Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/a7687f97c3f73ad0ee80cd2a42123a47997799fd
最近の日本は地震や津波、風水害など多くの自然災害に見舞われるようになったわね。東日本大震災からまもなく10年になるけど、災害への備えはどこまで進んだのかしら――。自然災害への備えについて、久保田啓介編集委員が村田里依さんと金村由美子さんに説明した。
村田さん「自然災害は実際に増えているのですか」
世界全体で増加傾向にあります。東日本大震災以降では2013年にフィリピンを強い台風が襲い、死者6000人以上を出しました。15年のネパール地震でも約9000人が犠牲になりました。損害保険を扱うドイツ・ミュンヘン再保険によれば、とくに水害や台風が増え、地球温暖化との関連が疑われています。 日本でも水害が毎年のように続いているほか地震活動も依然活発です。16年に熊本地震、18年に大阪府北部と北海道胆振東部で地震があり、最近も2月13日の福島県沖の地震で交通網の寸断や建物の被害が相次ぎました。今後も南海トラフや首都直下での大地震のほか、北海道―東北の太平洋沖にある千島・日本海溝でもマグニチュード9級の巨大地震が懸念されています。
金村さん「東日本大震災後、日本の防災・減災の取り組みは変わりましたか」
変化のひとつが、自然災害のリスクが高い場所を示した「ハザードマップ」の公表が進んだことです。 国土交通省によれば洪水ハザードマップを公表しているのは09年度には作成義務のある自治体の71%でしたが、19年度は98%に達しました。土砂災害も56%から84%に、津波も53%から91%へと増えています。 国の地震対策にも大きな転換がありました。1970年代に地震予知への期待が膨らみ、駿河湾を震源とする東海地震に備えて気象庁が前兆を観測し、首相が「警戒宣言」を出す対策が決められました。しかしその裏をかくように95年の阪神大震災が起き、予知への期待は打ち砕かれました。 2017年、政府は遅まきながら予知は困難と公式に認め、警戒宣言を出す方式をとりやめました。代わりに建物の耐震補強などの事前の備えや発生後の迅速な避難により被害を減らすことを対策の柱に掲げています。
村田さん「残った課題も多いですね」
相次ぐ災害で都市や街のもろさが浮かび上がっています。高度経済成長期以降に開発が急ピッチで進み、過去に水害や土砂崩れなどが起きた場所にも住宅が造成されました。最近の災害はこうした場所を狙い撃ちするかのように起きています。14年の広島土砂災害、18年の西日本豪雨で浸水した岡山県倉敷市の真備町地区などが一例です。 東京に政治・経済機能が一極集中していることもリスクで、是正は進んでいません。地方では多くの自治体が人口減少をにらんでコンパクトなまちづくりを進めていますが、その区域内に災害リスクが高い場所があることが問題になっています。長い目では災害リスクが高い地域から低い地域に人口移動を促すべきで、移転する人に財政的な支援も必要でしょう。
金村さん「今後はどんな備えが重要になりますか」
耐震補強や家具の固定、家族の安否確認などを怠らないことが、まずは肝要です。 新型コロナウイルス流行が続くなかで災害が起きると、避難所での密集を避ける分散避難が必要です。近年、多くの自治体が推奨するのは、災害時にとるべき行動を時系列で示した「タイムライン」づくり。家族ひとりひとりがどう行動するかを事前に決め、情報共有するのです。水害では広域避難が必要になる場合があり、親戚など避難先を決めておくことも大事です。 IT(情報技術)を防災に活用する動きも官民で急速に進んでいます。上手に活用したいものです。
■ちょっとウンチク
余震の続発、なお警戒
2月13日に福島県沖で起きた最大震度6強の地震は東日本大震災の余震とみられ、政府の地震調査委員会は「余震は今後10年程度は続く」との見解を示した。大震災の影響で東北の太平洋沖では地殻に加わる力やひずみが変化し、研究者は「余震以外の大地震にも注意が必要」と口をそろえる。 ひとつが三陸の沖合で起きる地震だ。1933年の昭和三陸地震はその37年前に起きた明治三陸地震が誘発したとの説がある。東日本大震災の震源に隣り合う房総沖や十勝沖での地震を心配する研究者もいる。被災地への支援を続けつつ、次の地震への警戒も怠れない。(編集委員 久保田啓介) ■今回のニッキィ金村 由美子さん 医療機器メーカーに勤務。コロナ禍で在宅勤務が続いている中、運動不足解消のために定期的にジョギングをしている。「自分の体のために時間を有効に使えることが実感できてうれしい」村田 里依さん ケーブルテレビ局勤務。夫と子供2人の4人家族。趣味は海釣り。7年前に乳がんにかかり、治療と就労の両立支援を訴え講演も行う。今春に脱毛ケア用の帽子ブランドを立ち上げた。 [日本経済新聞夕刊 2021年3月1日付]
0 件のコメント:
コメントを投稿