2019年5月29日水曜日

苦戦していた「沖縄ファミマ」が稼ぎまくるようになった経緯が面白い

Source:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190517-00000006-zdn_mkt-bus_all
5/17(金)、ヤフーニュースより
 ファミリーマートの全店平均日商は約53万円だが、沖縄エリアに限定すると約65万円に跳ね上がる(2019年2月期)。背景にあるのは、地元に密着したユニークな施策の数々だ。沖縄県限定のテレビCMや商品開発などが地元住民に支持されている。

 ファミマの澤田貴司社長は4月10日の決算説明会で、好調な“沖縄モデル”に触れたうえで「本部が一律にいろいろなことを展開する時代はとっくに終わっている。コアな部分は本部がしっかりやるが、地域に密着して、権限をどんどん委譲することを検証しないといけない」と発言した。また、ファミマは、19年3月から「営業部門」「店舗開発部門」「商品開発・販売促進部門」など、通常本社が持つ機能を権限委譲するリージョン制を東北地方と九州地方で導入している。沖縄モデルを見習って、地域に密着した売り場づくりや商品開発を推進するのが目的だ。

 セブン-イレブンは沖縄進出を表明している。今後、沖縄県を舞台にしたコンビニ間の競争が激しさを増すのは確実な情勢だ。迎え撃つ沖縄のファミマはどのような独自路線を歩んでいるのだろうか。担当者に話を聞いた。
1987年に誕生した沖縄ファミマ
 沖縄でコンビニ事業を展開しているのは「株式会社沖縄ファミリーマート」(那覇市、以下「沖縄ファミマ」)。同社は、ファミリーマートと沖縄県で百貨店やエンターテインメント施設などを運営するリウボウグループの共同出資会社だ。出資比率はリウボウが51%、ファミマが49%となっており、設立されたのは1987年である。

 沖縄ファミマは、沖縄県内におけるエリアフランチャイズ本部としてチェーン展開している。沖縄県の店舗オーナーは、沖縄ファミマとフランチャイズ契約を締結している。フランチャイズチェーンが全国展開するなかで、各地域の有力企業と組んでこういったエリアフランチャイズ制を選択するケースは他にもある。地元の“盟主”が前面に出たほうがさまざまな点で有利だからだ。

 沖縄県におけるファミマの店舗数は327(19年5月末現在)。本島に285店あり、宮古島や石垣島などの離島でも営業している。
ざるそばのつゆも沖縄仕様
 沖縄ファミマではさまざまな沖縄限定商品を開発している。特に注目すべきは弁当やパンといった中食分野だ。約7割が独自開発商品となっている。

 分かりやすい例でいうと、ゴーヤーチャンプルー弁当、タコライス弁当、ランチョンミートや卵を挟んだおむすびなど、地元で親しまれている商品をコンビニ風にアレンジしている。

 店舗の食品売り場を見ると、本土のファミマとほぼ同じパッケージのざるそばや冷やし中華が並んでいるが、実はつゆを沖縄仕様に変えている。本土のつゆメーカーと一緒になって沖縄県民に受け入れられる味を開発している。ちなみに、これらの麺は本土と同じものを使用しており、スケールメリットを生かせる分野とそうでないところでメリハリをつけている。

 大手コンビニでは全国をいくつかのエリアに分けて、おでんのつゆの味を微妙に変えているのは有名な話だが、沖縄ファミマでは“現地化”させた商品数の割合が多いのが特徴だ。
焼きたてのパンやピザも提供
 焼きたてのパンやソフトクリームを提供しているのも沖縄独自の取り組みだ。現在、焼きたてパンを扱っているのは21店舗だが、売り上げ全体に占める割合が7%になる店舗もあるという。担当者は「焼きたてパンを扱っている店では、袋に入れたパンの売り上げは落ちますが、パンカテゴリー全体の売り上げはアップします。また、集客力を高める効果があります」と説明する。焼きたてのピザは57店舗で提供しており、注文があってからオーブンに入れて焼き上げる。

 ソフトクリームは168店舗で提供している。カウンターの後ろ側にソフトクリーム製造機があり、店員がコーンを設置してボタンを押すだけで完成する。これはメーカーと共同で開発したものだ。

 沖縄エリアの特徴として、ファストフードの売り上げ比率が本土より高いという点が挙げられる。担当者は「沖縄は外食が盛んな地域なので、即食性が支持されやすい傾向があります」と説明する。沖縄の平均日商は全国平均より高いが、その主因は来店客数の多さだ。気候が温暖なこともあり、ふらっと外出して食事をとるスタイルが広がっており、そのニーズに応えているのだ。
テレビCMも独自に制作
 沖縄ファミマが独自に制作しているテレビCMも内容が非常にユニークなので、いくつか紹介しよう。

 例えば、沖縄のイントネーションで話す店員(中年女性)が、弁当を購入したお客に対して何度も「あたためたほうがおいしいよ」と勧めるCMがある。これは、沖縄では珍しくない「人がよくて、おせっかいなおばさん」を表現したもので、女性をターゲットにしたアルバイト募集のCMだ。

 今やコンビニ運営に欠かせなくなった外国人従業員を募集するためのCMもある。沖縄にはネパール人が多く住んでいることを踏まえ、CMではネパール人と日本人店長の掛け合いが面白おかしく描写される。ネパール語が飛び交うため、日本語しか知らない人が見ると中身を100%理解できないほどだ。

 独自のイメージキャラクターも誕生している。ファミマの看板商品であるファミチキのイメージキャラクターは「ファミチキ先輩」だが、沖縄で人気の高い骨付きのフライドチキンをイメージした「フラチキ先輩」が存在する。フラチキのCMには、フラチキ先輩に加え、「おじい」と「おばあ」(いずれも、沖縄独自の高齢者の呼称)が登場する。CMソングも沖縄オリジナルだ。
沖縄独自の“コーヒーマシンシステム”
 大手コンビニチェーンですっかり定着したコーヒーマシンでも、沖縄独自の方法が採用されている。お金を支払ってからカップを受け取り、マシンにカップをセットして、ボタンを押すというのが一般的な流れだ。しかし、沖縄ファミマでは、先にマシンのボタンを押して飲み物をカップに入れて、レジに持って行ってお金を支払うスタイルになっている。コーヒーマシンの運用ルールを決めるに当たり、「(後払い方式にすると)お金を払わずに店の外に出る人がいるのではないか?」と反対する声があった。しかし、店舗で実験した結果、お客の利便性が高いのは後払い方式だという結論に落ち着いた。沖縄ファミマでは、この方式をお客に周知するため、独自のテレビCMを作成している。
戦略転換のきっかけはローソンの猛攻
 このように地元密着の施策を次々と打ち出し、高い平均日商を実現するに至っている沖縄ファミマだが、進出当初は苦戦していたという。かつては、店舗の平均日商が最も低い地域だった。

 1987年当時、コンビニという業態の認知度が低かったこともあるが、店舗開発力や商品開発力が低かったことも原因だった。進出当初は、東京の本部から渡されたレシピ通りの弁当を製造し、販売していた。店舗の立地戦略も必ずしも洗練されたものではなかった。

 苦戦はしていたもの、コンビニの認知度が高まってきたため、出店すればするだけ売り上げは伸びていった。しかし、ローソンが1997年に進出してきたことで状況は一変する。担当者は「ローソンさんはわれわれの弱点を全部突いてきた」と振り返る。

 例えば、ローソンの店舗は十分な駐車スペースを確保していたため、自動車で来店したいお客に支持された。また、沖縄ファミマのトイレはバックヤードの奥にあり、お客が自由に使えないようになっていたが、ローソンは進出当初から利用しやすい場所に設置していた。現在では、お客がトイレを気軽に利用できるのは当たり前になっているが、当時では珍しいことだった。

 こうしたローソンの“猛攻”を受けた結果、「売り上げがかなり落ち、2001年くらいまでは苦労しました」と担当者は振り返る。
対抗策として打ち出した3つの方針
 ローソンへの対抗策として沖縄ファミマが打ち出したのが、地域密着の商品開発、出店基準の見直し、独自イベントの開催だ。

 タコライスやランチョンミートを使ったおむすびといったように、地元で当たり前に食べられているものをコンビニ風にアレンジして販売するようにした。同時に、レシピ開発や、食材の発掘といった商品開発力を強化していった。

 出店基準も見直した。拡大路線はいったん保留し、店舗のスクラップアンドビルドを5年ほどかけて進め、稼げる店舗を増やしていった。

 人気歌手のコンサートやイベントチケットの販売体制も変えていった。それまでは、東京公演のチケット販売が多かったが、沖縄県民からすると気軽に行けるものではなかった。そこで、沖縄にゆかりのある歌手やグループに声をかけ、地元で独自イベントを企画した。チケットは一般販売するのではなく、店舗で一定額以上の買い物をしたお客がレシートを専用ハガキに添付して応募する形式だった。また、地域イベントのチケットを積極的に扱うようにした。

 こういった施策が奏功し、沖縄ファミマは徐々に劣勢から立ち直っていった。また、地元で展開していた競合のコンビニチェーンを吸収して店舗数も増やしていった。現在、沖縄はローソンとファミマの2強体制になっている。
フラチキ引換券が大人気
 沖縄ファミマは国内男子プロバスケットボールリーグ「B.LEAGUE(Bリーグ)」の「琉球ゴールデンキングス」に協賛している。同チームとコラボしたファミカフェ用のカップを期間限定で提供したり、選手の写真が登場するラッピング店舗を展開したりしている。

 地元のスポーツチームへの協賛というのは珍しくはないが、驚くべきはビジネスへの好循環を生み出している点だ。沖縄ファミマでは、公式試合中にフラチキの引換券をカプセルの中に入れて、観客に配布している。その引換券を実際に店舗に持っていったお客の割合は8割超という。チラシなどで配布するクーポンの引換率は1%もあれば十分といわれているなかで、これは驚異的な数字だ。プロチームへの協賛による地元住民へのアピールと、店舗への送客を効果的に両立できている。
社員の9割以上が地元民
 沖縄ファミマで働く社員の9割以上が、沖縄県で生まれ、沖縄で育った“地元民”だ。この割合の高さはファミマの澤田社長も注目している。沖縄ファミマの社員は、お客と同じ目線でサービスを提供したり、商品開発に取り組んだりすることが可能だ。

 また、独特なテレビCMなどユニークな施策を次々と打ち出せる背景について、担当者は「トップと社員の距離が近いのが要因かもしれません。さまざまな施策をスピード感をもって、トライしやすい環境にあります」と説明する。

 沖縄ファミマの2019年度の重点方針は「強みをより強く」と「同じ土俵で戦わない」の2点だ。セブンの沖縄進出も念頭に置いている。敵と“ガチンコ”で戦うのではなく、独自の商品開発力を強化し、競合が扱っていない商品やサービスを提供することでお客の支持を得ようという戦略だ。

 セブン進出後に沖縄で展開される“コンビニ戦争”から目が離せない。
ITmedia ビジネスオンライン

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