2019年2月19日火曜日

医療現場に言葉の壁 痛みや手術…不安な外国人

Source:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190218-00000016-mai-soci
2/18(月)、ヤフーニュースより
 外国人労働者の受け入れを拡大する改正入管法の施行が4月に迫る中、医療現場で「言葉の壁」にどう対処するかが課題となっている。病気や医療行為について理解するには日本語の高い能力が求められ、医師の説明をのみ込めないまま処置を受ける外国人が現状でも少なくないからだ。政府は医療機関への医療通訳の配置を後押しするなど対策を急いでいるが、現場からは「まだ体制が不十分」との声も上がる。【大久保昂】

 ◇少数言語の対応、急務

 「手術したのに治らない。理由が分からず、ずっと不安だった」

 2015年春に来日し、埼玉県で暮らすミャンマー人の女性(35)は、腹痛に悩まされてきた3年間の日々をこう振り返った。

 来日から半年ほどしたころ、腹部を激しい痛みが襲った。連れて行かれた病院にはビルマ語の通訳がいなかった。病院側の説明の中の英語を手掛かりに、おなかの病気で手術が必要なことをかろうじて理解し、同意書のようなものにサインしたのを記憶している。

 手術は済んだのに、その後も断続的な腹痛に見舞われた。昨夏以降に2度入院。その度に医師から説明を受けたが、やはりビルマ語の通訳はなく、詳細はのみ込めなかった。

 「在日ビルマ市民労働組合」を通じ、外国人の医療問題に取り組む山村淳平医師(64)に相談し、転機が訪れた。山村医師は手術時の写真などから、女性が受けたのは腸管が詰まる「腸閉塞(へいそく)」の手術で、術後の炎症などが原因で再発した可能性が高いと推測。昨年12月、女性はビルマ語の通訳を介して山村医師の説明を受け、ようやく自分の体に起きていたことが理解できた。症状は治まり、腸の詰まりを防ぐための食事の改善に取り組む。

 東京都内のクリニックでビルマ語の医療通訳を務めるマテンテンウさん(45)は、こうした患者に何度も遭遇してきた。「症状をうまく説明できないために病院へ行くことをためらう外国人もいる。医療を受ける権利を守るためにも、ビルマ語やベトナム語、ネパール語といった少数言語の医療通訳を増やす必要がある」と訴える。

 ◇医療通訳利用、12.7%だけ

 厚生労働省が救急指定病院などを対象に16年に実施した調査では、約8割の医療機関が外国人患者の受け入れ実績があった一方で、医療通訳の利用経験があったのは12.7%にとどまった。埼玉県が15年度、外国人を対象としたアンケート調査の一環で日本の医療機関の不便な点を尋ねたところ、回答者の約7割が言葉が通じない点を挙げた。

 改正入管法施行にあたり、政府は地方の医療機関へも医療通訳の配置などを進める方針だが、導入拡大には待遇改善が不可欠との指摘もある。甲南女子大の中村安秀教授(国際保健学)によると、医療通訳は高い語学力や倫理観が求められるにもかかわらず、賃金はアルバイトと変わらないケースも少なくない。

 中村教授は「インバウンドの増加で通訳者の需要が高まっており、このままでは人材確保が難しくなる。資格制度などを設けて医療通訳の質を担保した上で、責任の大きさに見合う待遇に引き上げていく必要がある」と話す。

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