2018年6月19日火曜日

世界一高所の緊急救命室、エベレスト登山者らの救助に奮闘

Source:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180612-00010007-afpbbnewsv-int
6/12(火) 、ヤフーニュースより
【6月12日 AFP】世界最高峰エベレスト(Mount Everest、標高8848メートル)のベースキャンプで活動する3人の医師たちは、山頂付近でシェルパ(ネパール人山岳ガイド)の頭に落石が当たったという一報が無線機から聞こえると、素早く行動に移った。シェルパの救出は、予測不可能なこの山との生死をかけた闘いになるだろうと肝に命じながら。

 彼らは、負傷したシェルパを救急ヘリコプターに乗せてベースキャンプのヘリポートまで運ぶと、夜間離陸用の照明が今にも消えそうなことに警戒しながら、そのまま機内でシェルパに応急措置を施す。ふもとのルクラ(Lukla)村にある病院にヘリで搬送するまでのさらに20~30分間、シェルパがどうにか持ちこたえることを祈りながら。

 エベレストの緊急治療所(ER)にこの2か月間、詰めている3人の医師の一人、スバシュ・ダワディ(Suvash Dawadi)さんは「患者は出血していたので、われわれはまず止血してから、ふもとに下ろしました」と語った。

 エベレスト唯一のこの緊急治療所では登山シーズンが到来するたびに医師たちが、高山の極寒や荒々しい気象と闘いながら、病気やけがをした登山家たちの命を救っている。

 標高5364メートルでテント式治療所を運営するのは、至難の業だ。夜間に薬剤が凍ってしまったり、強風でテントが飛ばされそうになったり、低温のために心臓モニターが作動しなくなったりすることもある。

 15年前にこの簡素な治療所が設置されて以来、過酷なエベレストの斜面でトラブルに遭い、この施設のおかげで一命を取りとめた外国人登山者は数えきれない。だがこのERには、さらに大きな目的がある。多額の収益を上げているエベレスト登山産業を支えるシェルパたちに、低料金で医療を提供することだ。

 整形外科医のスバルナ・アディカリ(Subarna Adhikari)さんは「エベレストにERが設置される前は、シェルパには本来あるべき保障がまったくありませんでした」と説明した。

■高リスク産業

 米国人医師によって設立され、現在はネパールに本部を置くヒマラヤ救助協会(Himalayan Rescue Association)によって運営されているこの治療所は、外国人登山者たちに応急処置を施すことを任務とし、その引き換えにシェルパたちに助成による治療を提供している。

 つまり診療所は、エベレスト登頂に大金を支払う外国人たちと、彼らに同行することでそのリスクの大半を背負うシェルパたちとの間の大きな不均衡をわずかながら是正することに寄与している。

 シェルパたちは、4月初めから5月末までのわずか2か月間の登山シーズンに、ネパールの平均年収の14倍にあたる最高1万ドル(約110万円)の報酬を手にする。だが、そのために多くのシェルパたちが、登山シーズンに仕事から外されることを恐れ、健康問題から目を背けている。「彼らにとって、仕事を失ったりシーズンの途中で離脱したりすることは、壊滅的なのです」とダワディさんは話す。

 いつもと変わらない診療所の朝が、突然慌ただしくなった。負傷したシェルパが救急搬送されてきたのだ。深さ60メートルのクレバスに落下したのだという。

 だが、出血も骨折もしていないことを医師たちが確認すると、痛みにさいなまれたシェルパのうめき声は、次第に安堵(あんど)へと変わっていった。数日間休養すれば、彼は仕事に戻れるだろう。

■意識の変化

 シェルパをはじめこの山で働くネパール人たちの意識は、変わりつつあると医師らは話す。健康に問題があれば早めに治療を受け、それ以上悪化してシーズン中の仕事を棒に振ることがないよう確認する人が増えているという。今シーズンにこの治療所で治療を受けた400人近い患者のうち60%以上は、シェルパをはじめエベレストで働く地元住民だ。

 人命救助を担っているにもかかわらず、治療所の経済状況は非常に厳しく、外国人患者に負担してもらう1人当たり100ドル(約1万円)の利用料と、医療機器という形で提供されることの多い寄付に依存している。

 エベレスト登頂を目指す登山家が支払う1万1000ドル(約120万円)という高額の入山料の一部を治療所に出資してほしいと、ネパール政府に訴えたものの耳を傾けてもらえてはいない。

■救助が及ばない

 緊急事態に対し、時には医師らの力が及ばないこともある。治療所の無線機に、ロシア人登山者が標高7250メートル地点に1人でいて、方向を見失って立ち往生しているという一報が入った。

 山頂を目指していた複数のチームが、ルステム・アミロフ(Rustem Amirov)さんのそばを通過しては無線で救助要請してきたが、自ら引き返して彼を救助しようとする人は一人もいなかった。

 医師らが、山にいる登山者たちに対しアミロフさんを助けるよう説得を試みると、誰かが水をあげ、別の誰かが高山病を和らげるステロイドを与えた。

「ここで待機しながら、いら立ちや無力さを感じます。いくつかのチームが一緒に行動を起こしてくれれば、救助は可能かもしれないのに」とオーストラリア人医師のブレントン・シスターマンス(Brenton Systermans)さんは話す。

 ようやく2人の登山者が、現場からわずか100メートルほどの所にあった最も近いテントまで、アミロフさんを引きずって行った。彼らは無線で医師らにそのことを伝えると、アミロフさんを残してそこを離れた。

「もし1時間以内に助けられていたら、生き延びられたでしょう」とアディカリ医師。だが孤独な登山者に対して助けは来ず、アミロフさんは5月17日に死亡した。

 映像は4月24日撮影。(c)AFPBB News

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