Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/165c068887871abf939574e7eba2cc3857224a43
介護分野で外国人材が増えている。唯一の国家資格「介護福祉士」を養成する施設では日本人の入学者が減り続け、2025年に初めて留学生が逆転した。もはや超高齢社会で欠かせない存在だが、言葉や文化の壁があり、制度の変化も激しい。共に働く仲間としてどう受け入れるか、養成や就労の現場では模索が続いている。 ■留学生の宿題ノート。専門用語とその意味をしっかり理解するため、難しい漢字も繰り返し書いて覚える【写真】 福岡県小郡市の平岡介護福祉専門学校。毎年1月にある介護福祉士の国家試験に向け、少人数に分けた授業が行われていた。
医療や障害の分野を教える校長の真子(まなこ)菜穂子さん(66)は念を押した。「言葉を暗記するだけでなく意味まで分からないと、本当に理解したとは言えません」。時には英語やネパール語の単語を使って説明を補う。 学生は2年間在学し、2年生の1月に試験を受ける。本年度の2年生は36人のうち日本人10人に対し、ネパール25人、フィリピン1人。初めて留学生数が日本人を上回った。
手作りの小テストを繰り返し、宿題のノートも毎日提出させる。自宅で復習できるように動画も増やした。校舎内の各所には、暗記事項を書いた紙をふりがな付きで張っている。例えば階段には「蹴上(けあ)げ 18cm以下(いか)」「踏面(ふみづら) 26cm以上(いじょう)」。歩くたびに目に入るよう工夫した。学生と共に国家試験に全力で臨む。 ネパール出身のタマング・サグンさん(28)は大学で社会学を学んでいた。22年4月に来日し、日本語学校を経て同校へ。特別養護老人ホームでアルバイトをしながら勉学に励む。日本で働いた後、将来は母国で介護の仕事をしたい。
「人のお世話をするのが好き。ケアキーパー(ケアをする人)になりたいと思っていた。同居するおじいさんの介護もしたい。でもネパールでは介護の勉強をできる所がない。日本語もうまくなりたい。知りたいことがいっぱいある」 × × 介護福祉士は専門的な知識と技術を持ち、身体介助だけでなく、他の専門職と連携して利用者の生活全体を支える中核的な役割を担う。
ただ専門学校や大学など、養成施設に入学する日本人は減っている。日本介護福祉士養成施設協会(介養協)によると、20年前に約2万人いた日本人の入学者は25年度、約3300人になった。若年人口の減少や、給与が全産業平均より低い水準にあるなど、さまざまな背景がある。 各施設は減少分を埋めようと留学生の確保に力を入れてきた。25年度は4074人が入学し、初めて日本人を逆転した。しかし不足分を補うには至らず、かつて400カ所を超えていた養成施設も272カ所に。しかも都市部に集中している。
介養協副会長で福岡介護福祉専門学校(福岡市)校長の小笠原靖治さん(54)は「地方ではゼロの県も出てくるのでは。地域に人材を輩出する役割を果たせなくなる」と懸念する。 × × 介護福祉士になれば家族を帯同でき、在留期間の更新も回数制限がない。
留学生たちは「卒業後まずは5年間働く」と口をそろえる。最大168万円の公的な奨学金制度があり、卒業後に介護福祉士として5年間働けば返還が免除されるからだ。 「5年間」にはもう一つ理由がある。現在は国家試験に合格しなくても、5年間は介護福祉士として登録できる「特例措置」がある。その5年間に連続して実務に当たれば、その後も介護福祉士として働ける。
特例措置は、介護体制を維持するための苦肉の策と言える。国家試験の24年度の新卒者合格率は、日本人95・3%に対し留学生は47・9%。留学生にとって専門用語や文章題の壁は高く、措置がなければ入国希望者は激減するとみられている。 この措置の期限が26年度末に迫り、延長の是非が議論になっている。真子さんは特例措置がなくなれば「学校を閉じることも考えないといけないのでは」と苦悩する。ただ学生にはしっかり学んで合格し、介護福祉士として自信を持って働いてほしい。
「彼らは大家族で育ったからか、弱い人を支えるのは当たり前と思っている。福祉の基本は困っている人に手を差し伸べること。介護の仕事に国籍は関係ない」。教え子たちの幸せな未来を見つめている。 (酒匂純子)
留学生23カ国・地域から 世界規模で人材奪い合い
日本介護福祉士養成施設協会によると、2025年度に入学した留学生4074人の出身は23カ国・地域に上る。最多はネパールで1899人、ミャンマー747人、ベトナム490人、中国239人と続く。 ネパールやミャンマーは増えているが、ベトナムは減少傾向にある。留学生数は出身国の経済発展や円安などの影響を受けやすい。韓国やタイ、ドイツ、オーストラリアなど高齢化によって介護人材を求める国や地域は他にもあり、世界規模で人材を奪い合う構図になっている。
こうした養成施設などを経て介護福祉士になれば在留資格「介護」(24年12月末現在で1万2227人)を得られる。 このほか、介護職に就ける在留資格には、母国への技能移転が目的の「技能実習」(同2万65人)▽19年に始まった「特定技能」の1号(25年6月末現在で5万4916人)▽インドネシア、フィリピン、ベトナム各国と結ぶ経済連携協定(EPA)の「特定活動」(25年10月1日現在で2670人)-がある。4種類で約9万人に上る。 人手不足の解消を狙った特定技能は転職も可能で、人数が急増している。
西日本新聞

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