訪信仰の研究するみなさんに結集していただいて、お力をおかりして取り組みました。

 わたしは、なにかの資料をみたときにちょっと怖い神事のように書かれていて、穴蔵で行っていることもでもあるし、暗いイメージを抱いていたんです。

 ただ、研究者の方々の話を訊いていくと、そんなおどろおどろしく恐ろしいものではない、むしろ滑稽で楽しいものという見解で。

 穴蔵に籠って、鹿肉を食べて、お酒を飲んで踊って、豊穣を願う芸能を奉納していたと。

 そのような諏訪信仰の研究者のみなさんのアドバイスをもとに、再現に取り組みました。

 再現したいと思ってはみたものの、はじめは果たしてほんとうに実現できるのか、わかりませんでした。

 ただ、実際に取り組んでみると、諏訪信仰を研究してきたみなさん、諏訪の土地に愛着をもって生きてきたみなさんが集まってくれて力を貸してくださいました。

 そのみなさんの情熱があったからこそ、再現できたと思います。

 『御室神事』でどんなことが行われていたのかは、ぜひ作品の再現映像を通してみていただければと思います」(※第四回に続く)

【「鹿の国」弘理子監督インタビュー第一回】

【「鹿の国」弘理子監督インタビュー第二回】

「鹿の国」より

「鹿の国」

監督:弘理子 

プロデューサー:北村皆雄

語り:能登麻美子・いとうせいこう

出演:中西レモン・吉松章・諏訪の衆

https://shikanokuni.vfo.co.jp

全国順次公開中

特集上映ポスタービジュアル

観客動員数2万5000人突破した『鹿の国』ロングラン記念 の

特集上映《関連作品一挙上映"諏訪、生き神、供犠"》を

5/9まで@ポレポレ東中野にて開催中!

詳細はこちら → https://pole2.co.jp/coming/67dc21e20d392e268bfb7767

「鹿の国・ファンアート展」

ポレポレ東中野、岡谷スカラ座、フォーラム仙台 (シアターセブンでも予定)開催中

筆者撮影の写真以外はすべて(C)2025 Visual Folklore Inc.

0 件のコメント:

コメントを投稿