Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/87fde6ea806856d66a2900526297f9b1fa1f7f19
「金さえあれば大丈夫、というのは事実です」
中国などから外国人が〈格安の500万円で日本へ移住してきている〉との報道が相次いでいる。これは日本で「経営・管理」の滞在資格(ビザ)を取得するものだが、本来の経営実態がない事例もあるともいう。 【えっ!?こんなに…】10年間で3倍以上に…!?「経営・管理ビザ」での在留外国人数の推移 「金さえあれば大丈夫というのは事実です。500万円を一時的に用意できて、日本で助けてくれる人がいれば」 こう話すのは、この問題に詳しい行政書士の西山健二さん。外国人が出入国在留管理局に在留申請をする際、手続きを支援するのが行政書士だ。 「移住」増加の背景には、医療など日本の充実した社会保障制度や、良好な生活環境をアピールしているブローカーの存在も指摘されている。米国で同様のビザを取得するには数千万円程度の投資が必要とされ、それに比べて日本は「格安」というのだ。 こうした報道が相次ぐなか、石破茂首相は4月初旬、次のような政府の「答弁書」を国会に提出した。 「経営・管理の在留資格で日本に在留する外国人富裕層が増えており、そのなかには該当の在留資格にかかわる営業の実態が確認できない事例がある旨の報道があったことは承知している」 参政党の神谷宗幣参院議員が『「経営・管理」の在留資格を悪用した外国人移住の実態に関する質問主意書』を国会に提出したのを受け、政府が答弁したものだ。神谷議員の事務所の担当者によると、産経新聞や読売新聞の報道などをもとに質問したという。 この質問主意書は、経営・管理ビザなどの不正取得が深刻な問題になっていると指摘。特に、中国富裕層が高品質な医療サービスを低コストで享受するため、日本に会社を設立し、このビザを取得して移住するケースが増えている、などとしている。 出入国管理統計で、経営・管理での在留外国人数はこの10年くらいで急増しており、昨年6月末時点で、そのうち半数以上が中国人となっている。 一方、首相は答弁書で、法務局が商業登記法など関係法令に基づき、適切に商業・法人登記の事務をしている、などと答えている。 〈中国人富裕層が狙う「経営管理ビザ」の実態、架空会社設立し医療費「タダ乗り」〉と産経新聞は3月15日にオンライン記事で報道している。中国人に日本への移住を斡旋する同胞のブローカーが、日本での生活の快適さを示した資料を示し、経営・管理ビザの取得を持ちかけているなどという。 〈経営・管理ビザ「500万円は格安」、中国SNSにあふれる移住ノウハウ…中間層も定住進む〉と読売新聞は3月1日にオンライン記事で報じた。中国のSNSには、経営・管理ビザで民泊経営者として日本に移住する方法を解説した投稿があふれているという。
「抜け穴」だらけの在留資格、人手不足の出入国在留管理局
『経営・管理ビザ』はどういうものか。 外国人が日本で会社を設立するのに必要なビザで、日本での外国人の起業を促すために最近、要件が緩和されている。たとえば、先出の西山さんがよくある事例として挙げたのが、『インネパ』と呼ばれる、ネパール人が日本でインド料理店を経営するようなケースだ。 一般的な就労系の在留資格は、滞在期間が1年からだが、経営・管理ビザは数ヵ月の短期も新設された。これにより、経営・管理ビザを「とりあえず4ヵ月」で申請するケースが多いと西山さんは言う。さらに、その後は在留期間更新許可申請を提出すれば認められることも多く、最初の4ヵ月に1年間を加えて計16ヵ月の滞在なら“何とかなる”という。 経営・管理ビザを申請するためには、資本金の500万円のほかに、雇用保険などを含めて常勤職員2人を雇用する必要があるなどの、さまざまな要件がある。しかし、500万円を用意できれば“何とかなる”とされ、問題になっているのだ。 西山さんによれば、このビザ申請を受けた出入国在留管理局は、申請者の事業に実態があるか、きちんとした事業書があるか、あるいはそろえる予定があるか、事業がある程度の期間にわたって持続可能か、などをみるという。 こうした要件を満たす手続き自体は「面倒くさい」と西山さんはいう。在留資格の種類が400くらいあるうち、「就労系の在留資格では断トツに審査期間が長く、それだけ審査に時間がかかる」とも。 しかし一方で、西山さんは「審査に対して説明できる資料などの用意ができていれば(審査通過は)簡単」とも話す。 「日本で会社を設立し、こうした16ヵ月の在留が認められた外国人がいっぱいいるのではないか」(西山さん) なぜなら、この経営・管理ビザには多くの「抜け穴」があるからだという。 資本金500万円がなくても、同胞の友人などから一時的に借りて間に合わせ、会社設立後に返金するケースもあるとみられる。これが「見せ金」という違法行為で、制度の抜け穴のひとつだと西山さんは説明する。 さらに、たとえば前出の『インネパ』の事例で、実態はネパール人を何人も日本に連れてきて、働き先を紹介していたということもあったという。しかし、在留期間の更新手続き時に、インド料理店の経営実態がなく、人材ブローカーだったとなれば、当然許可されず、帰国せざるを得なくなった。 しかし、こうした事例で問題なのは、一度帰国しても、以前と同様の経営・管理ビザを申請すればまた来日できるということ。 西山さんは「前の日本滞在中に違法なことをしていなければ、そこで本来の経営実態がなかったとしても、それが次の審査では問題にならないのです」と話す。つまり、“まっさらな状態”で再び審査となり、経営・管理ビザが何度でも発給されるというのだ。 まだ抜け穴はある。西山さんは「本来予定していた活動を90日間していないと、在留資格の取り消しになり得る。ところが、出入国在留管理局のスタッフは忙しいので、風俗などを除き、ほとんど調べに行かず、更新のタイミングの時の状況しかチェックしません」と話す。つまり、更新時だけ“繕えばいい”状態だという。 こうした出入国在留管理局の業務実態について、西山さんは近い将来、大きく変わる可能性があり、今の状況を過渡的なものとみている。 米国がテロ対策などで導入した電子渡航認証制度「ESTA」をもとに、日本も「JESTA」の導入を目指しているからだ。西山さんは「これを導入すると入管の審査スタッフがごっそり必要なくなり、検査のほうにスタッフが動くだろう」と言う。 経営・管理ビザは抜け穴だらけとの指摘は絶えない。石破首相は当局が適切な対応をしていると説明するが、出入国在留管理の制度や業務の「抜け穴」がなくなるのは、いつになるのだろうか。 取材・文:浅井秀樹
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