2025年7月31日木曜日

「死ねと言うのか」、大阪・関西万博のアンゴラ館工事代金未払問題で、踏み倒された業者の悲痛な声

 Source:https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/2401f3abb515902ab5f44c39b91c55641efdde81

幸田泉ジャーナリスト、作家
工事代金の未払いが発生し、開館できないままのアンゴラパビリオン=2025年6月4日、大阪市此花区、夢洲の大阪・関西万博会場で、筆者撮影

 4月13日に開幕した大阪・関西万博で、パビリオン建設の代金を支払ってもらえない下請け業者らが「万博工事代金未払い問題被害者の会」を5月27日付で結成した。会の代表の設備工事会社社員は5月30日に大阪府庁で記者会見し、「開幕に間に合わせるため昼夜を問わず働いたのに、万博倒産しかねない状態。日々の生活に困っている人もいる。万博協会(2025年日本国際博覧会協会)は、万博に尽力した人々を救済してほしい」と訴えた。

「三次下請け会社が4300万円の踏み倒し」

万博のアンゴラパビリオン工事で代金未払いがあり、関わった業者が窮状に陥っていると記者会見で訴える「万博工事未払い問題被害者の会」の代表=2025年5月30日、大阪市中央区の大阪府庁で、筆者撮影

 代金未払いが起こっているのはアンゴラのパビリオン。各国が趣向を凝らす「タイプA」のパビリオンが資材の高騰や人手不足で建設が遅れているため、2023年夏に万博協会は工事を簡素化した「タイプX」を提案した。万博協会が箱型の建物を建設し、各国は内装、外装だけを行うもので、アンゴラはこのタイプXだ。

 記者会見した「被害者の会」の代表によると、アンゴラパビリオンは元請けのイベント会社から、一次下請け、二次下請け、三次下請けへと仕事が流れ、自社の設備工事会社は四次下請けになる。三次下請けの会社から「パビリオン建設を手伝ってほしい」と依頼され、今年2月14日から工事現場に入った。この設備工事会社は社員数人の家族経営であり、自社だけでは対応できないため、既知の会社や職人らに協力を求め、二十数人が集まってくれたという。

 しかし、三次下請けの会社からは、2月分の工事代金数百万円は3月に支払われたが、その後、3月分、4月分の計4300万円がまったく支払われなかった。「被害者の会」の代表は「二次下請けの会社からは1億4500万円が三次下請け会社に支払われており、三次下請け会社で金が止まっている。何度も支払いを求めたが、期日を引き延ばした挙句、連絡がつかなくなった。これは詐欺ではないのか」と憤る。

 「最初は電気設備工事だけのつもりだったのが、通信、防災、塗装まで仕事が広がり、多くの人を巻き込んでしまった」と言い、「私のところへ『家賃が払えない』『飯を食っていけない』『死ねってことですか』と悲痛な声が来ている。(三次下請け会社が)こんなひどい会社だと見抜けなかった自分が情けない」と悔やむ。

 また、建設業許可のない会社がパビリオン建設を請け負っているのにも疑問を呈した。元請けと一次下請けの会社はイベント会社で、建築のノウハウがなく、パビリオンの工事現場では開幕までに時間がない中、安易な設計変更が相次ぎ、「異常な現場だった」と振り返った。

万博協会は「民民の話」と代位弁済は拒否

アンゴラパビリオンは工事代金の未払いによって、消防設備の最後の仕上げ工事が止まり、開館できない=2025年6月4日、大阪市此花区、夢洲の大阪・関西万博会場で、筆者撮影

 「被害者の会」代表は、5月中旬から万博協会にも助けを求めている。万博協会国際局に何度も電話したが「確認します。組織で情報共有します」との回答しかないという。万博協会に未払い代金の代位弁済を求めると、「民民の話です」と拒否された。

 アンゴラパビリオンは工事代金の未払いによって、消防設備の最終仕上げができておらず、未だにオープンしていない。「被害者の会」代表は、「万博協会は万博を運営する責任があるのに、アンゴラ館が閉じたままでいいのか」と指摘する。

 大阪・関西万博では、ネパールのパビリオンが今年1月から工事が停止し、開館できていない。ネパールの都合による工事代金の未払いが原因とされる。「被害者の会」代表は、「アンゴラ、ネパールだけでなく、開館している他のパビリオンも内実では、工事代金の未払いトラブルがあると聞いている。万博工事でこんなに問題が多いのは、万博協会がしっかり管理できていないから。短い工期を強いたうえに監督不行き届き。それで『民民の問題』と片付けるのはおかしいと思う」と話す。

 万博協会副会長、吉村洋文・大阪府知事の6月4日の記者会見では、「アンゴラは業者に金を払っているのに、アンゴラ館が開館できないのは国際的な信用関係にも影響する。国や大阪府が未払い代金の立て替え払いをして、早く解決させないといけないのでは」と質問が出た。吉村知事は「税金で民民の問題を処理するのは筋が違う。アンゴラ館については準備が整い次第、開館すると聞いている」と回答し、代金未払い問題が解決しないまま、アンゴラパビリオンが開館する可能性を示唆した。

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ジャーナリスト、作家

大阪府出身。立命館大学理工学部卒。元全国紙記者。2014年からフリーランス。2015年、新聞販売現場の暗部を暴いたノンフィクションノベル「小説 新聞社販売局」(講談社)を上梓。現在は大阪市在住で、大阪の公共政策に関する問題を発信中。大阪市立の高校22校を大阪府に無償譲渡するのに差し止めを求めた住民訴訟の原告で、2022年5月、経緯をまとめた「大阪市の教育と財産を守れ!」(ISN出版)を出版。

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