Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/df5243ae86aadbb3c8fcff075523a81bc4065b40
北朝鮮は先週、ロシア軍に協力するためにウクライナの前線に送り込む兵士の数を3倍に増やす計画だと報じられた。同国は昨年11月にすでに1万1000人の兵士を派遣しているが、向こう数カ月以内に北朝鮮から追加派遣される兵士の数は2万5000~3万人に上るものとみられる。 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は6月の記者会見で、同国北東部のロシアとの国境沿いにロシア軍が5万人の兵士を集結させていると説明。ロシアは今夏、新たな地上戦に向け、自国の占領下にあるウクライナ領の一部に北朝鮮兵を送り込む可能性があると示唆した。北朝鮮には最大15万人の追加部隊を派遣する能力があるが、これほど多数の部隊をシベリアを越えて輸送するにはロシアの航空機を改修する必要がある。 北朝鮮の国営メディアは初めて、ウクライナで戦う自国軍兵士の映像を公開し、すでに数千人が死亡したことを認めた。それにもかかわらず、北朝鮮はウクライナ侵攻への関与を強めている。北朝鮮にとって、ロシアに援軍を送ることは、同国からの支援を冷戦時代の水準にまで回復させるための長期的な投資の一環だからだ。北朝鮮はすでにロシアから食料と財政の支援を受けており、現在は陸海空の重要な軍事システムの改善に対する協力を求めている。同国がロシアに援軍を送り込むことで、両国は貿易上だけでなく戦略的な関係も築きつつある。 北朝鮮は2022年、ウクライナ東部の親露派勢力が支配する「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の独立を承認した数少ない国連加盟国の1つとなった。だが、北朝鮮のロシアに対する支持は、当初は単なる外交的なものにとどまっていた。 ロシアが2022年にウクライナ侵攻を開始して以降、注目を集める2つの首脳会談が開かれた。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は2023年9月、極東のボストチニー宇宙基地で北朝鮮の金正恩総書記と会談した。翌年6月にはプーチン大統領が異例の北朝鮮訪問を行い、包括的戦略パートナーシップ条約に調印した。この条約はいずれかの国が攻撃された場合に相互防衛を規定するもので、冷戦以来、両国間の最も強力な協定となった。 ロシアにとって、この協力から得られる利益は明らかだ。同国は兵士を必要としているのだ。ロシア軍は昨年、1日当たり1000人以上を失い、占領した土地1平方キロ当たり約100人の兵士が死亡した(ロシアはウクライナ領の約19%を支配している)。同年、ウクライナ軍がロシア西部クルスク州に越境攻撃を仕掛けた際にもロシア軍は撃退に苦戦し、同州だけで約15の大隊が失われた。ロシアは累計で79万人以上の死者を出しており、これはウクライナ側の死者数のほぼ2倍に当たる。 こうした犠牲を鑑みると、プーチン大統領は政治的に不人気な国内の動員に再び踏み切る危険を冒すことはできない。同大統領は昨年、18万人の兵士と150万人の現役軍人を増員すると約束したが、ロシア人以外の戦闘員を使うことで、軍を再編する時間を稼いでいる。ロシアはソマリア、シエラレオネ、キューバ、ネパールからも兵士を募集しているが、北朝鮮との協力の方が利点が多く、はるかに大規模な部隊を展開することができる。
北朝鮮兵の配備には複雑な問題も
他方で、北朝鮮兵の配備には複雑な問題も伴っている。北朝鮮は、通常の歩兵より訓練の行き届いた特殊部隊を派遣したが、当初の展開では有能な指揮系統が欠如していた。同国の部隊には軍事クーデターを防ぐために複雑な指揮系統が敷かれており、これが障害となって効率的な意思決定が妨げられているのだ。また、言語の壁による問題もあった。ロシア語を話す北朝鮮人はほとんどおらず、朝鮮語を話すロシア人はさらに少ない。 ウクライナ侵攻への関与は1950年代初頭の朝鮮戦争以来、北朝鮮にとっては初となる大規模な武力紛争への参加であり、同国の兵士は近代的な戦争への適応に苦慮している。北朝鮮兵には戦闘経験が不足しているだけでなく、地勢に関する知識も欠けていた。同国の兵士は当初、ドローン(無人機)や砲撃の格好の標的となった。厳格な規律が敷かれているため、ドローンに容易に発見されやすい平原でも一斉に行動し、頭上でドローンの音を聞いても散らばって身を隠そうとはしなかったからだ。また夜になると裾の広がった上着を羽織るため、遠くからでも目立った。さらに、戦場で仲間の遺体を回収するために自らの命を危険にさらすのをいとわなかったことも、犠牲者の数を増やす要因となった。 北朝鮮は数カ月間で大きな損失を被り、派遣された兵士のほぼ3分の1に当たる約4000人の死傷者を出した。被害があまりにも大きかったため、北朝鮮軍は1月に前線からの撤退を余儀なくされた。 しかし、ロシア軍が北朝鮮兵を使い捨て要員のように扱ったにもかかわらず、金総書記を思いとどまらせることはできなかった。同総書記は3月、3000人の兵士を追加派遣することに同意したのだ。北朝鮮軍は最初の派遣以降、戦場経験を積み、近代的な電子戦の戦い方に関する理解を深めている。 同国は兵士だけでなく、兵器もロシアに提供している。約1万3000台の戦車と300機以上の戦闘機という大量の軍事装備を失ったロシア軍は、供給を必要としている。北朝鮮が供与した兵器には、長距離砲システム200基、KN23やKN24ミサイルなどの短距離弾道ミサイル100基以上、240ミリ口径の多連装ロケット砲50基、170ミリ自走砲または榴弾砲20基などが含まれる。KN23ミサイルは最大1トンの弾頭を搭載しており、ロシアの同等のミサイルより強力だ。 北朝鮮は2023年9月以降、1万5000個を超える貨物を出荷しており、その中には最大900万発の砲弾を含む数十億点の武器が含まれていたとみられ、ロシアの122ミリ砲弾と152ミリ砲弾の在庫を補充するのに貢献している。ウクライナは、ロシア軍が使用した軍需物資の7割が北朝鮮から供給されたものだとみている。この戦争は砲撃に大きく依存しているため、北朝鮮からの供給はロシア軍を支える力となっている。 だが、北朝鮮の兵器の中には信頼性が低く、古びたものもあった。同国から最初に送られたKN23弾道ミサイルは精度が不十分で、ロシアと北朝鮮の専門家が緊密に協力した結果、ようやく改善された。しかし、北朝鮮の武器製造は西側の規模や効率性には及ばない。したがって、北朝鮮による武器支援は長期的には持続できない可能性があり、主にロシア軍の再編成を支援するための暫定的な措置に過ぎない。 北朝鮮軍は作戦上の欠陥を抱えているものの、金総書記が多数の命を犠牲にしてまで兵士や武器を供給する用意があることは、ロシアにとって大きな助けとなっている。だがこれは、ロシアがウクライナとの戦争に自力で勝利する力がないことを示す証拠でもある。
Natasha Lindstaedt

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