Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/9a6a36ffa199658e1bab56f9c549869290d4dd99
移民問題がニュースを賑わせているが、日本の移民の実態を理解している人はほとんどいない。今こそ知っておきたい移民の実態とは
──日本に来たい人が減っているという言説があるが、是川さんはそうではないと指摘している。経済格差が縮まって来られる人が増えた以外に、日本の魅力や要因はあるのか。 【動画】日本に訪れる新たな移民時代...その内情とは? 安心・安全であることに加えて、基本は経済的に「ペイする」ことだ。 社会保障がいい、医療がいいといっても、それだけで人は動かない。治安がいい国でも仕事がなければ行かない。結局、ベースは経済で、来た結果として「日本は社会保障もいい」と評価される。 私が「選ばれない国・日本」という言説がおかしいと言う一番の理由は、実際に増えているからだ。では、なぜ増えているのか。 移住は単に経済格差の大きさで決まるのではなく、意欲と潜在能力で決まる。今、日本への送り出しが増えている国は、1人当たりGDPが1000〜4000ドルの層で、むしろ高所得国向けの移住圧力が高まる段階にある。 さらにアジア全体を見ると、先進国に行きたくても、行ける国がほとんどない。欧米は短期滞在ならともかく、就労は非常に難しい。日本人でも、いきなりアメリカでH1Bビザ(高度な外国人技術者向けの就労ビザ)を取得して就職するのは相当ハードルが高い。 その結果、コネのないアジアのミドルクラスが現実的に選べる先進国は、日本、韓国、台湾に限られる。その中で日本は、職種の幅が広く、滞在期間も長い。中長期的に見て、最もペイする国だ。 ──日本に行きたい人が減ったというイメージは、韓国の人気が高まったことから来ている可能性はあるか。 それはあると思う。ただ、当の韓国から日本に来る人は増えている。 韓国の中央日報を見ると、外国人労働者をめぐって、日本と全く同じことを言っている。「韓国はもはや選ばれる国ではない」と。 雇用許可制での失踪率の高さや労働条件の問題から、他国に人を取られている。ベトナム人労働者が日本に流れているという記事も、主語を日本と韓国で入れ替えれば、そのまま成立する内容だ。同じ構図が、日韓で同時に起きている。
──今、日本にいる人たちを国別に見ていきたい。中国は永住者以外では留学生が14万人と非常に多い。 彼らは完全にミドルクラスだ。 中国人は90年代から増え続けているが、その中身は時代によって大きく変わってきた。かつては留学生や研修生、今の技能実習生の前身のような形で、1、2年働いて帰る人が多かった。 いわゆる「偽留学生」が多かった時代もあったが、経済成長とともに、真面目に勉強して進学する人が増え、2000年頃には日本で就職する人も増えてきた。 10年代以降は、留学生はもはや苦学生ではない。国外脱出というより、ライフスタイルとして海外に関心を持つ中産階級の子供たちが来ている。残る人もいれば、十分経験したから帰るという人もいて、切羽詰まった感じはない。 中国は所得水準が1万ドルを超えており、普通なら移動は減るはずだが、日本に来る勢いは落ちていない。所得が上がっても、一定数は外に出たい人がいるということだ。
──ベトナムは総数の3分の1、約20万人を技能実習生が占めている。 留学生も4万6000人と多いし、最近は「技術・人文知識・国際業務」で来た人が11万7000人いる。 ベトナムの場合、ホワイトカラーというよりエンジニアが多い印象だ。図面が読めて、現場を監督するような人たちで、技能実習生の管理をしているケースもある。 ──フィリピンも永住者と定住者以外では技能実習生が多い。 フィリピン政府が日本への送り出しに積極的になり、最近少し増えた。技能実習だけの時代はあまり関心がなかったが、特定技能ができて、「日本に送り出せる」と気付いた国がアジアで増えた。 各国にとって、良質な送り出し先を確保することは死活的だ。失業対策と外貨獲得のため、アジア諸国には必ず送り出しを担当する省庁、いわば「出稼ぎ省」がある。 産油国は長く主要な送り出し先だったが、事故が多く、人が亡くなる。そうなると政府への信頼が揺らぐため、各国はより安全で安定した送り出し先を探している。特定技能を日本がつくったことで、一斉に注目が集まった。 ──ネパールが最近非常に増えている印象があるが、留学生なのか。 最初は留学が増えた。もともと留学と、技能ビザの調理師枠、つまりコックが多かった。インドカレー店にはネパール人が多いが、特定技能制度ができてからは、特定技能で来る人が急増している。 ただし最近、経営・管理ビザの在留資格の要件が大きく引き上げられた。既に資格を持っている人に新基準が適用されるのは28年だが、日本人もしくは永住者など身分系のビザを保有する常勤職員を1人以上と、日本語能力、資本金3000万円以上が求められる。3000万円の資本金のカレー店は現実的ではない。 背景には、大阪の特区民泊で中国人経営者が多いことが一部の国会議員から問題視されたことがある。在留資格の乱用というイメージから一律に要件を引き上げたが、中国人にとって3000万円は大きな障害ではない。その結果、経営管理の在留資格は中国人中心となり、ネパール人があおりを受けることになる。 インドカレー店に限らず、外国人経営のエスニック料理店は、3年以内に相当数が消える可能性がある。永住資格を取れなければ、在留資格を失う人も出てくるだろう。 ──インドネシアも急に増えたが、何か理由があるのか。 これも技能実習だ。10年代に入ってベトナムの技能実習が急増したが、コンプライアンス上の問題が多く、受け入れ側がリスクだと考えるようになった。賄賂の問題が目立ち、日本側が現地に送り出し機関をつくっても、信頼していたパートナーが裏でブローカーフィーを取るケースが多かった。コロナ前には、かなり問題視されていた。 コロナで一度状況がリセットされた後、インドネシアは労働者側の手数料が安いと認識され、水際措置が緩和された頃から日本の監理団体が一斉にインドネシアに向かった。そこで受け入れが進み、急増している。 ──ミャンマーは技能実習や特定技能のほか、留学の多さが意外だった。 クーデター以降、国外脱出したい人が非常に多く、留学、技能実習、特定技能と、あらゆるルートで来ている。留学は、経済的に余裕があり、おそらく大学を出ている人たちだ。ミャンマーは一般の高校卒業だけでは日本の大学受験資格が得られないので、大学まで終えてから来ていると考えられる。 特定技能は特に顕著だ。現地で試験を行うが、介護分野などでは合格率がほぼ100%になる。能力が高いということもあるが、ほぼ唯一の国外脱出ルートなので、死に物狂いで勉強している。その結果、合格率が突出して高い。 ──日本が受け入れる外国人について国別の上限は設けられているのか。 全体としての国別上限はない。ただし、特定技能には上限がある。2020年までの受け入れ見込み数は82万人だが、まだ達していない。仮に近づけば在留資格が出なくなる可能性はあるが、実際には上限を引き上げると思う。 ただ、来るのは大変だ。日本の受け入れのハードルは高く、90年代から基本的に変わっていない。ハードルが下がったのではなく、越えられる人が増えているだけだ。 日本は(移民に対して)閉鎖的だという見方は、ハードルの高さを指している。一方で、なし崩しだという見方は、越えられる人が増えていることを指している。 経済的に見れば、日本に移民が増えるのは必然だ。資本や財の移動が自由化されるなかで、人の移動も同じように起きる。それなのに、なぜきちんと政策としてコントロールしないのか、マネジメントしないのか。その疑問は自然に出てくる。 ──アメリカではトランプ政権が、不法移民の強制送還だけでなく新規の移民の資格要件も厳しくしている。 アメリカがハイスキル人材への門戸を閉ざすなかで、ヨーロッパも余裕がなく、排外主義が強まっている。ウクライナ避難民や中東・アフリカからの難民が既に大量に来ており、ハイスキル人材をどう呼び込むかという議論をする余地がない。 アメリカでH1Bビザの申請料が10万ドル(約1500万円)になると聞いて、「これはチャンスだ」と思った。アメリカに拠点があると人を雇えない時代になるかもしれない。シリコンバレーのIT企業が日本に法人を作り日本でインド人や中国人のエンジニアを雇うなど、生産拠点が日本に移る可能性もある。日本にとっては間違いなくチャンスだ。 ※この記事は後編です。前編「日本はすでに世界第4位の移民受け入れ国...実は開放的な『移民国家ニッポン』の知られざる実態」、中編「コンビニで働く外国人は『超優秀』…他国と比べて優秀な移民が日本に集まりやすいワケ」は関連記事からご覧ください。
著者:是川 夕(これかわ・ゆう) 1978年青森県生まれ。国立社会保障・人口問題研究所国際関係部部長。東京大学文学部卒業。カリフォルニア大学アーバイン校修士課程修了。東京大学大学院人文社会系研究科修了。博士(社会学)。内閣府勤務を経て現職。OECD移民政策会合メンバー。
小暮聡子、深田莉映(ともに本誌記者)




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