Source:https://www.nippon.com/ja/news/yjj2019020500606/
日本政府が外国人労働者の受け入れ拡大を狙い、新在留資格を4月から導入するのを前に、新制度により日本での就労希望者増加が見込まれるネパールでは、移民の移動の透明性強化を目的とした政府間合意の締結を求める声が高まっている。受け入れ国の雇用主と手を結んだ悪質ブローカーが暗躍し、「奴隷労働」を強いられる例が既にあり、危機感が増している。
ネパールには、労働力を吸収できる大きな産業がない。国民は海外に働く場を求め、国際労働機関(ILO)の調査では、2015年の国内総生産(GDP)の3分の1を海外送金が占める「移民大国」だ。
法務省の統計では、日本でも18年6月時点で8万5000人超が暮らしており、国籍別では上位6位に入る。3分の1は留学生。週28時間を上限に働けるため、留学生の動向に詳しい日本人専門家は「就労目的の留学生も多い。週50時間働いている者も少なくない」と打ち明ける。
渡航の際、受け入れ先を見つけたり、必要書類をそろえたりするのにブローカーが大きな役割を果たす。移民の労働問題に詳しい地元記者のジャナク・ラジ・サプコタ氏は「渡航者が多いマレーシアや湾岸諸国では、悪質なブローカーが絡む『奴隷労働』が行われている」と批判する。
悪質ブローカー化した日本語学校も存在する。首都カトマンズ中心部にある「あさひ日本語学校」のカウンセラー、ロシャン・バンダリ氏は「わが校では日本語能力試験で(基本的な日本語が理解できる)N4レベルに合格しないと留学させないが、より低いレベルの学生でも『送れ』と言ってくる日本の学校がある」と証言。サプコタ氏は「日本のホテルでは留学生数千人が働いている。ホテルのオーナーが日本、ネパールの語学学校と結託、就労目的の留学生を低賃金でこき使っている」と指摘した。
カトマンズの携帯電話修理店で働くバサンタ・マハタラ・チェトリさん(24)も日本留学を考える1人だ。「ブローカーにたくさんお金を取られ、渡航費用の借金を返すため、日本で3、4年働いてもお金がたまらない人がいるのは聞いている」と話す。ただ、自分が入学を考えている学校が「悪質かどうかは知らない」とほほ笑むだけだった。
専門家は「悪質ブローカーを見分けるのは困難」と口をそろえる。移民労働局のボラ・ナス・グラガイン広報課長は「既に『新在留資格対応』をうたった語学学校が出現している。悪質ブローカーが介入する余地をなくすため、移民の出入国を一元的に管理できる透明性の高い政府間合意が必要だ」と強調。他の専門家も異口同音に、新制度導入に際し対応を求めた。
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