2020年6月11日木曜日

「差別的な政府対応に納得いかない」留学生が憤り 困窮学生への現金給付3つの問題点〈AERA〉

Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/1349e2120071da5e1f2acda0414ef5a8fa07a7e9

配信、ヤフーニュースより

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 安倍政権の新型コロナ関連政策はどれも的外れ。経済的に困窮する学生たちへの現金給付でも繰り返そうとしている。その問題点とは。AERA 2020年6月15日号で掲載された記事を紹介。 【写真】青い空を飛び回るブルーインパルス

*  *  *  初夏の青い空を飛び回るブルーインパルスを見た人も多いだろう。東京の上空に、白いスモークを描いた。  5月29日に航空自衛隊が、新型コロナウイルスの対応にあたる医療従事者に感謝と敬意を伝える目的で開いたイベント。都内の公立病院に勤める女性医師はこの日、当直室でニュースを見ながら、複雑な感情を抱いた。 「緊急事態宣言が解除になっただけでまだ終息ではありません。ワクチンも治療薬もできていないんですよ」  新型コロナの影響で経営が厳しい医療機関は多く、勤務先の公立病院も例外ではない。公費でこうした催しをするくらいなら、1円でもいいから病院に資金を入れてほしい、と強く望む。  医師はこう続けた。 「パフォーマンスとしてやるにしても、やり方と時期を考えるべきです。何も考えていない、何も考えられない、言われたことしかできない政治家や官僚が多いのではないでしょうか。想像力の欠如です」  コロナ禍を巡っては、その「想像力の欠如」の連続だった。全国紙の政治部記者が言う。 「象徴的だったのが安倍晋三首相の星野源さんとのコラボ動画です。オッサンが若者ウケを狙ったけど、ダダ滑りした構図。これに限らず、振り付けする周りの官僚も含めて、世間とのズレに気づかないのはちょっとまずいです」  政策には次々と「ズレ」が反映されてきた。  学校の休校に伴って厚生労働省が新設した補償制度。学校に行けなくなった子どもの世話のため働けず、所得が減ったフリーランスの保護者らを対象にした補償がある。当初、風俗業などで働く人たちが対象外とされたが、SNSなどで批判が高まり方針は撤回された。  同じ轍(てつ)をまた踏もうとしている。新型コロナの影響で困窮する学生たちを対象にした現金の給付についてだ。国士舘大学の鈴木江理子教授(移民政策)は、問題点が三つあると考える。 「対象が43万人で、国内の学生の1割強にしかなっていません。人数枠を設定せず、困窮の度合いによって対応するべきです。二つ目は留学生にだけ成績要件がついている点で、最後に朝鮮大学校が対象に含まれていないことです」

支給制度の概要はこうだ。対象は大学生や大学院生、留学生、短期大学生、専門学校生、日本語学校生ら。アルバイト先が休業するなどして収入が激減した場合を想定している。金額は10万円、または20万円。  そのうち外国人留学生には、成績や出席率に要件がついた。上位3割程度が対象となり、労働目的で入国する留学生を排除する目的があったとみられる。  だが、留学生の生活はまさにアルバイトなどに支えられている。上智大学大学院2年生で、ネパール出身のダリマ・タマンさん(23)の例を見よう。  シングルマザー家庭に育った。2013年に来日し、アパートで一人暮らし。自宅そばのインドカレー店でのバイトは新型コロナ前、出入国管理法で決められた上限の週28時間入れていた。月々のバイト代は8万円程度で、他に民間の財団から7万円の奨学金をもらっている。  3月末から店の営業時間は短くなり、シフトが減った。5月からスーパーのバイトを始めたが、バイト代は減る見込みだ。まかないが出ないのも痛手で、切り詰めた生活を送っている。  当面の問題は、半年分の授業料の32万円だという。5月上旬が支払いの期限だったが、大学院側との話し合いで猶予してもらっている。学費に回していた奨学金を生活費にも充てざるを得ず、支払いまであと15万円足りない。6月上旬に入る最初のスーパーのアルバイト代は家賃などに回す予定で、まだ授業料まで手当てできない。福祉関係の仕事をしているネパールの母親もコロナ禍で仕事が減っており、援助は頼めない。日本での就職を希望しているが、かばんやスーツは友人から借りるつもりだ。 「差別とも言える日本政府の対応に納得がいきません」(タマンさん)  外国人人権法連絡会の師岡康子弁護士は、今回の政府の対応が「著しい人権侵害」だと考える。特に、留学生にだけ給付の要件を設けたことと、朝鮮大学校を対象外にしたことだ。日本が批准している人種差別撤廃条約、自由権規約、社会権規約などを挙げて、厳しく非難する。 「こうした国際人権諸条約に違反する支給の仕組みになっています」 (編集部・小田健司) ※AERA 2020年6月15日号より抜粋

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