2017年6月1日木曜日

広島の過疎の町が外国人との共生を選んだ理由

Source:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170523-00010005-wedge-soci

Wedge 5/23(火)、ヤフーニュースより
 広島県の山間部にある安芸高田市では、外国人を「いつか帰る人」ではなく、「共に暮らしていく人」として受け入れる取り組みをはじめている。人口減少が続くなかで、外国人を受け入れていかないと、町自体が消滅してしまうという危機感からだ。2004年に合併した当初3.4万人いた人口は、2.9万人まで減少している。

 この町には留学生はいないが、外国人技能実習生、日系人など合わせて576人ほどの外国人が暮らす。彼らの生活をサポートしたり、地元で行われるイベントや、祭りへの参加を促したりという取り組みを2010年から続けている。実際に町の祭りを訪ねると、技能実習生たちが出店を出すなど、周囲にとけ込んでいる様子だった。

 安芸高田市の浜田一義市長は「言葉は通じなくても、『(外国人に対して)あなた方を大切する』という気持ちを持つことが大事」と話す。以前、町のプログラムで海外ホームステイをした中学生に「言葉で苦労しなかった?」と尋ねたところ、「意思を持っていれば、言葉が通じなくても相手に伝わります」と言われて、感心したという。「外国人ウェルカム」という姿勢を町の人々が共有することによって、外国人も周囲に馴染みやすくなる。
 技能実習生の場合、3年で帰らなければならないが、それでも「安芸高田でいい思い出を作って帰ってもらいたい」と、ファン作りをしている。

 これは近い将来、定住外国人を受け入れるべく国も制度を変えざるを得ないとみているからだ。浜田市長は「我々は先取りしているだけです。じきに他の町もこの問題と向き合わなければならないようになります」と話す。
急増する留学生アルバイト
 人口減少に長らく直面してきた地方に追いつく形で、都会でも人手不足が目立つようになってきた。

 東京で、中国、台湾人など外国人材の派遣業を営む会社社長は「インバウンド対応として語学ができる人材が欲しいということではなく、『とにかく人手が欲しい』というニーズが多い」という。

 いま、日本で起きているのは、空前の人手不足だ。有効求人倍率は1.45とバブル期の水準に戻った。少子高齢化が状態化するなかで、日本人だけでは、回らなくなった現場が増えている。

 ただ、それはこれまで都会で暮らす人々の目につかなかっただけで、製造業、農業といった現場では、20年以上前にスタートした技能実習生制度を活用して、人材確保をしてきた。それがコンビニ、居酒屋、外食チェーンなど、都会人の目につく場所でも、外国人労働者が増えてきた。

 この背景にあるのが留学生の急増である。留学生は週28時間までであれば、就労が許可されている。技能実習生の場合、働くことのできる業種が限られるため、レジ打ち等の仕事はできないが、留学生の場合、基本的にそのような制約がない。

 ある日本語学校の経営者によれば、2011年の震災によって中国、韓国人の語学留学生が減ったことで新しい国からの留学生のリクルートがはじまり、ベトナムやネパールからの留学生が増えたという。実際、留学生数の統計によれば、中国、ベトナム、ネパールの順になっている。

 ただ、技能実習生、留学生たちが日本の人手不足の現場を補ってくれても、まだ足りないというのが、今の実態だ。というのも『厚生労働白書』で生産年齢人口(15歳~64歳)をみると、ピークだった1995年には8716万人だったが、2015年は7708万人と1000万人も減っているのである。

広島の過疎の町が外国人との共生を選んだ理由

Wedge 5/23(火) 12:20配信
 広島県の山間部にある安芸高田市では、外国人を「いつか帰る人」ではなく、「共に暮らしていく人」として受け入れる取り組みをはじめている。人口減少が続くなかで、外国人を受け入れていかないと、町自体が消滅してしまうという危機感からだ。2004年に合併した当初3.4万人いた人口は、2.9万人まで減少している。

 この町には留学生はいないが、外国人技能実習生、日系人など合わせて576人ほどの外国人が暮らす。彼らの生活をサポートしたり、地元で行われるイベントや、祭りへの参加を促したりという取り組みを2010年から続けている。実際に町の祭りを訪ねると、技能実習生たちが出店を出すなど、周囲にとけ込んでいる様子だった。

 安芸高田市の浜田一義市長は「言葉は通じなくても、『(外国人に対して)あなた方を大切する』という気持ちを持つことが大事」と話す。以前、町のプログラムで海外ホームステイをした中学生に「言葉で苦労しなかった?」と尋ねたところ、「意思を持っていれば、言葉が通じなくても相手に伝わります」と言われて、感心したという。「外国人ウェルカム」という姿勢を町の人々が共有することによって、外国人も周囲に馴染みやすくなる。
 技能実習生の場合、3年で帰らなければならないが、それでも「安芸高田でいい思い出を作って帰ってもらいたい」と、ファン作りをしている。

 これは近い将来、定住外国人を受け入れるべく国も制度を変えざるを得ないとみているからだ。浜田市長は「我々は先取りしているだけです。じきに他の町もこの問題と向き合わなければならないようになります」と話す。
急増する留学生アルバイト
 人口減少に長らく直面してきた地方に追いつく形で、都会でも人手不足が目立つようになってきた。

 東京で、中国、台湾人など外国人材の派遣業を営む会社社長は「インバウンド対応として語学ができる人材が欲しいということではなく、『とにかく人手が欲しい』というニーズが多い」という。

 いま、日本で起きているのは、空前の人手不足だ。有効求人倍率は1.45とバブル期の水準に戻った。少子高齢化が状態化するなかで、日本人だけでは、回らなくなった現場が増えている。

 ただ、それはこれまで都会で暮らす人々の目につかなかっただけで、製造業、農業といった現場では、20年以上前にスタートした技能実習生制度を活用して、人材確保をしてきた。それがコンビニ、居酒屋、外食チェーンなど、都会人の目につく場所でも、外国人労働者が増えてきた。

 この背景にあるのが留学生の急増である。留学生は週28時間までであれば、就労が許可されている。技能実習生の場合、働くことのできる業種が限られるため、レジ打ち等の仕事はできないが、留学生の場合、基本的にそのような制約がない。

 ある日本語学校の経営者によれば、2011年の震災によって中国、韓国人の語学留学生が減ったことで新しい国からの留学生のリクルートがはじまり、ベトナムやネパールからの留学生が増えたという。実際、留学生数の統計によれば、中国、ベトナム、ネパールの順になっている。

 ただ、技能実習生、留学生たちが日本の人手不足の現場を補ってくれても、まだ足りないというのが、今の実態だ。というのも『厚生労働白書』で生産年齢人口(15歳~64歳)をみると、ピークだった1995年には8716万人だったが、2015年は7708万人と1000万人も減っているのである。
 外国人労働者も、2011年に70万人弱だったところから、2016年には約108万人となり、初めて100万人を突破した。しかし、労働人口の減少に比べると、外国人労働者の助けを借りてもまだまだ足りない状況にある。

 しかし、「技能実習生」や「留学生」は本来、人手不足の穴埋めをするために来日しているわけではない。技能実習生は「技能を習得して母国で活かす」ことであり、留学生は「日本に来て学問を修める」ことが本来の目的だ。それなのになぜ、このようなことが起きているのか?
外国人労働者という都合の良い存在
 それは日本政府が「単純労働」を目的とした来日を認めていないからだ。国民も、身近に外国人が増えているということに気づきながらも、「いつかは帰る人たち」「他者」として、無関係を装ってきた。現在の生活を維持するために、外国人労働者を「都合の良い存在」としてあつかってきたともいえる。

 しかし、このような状況はいつまでも続けられない。外国人労働者を確保することが難しくなってきているからだ。例えば、技能実習生の受け入れ数は長らく中国人がトップだったが、2016年、はじめてベトナム人がトップになった。現場からは「中国国内の経済が発展したため、わざわざ日本に来なくても、国内で良い仕事が見つかるようになってきており、中国人の良い人材を獲得することが難しくなってきた」という声が増えている。

 ベトナムの人たちも、いつまでも日本を魅力的な国としてとらえてくれるとは限らない。ベトナム経済が発展すれば、現地に魅力的な仕事が増え、給与水準も上がっていくだろう。

 「日が沈む国(日本)」と、「日が昇る国(東南アジア)」の違いを認識しておかなければならない。シンガポールやバンコクはもちろん、クアラルンプールやジャカルタ、ヤンゴンを訪れると、その活気、熱気にいつも圧倒される。街行く人々が「もっと豊かになりたい」とギラギラしている。まったりしている日本とは大違いだ。将来的には日本人のほうが、アジアの国々に出稼ぎに出なければならなくなるのでは? とさえ思えてくる。

 そんな思いを裏付けてくれるのが、堀江貴文氏の『君はどこにでも行ける』(徳間書店)で、「日本はいまどれくらい「安く」なってしまったのか」と、アジアにおける日本の序列変化について記している。
今こそ問題に向き合うべきとき
 技能実習生については「3年で帰ってもらうのはもったいない」という、企業からの声も少なくない。せっかく戦力となってくれたのに3年で帰ってしまえば、またゼロから育てなければならない。一方で製造業などでは、「日本の若い子はなかなか興味をもってくれない」「3年どころか、3カ月ももたない」という声を聞いた。「3年いてくれるだけでもありがたい」ということだ。

 何年も前から人手不足という問題に直面していたにもかかわらず、技能実習生や留学生といった「建前」で、人手の補充という「本音」を隠してきた。いまだに外国人労働者の問題について、新たな仕組みを考えていこうといった機運が盛り上がっているとは言えず、実習期間を3年から5年にするなどという弥縫策が目立つ。そうしている間に、低賃金で過酷な労働を強いられる一部の外国人が日本を嫌いになって帰っていくということも続いている。

 今こそ、自分たちの問題として外国人労働者について考えるべき時が来ている。
友森敏雄 (「WEDGE Infinity」編集長・月刊「Wedge」副編集長)

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