2016年4月25日月曜日

若者も政治に関心を=登山家・野口健さん【18歳選挙権インタビュー】

Source:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160420-00000074-jij-pol

時事通信 4月20日(水)
 選挙権年齢が「18歳以上」に引き下げられることについて、登山家の野口健さんにインタビューした。

【特集】18歳選挙権 私はこう思う~養老孟司さん、山崎直子さん、鈴木明子さん

 -18、19歳の頃はどう過ごしていたか。
 大学1年生の12月に南米最高峰のアコンカグアに、翌年は休学して北米最高峰のマッキンリー(現デナリ)に行った。10代は世界7大陸最高峰登頂をやるんだと宣言して、そういう挑戦が始まった頃だ。

 -政治に対する関心はあったか。
 小学校3年生から高校3年生まで海外にいた。海外にいると政治に興味を持ちやすい。
 (イラクのクウェート侵攻をきっかけに始まった)湾岸戦争の時は英国の学校に行っていて、父親は大使館員として(事実上イラクを支持していた)イエメンに赴任していた。父親が大使館に行っている時に家(公邸)に手りゅう弾が投げ込まれた。湾岸戦争でテロに遭った日本人の家というのは父親の家だった。
 自分が通っていたのは海外に住んでいる日本人の子どもが来る学校で、外国のどこかで何か起きると誰かしらの親がその場所に住んでいたりする。その分、国際的な政治情勢を身近に感じる機会が多かった。
 湾岸戦争の時も英国の報道では日本は金しか出さない、「それは正しい方法か」と疑問を持ったり、いろんなことをリアルに感じたりする。「日本はどうあるべきか」とか、同級生同士でよくそんな話をしていた。
 高校を卒業して日本の大学に入ってそういう話を同級生にしても、「おまえは変わった奴だな」という話になる。10代も投票できるのはいいことだ。日本の学生は非常に政治に関心が薄い。選挙権年齢を18歳まで引き下げることは関心を持つきっかけになるかもしれない。

 -初めての投票先はどう選んだか。
 父親は政治家との付き合いが結構あった。学生の頃、一緒に住んでいた時期もあったので、「この選挙区のこの先生はどういう人か」といろいろ話を聞いていた記憶がある。海外に対して通用するのはどっちかなとか(いうことも考えた)。

 -若い人はどう投票先を選べばいいか。
 演説でもホームページでもいい、見た時に感覚的に「この人はうそは言ってないかな」とか、(政治家の)人間性から入るのも一つかもしれない。政治は人間ドラマ、人を見た方が興味を持ちやすいのではないか。

 -大人や政治家はどんな努力をすればいいか。
 子どもの頃からよく家の中でそういう政治の話が出ていた。ニュースを見ていると父親が「これはどう思うんだ?  俺はこう思うよ」とか、父自身の考えをよく話してくれた。親との関係が結果的に政治に興味を持つところにつながった。
 やっぱり面白くないとなかなか興味を持たない。政治家ももっと「しゃべり」を面白くしなければいけない。スピーチが本当につまらない。どうすれば分かりやすく、興味を持ってもらえるか、そこの工夫ができている人はごく一部だ。

 -日本と海外で学生の政治への意識は違うか。
 圧倒的に違う。ネパールの学生は「どうやってこの国を良くするか」をみんな話す。日本の学生は「この国をどうするんだ」なんてことは議論しない。
 それは学生に限らない。登山のベースキャンプでは世界中の登山家が共同生活をする。マナスル(ネパールの標高8000メートル級の山)に行った時だったが、(領土問題を抱える)ロシア人とグルジア(現ジョージア)人がいて、酒を飲むと激しい議論が始まる。韓国隊は酒を飲むと「おまえは竹島をどう思うんだ」と必ず絡んでくる。
 日本はどこか政治の話はタブーなところがある。身内はいいが、仕事先の人とご飯を食べている時に「あなたの支持する政党はどこですか」なんて会話はまずやらない。海外はそれから始まる。

 -「政治で何も変わらない」と思っている若い人もいる。
 富士山の清掃をやっているが、以前はトイレは全部垂れ流しで「白い川」と言われていた。今は全てバイオトイレに変わった。環境省のトップだった小池百合子さんが動いたことが大きなきっかけになった。僕らが一つのきっかけにはなったが、最終的に政治家が動いたことによって着実に変化があるわけだ。政治によって何も変わらないことはない。
 小笠原諸島には自然を守る行政の専門家が滞在してなかった。「東京都レンジャー」という制度をつくらないかと(当時東京都知事だった)石原慎太郎さんにお願いしに行った。次の日の記者会見で「来年から都レンジャーを始める」とすぐ発表するわけだ。そういうベースがあって小笠原諸島が世界自然遺産に登録された。政治が何も決められないことはない。

 -選挙権を持つ若い人にメッセージを。
 いろんな見方をして、最終的に自分はどう思うのか、と考える癖を付けた方がいい。新聞なんて1紙だけ読んでいたら駄目だ。一個の出来事を各紙がどうやって捉えているのか並べると面白い。じっと見ながら「自分はどう思うのかな」って考えるべきだ。

 野口 健(のぐち・けん)25歳までに7大陸最高峰の登頂を果たし、当時の世界最年少記録を樹立した。その後は、エベレストや富士山の清掃登山、第2次世界大戦戦没者の遺骨収集などに取り組んでいる。42歳。 

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