2017年6月20日火曜日

名古屋入管 「ネパール治安改善」で難民判決の2人不認定

Source: https://mainichi.jp/articles/20170614/k00/00m/040/116000c
毎日新聞


 昨年名古屋高裁で国の難民不認定処分を取り消す判決が確定したネパール国籍の男性2人に対し、法務省は治安状況が改善し迫害の恐れはなくなったとして、改めて難民と認めない処分を決め、13日に名古屋入国管理局を通じて伝えた。判決結果とは異なる処分に対し、難民支援の弁護士は「司法判断を骨抜きにする決定」と批判し、識者からも疑問の声が上がっている。
     2人はいずれも愛知県内に住む40代と60代の男性。ネパール共産党毛沢東主義派(マオイスト)から迫害を受ける恐れがあるとして難民申請し、2011年に退けられた。処分取り消しを求めて提訴し、1審の名古屋地裁で敗訴したが、40代男性は昨年7月、60代男性は同9月、「難民に該当する」と逆転勝訴し確定した。
     今回の不認定処分で法務省は確定判決の判断内容を「前提とする」としながら、迫害を受ける恐れがあるとされた11年当時に比べ「12年にはマオイスト人民解放軍が完全に解体され、警察が犯罪を積極的に取り締まっている」などと指摘。「本国の治安状況は大きく改善されている」として、2人を難民と認めなかった。
     名古屋難民弁護団事務局長の川口直也弁護士は「法務省は15年に(別の)ネパール人を難民認定し、一定の危険性が続いていることを認めている。難民認定の枠を広げた判決に従うべきだ」と話す。
     名古屋大学大学院の稲葉一将教授(行政法)は、高裁で「11年より後の治安状況の改善」が審理されていなかったと指摘。「訴訟で審理されなかった理由でもう一度認定を拒否することは信義則に反する。(在留外国人の生活に直結する)難民認定には迅速さが求められ、争いを1回で解決するよう行政も協力するべきだ」と述べた。
     それぞれの代理人の弁護士によると、法務省は難民認定しない代わりに、就労制限のない1年間の在留特別許可を認めた。しかし、国の定住支援プログラムを受けられず海外渡航に制約があるなど、難民認定と比べて地位は不安定になる。2人は今回の処分に不満だが、異議申し立てはしない考えという。
     全国難民弁護団連絡会議(東京都)によると、勝訴が確定した難民申請者に対する不認定処分は過去に計3人に出ており、今回で4、5人目に当たる。【吉富裕倫】

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