Source: https://www.nishinippon.co.jp/feature/new_immigration_age/article/334304/
2017年06月09日、GOOGLEニュースより
2017年06月09日、GOOGLEニュースより
客引きも、引かれる客も外国人。昨年度、訪日外国人観光客(インバウンド)が200万人を突破した沖縄ではありふれた光景だ。
ネパール人のサントスさん(26)=仮名=も那覇市の国際通りに立ち、量販店の呼び込み役として働いている。服には「ENGLISH OK」のバッジ。留学生として日本語学校で学んだが、仕事で重視されるのは英会話の能力だ。
母国は英語教育に熱心で若い世代ともなれば日常会話に困らない。「日本で観光の仕事がしたい」。政府は東京五輪の2020年にインバウンド4千万人の目標を掲げる。外国人が外国人をおもてなし-。そんな近未来を予感させる沖縄が今年3月、「3割ショック」に揺れた。
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「1億円以上が水の泡になった」。県南部の日本語学校の理事長は嘆く。4月の入学予定者217人のうち、在留資格認定証明書が交付されたのは4割に満たない78人のみ。その分の学費や寮費が入らなくなる。
県内全13校の平均も36・8%にとどまる。昨年度は55・7%。全国的には8~9割の地域も珍しくない。「なぜ沖縄だけ…」。審査した入国管理局那覇支局は「通常通り」と言うだけで詳しい理由は明かさない。
那覇市から車で40分の北谷町。観光協会の渡真利(とまり)聡会長(57)もショックを受けた。町ではインバウンドの恩恵でホテルの建設ラッシュが続き、2、3年後には3倍近い2千室に増える計画だ。課題は従業員の確保で、留学生に期待が集まる。「町に日本語学校が欲しいなあという話もしていただけに、このままでは商機を逃してしまう」
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「留学あっせん 書類偽造」「『稼げる』日本行き誘う 教育マフィア」…。
沖縄の新聞2紙も昨年末から、一部で過熱する留学ビジネスの実態を報じてきた。海外の仲介業者が出稼ぎ目的の留学生を募り、日本側へ受け渡す。失踪や不法在留も後を絶たない。
「新聞が書いたから審査を厳しくしたのでは」。そんなうわさもささやかれるが、戸惑ってばかりもいられない。4月から、渡真利さんたち観光業と日本語学校の関係者が初めて顔をそろえ、那覇市で対策会議を開いている。その中で、奨学金を出して留学生を迎えようという提案があった。
似たような学費貸付制度は、福岡県中小企業経営者協会連合会が導入した。4月にベトナム人1人、秋にはさらに6人を来日させる計画だ。ただ、企業側が出資すれば職業選択の自由を奪うと見なされ、違法にならないか。入管に相談しても「“きれいな実績”を重ねてほしい」とかわされ、手探り状態が続いている。
結局、那覇での対策会議でも結論は出なかった。1億円の穴埋めに悩む理事長は「基準が分からないと対応のしようがない」と不満を漏らす。「移民」を認めない国の姿勢に現場が振り回される。
◆6月17日に福岡市で公開シンポジウム
西日本新聞社は、定住外国人との共生の道筋を探るキャンペーン報道「新 移民時代」の公開シンポジウムを6月17日午後1時半~4時、福岡市早良区西新2丁目の九州大西新プラザで開く。人口減社会で持続的発展を探る一般財団法人「未来を創る財団」(会長・国松孝次元警察庁長官)との共催で、入場無料。
「フクオカ円卓会議」と題し、九州で外国人労働者が最も多い福岡県で暮らす外国人や支援者、企業経営者、行政関係者、日本語教育関係者、研究者らが一つのテーブルを囲む。
定住外国人の受け入れ方針の明示や、官民で政策課題を議論する委員会の設置を政府に提言してきた国松会長が基調講演。本紙取材班が報道で浮き彫りになった課題を報告し「労働者としての外国人」「生活者としての外国人」をテーマに人口減時代の日本で共に生き、暮らす方策を考える。一般席は定員200人で申し込み不要。問い合わせは「新 移民時代」取材班にメール(imin@nishinippon-np.jp)で。
=2017/06/01付 西日本新聞朝刊=
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