Source:https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/2a00275e08fdbd11d119bbef3a58f6d816217a06
【「休戦中も続くイスラエル軍による殺害】
先週、イスラエル軍によって26人が殺され、200人以上が負傷しました。これは大きな数字です。ガザ地区のさまざまな地域で住民が標的とされました。26人のうち5人は、ネツァリーム地区の近くで死亡しました。彼らは民間車に乗っていましたが、この車は無人機による攻撃の標的とされたのです。これによって5人が死亡しました。
他の3人は、ブレイジ難民キャンプの東部で砲撃により殺害され、他はラファ市、ベイトハヌーン町、ガザ市東部のシュジャイーヤ地区で戦車の砲撃によって死亡しました。ガザ地区の緩衝地帯近くの東部地区です。
そして今、緩衝地帯には依然としてイスラエル軍の2つの師団が展開しています。
【封鎖で追い込まれる住民の生活)
今ガザで最も深刻な問題は、“封鎖”です。
私たちはこの封鎖の結果、今、苦しんでいます。今回はラマダン(断食月)中に、非常に厳しい封鎖が行われています。誇張しているわけではありません。本当にすべてを停止しています。何の搬入も許可されていません。トラック1台でもガザ地区に入ることは許可されていない。例外はないのです。
非常に厳しい封鎖で、あらゆるものが不足しています。食糧不足、水不足も再び発生しています。イスラエルからガザ地区への水の供給が完全に停止されたからです。医薬品も不足しています。
私自身について言えば、妻が出産したばかりです。そのため必要な薬を買いに薬局に行ても、必要な薬がほとんどありません。代替品を探そうとするのですが、時には代替品さえ見つからないのです。薬不足は深刻で、危機的状況なのです。
先日、ファラフェル(ひよこ豆のペーストを油で揚げたもの)を売る男性の写真を送りました。彼は木の枝を燃料として使っています。ガザでは、このような光景が至る所で見られます。ガザ各地でファラフェルを売っている人たちは皆、同じことをしています。私たちには調理用ガスがないのです。だから。木を燃やしたり、古着や不要な紙を燃やしたりして、火を起こさなければなりません。市場でも、レストランでも同じ状況です。ガスが無いのです。その状況を伝えるために、この男性に写真を撮らせてもらう許可を求めたのです。
また車の燃料もありません。もし緊急で病院に搬送する必要がある人がいても、救急車は対応できません。自分自身で患者を病院に連れて行く方法を見つけなければなりません。救急車に燃料がないので、救急車を派遣できないのです。
ガザの北から南まで、道路にはほとんど車は走っていません。ごくまれにほんの少しの車を見かけることがありますが、おそらくそれらは国際機関などの車でしょう。
だから人々は交通手段として、ロバや馬が引く荷車を使っています。人びとは、この手段か、または自分の足で歩く手段しかありません。
私が3日前にマガジ難民キャンプに行ったとき、私は自分の足で歩きました。先週も他の難民キャンプに行ったときも、私は自分の足で移動しました。車やタクシーを見つけることはできません。今では「タクシー」はロバが引く荷車です。これが私たちの「タクシー」です。私たちの通りはロバや馬が引く荷車でいっぱいです。つまり移動するには、この乗り物に乗るか、自分の足で歩かなければならないのです。
これは非常にひどい状況です。封鎖の影響は非常に痛みを伴うものです。人びとは非常に苦しんでいます。この封鎖は、これまで私たちが経験したどの封鎖よりも、さらに厳しいものです。
【「平和」も「戦争」もない状態】
今日は3月14日です。これはアラビア暦でも同じです。今日はラマダン14日目です。また今日は私が「奇妙な期間」と呼ぶ期間の14日目でもあります。ええ、今日も奇妙な期間の14日目です。これは戦争でも停戦でもない期間です。ご存知のように、停戦の第1段階は3月1日に終了しました。しかし、現在、第2段階には移行していません。
3月1日から始まり、現在3月14日までの14日間、私たちはこの奇妙で異常な期間を過ごしています。つまり、平和でも戦争でもなく、戦闘も停戦もない期間です。第2段階には移行せず、第1段階の公式な延長も行なわれていません。
人びとは複雑な思いで、困惑しています。何が起こっているのかわからないのです。苦しい封鎖状態が続いています。そして、私たちは先が見えません。この後何が起こるのかわかりません。
私たちは、これから数日、数週間の間にどんな状況に直面するのかわかりません。だからとても奇妙で、不安で、複雑な心境です。私たちは今そんな時期に生きています。
現在、イスラエルは公式に宣戦布告しておらず、公式に戦闘を再開していません。ですから、私たちは板挟みになっています。真ん中に挟まれたままです。私たちは、「平和」なのか、「戦争」なのか、わかりません。人びとは、この状態が長く続くのではないかと恐れています。自分たちがイスラエル、ハマス、国際社会から忘れられていると感じています。
私たちガザ住民が、非人間的なひどい状況下に置かれているなか、「パレスチナ人代表団」は、カタールのドーハの豪華なホテルで、ゆっくりと交渉し、時間を無駄にしています。一方で、彼らは、今このひどい状況で苦しんでいるガザの人びとに全く目を向けません。
ガザの住民は、自分たちに何が起こるのかを知りたいのです。この奇妙な現在の状況に終止符が打ってほしいのです。
「停戦」が存在するのなら、国境と検問所を再び開いてください。「戦争」を望むのであれば、戦争をやってください。しかし、この中途半端な状況は、とてもひどい状況です。戦争でもなく、平和でもない。戦闘でもなく、停戦でもない状態なのですから、
人びとはこの現状に不安を抱き、悲しみ、怒りを感じています。彼らは、自分たちが忘れられていると考えています
もちろん、ガザの人びとは誰も再び戦争が起こることを望んではいません。ほとんどの人が「平和的な終結」を望んでいます。なぜなら、戦闘機の爆音を再び耳にすることや、大量殺人や大量虐殺を再び経験することは耐えられないからです。
またハマスやイスラム聖戦の戦闘員が学校や病院に隠れたり、民間人のテントの間に隠れたりするのを見るのは耐えられません。人びとはこのような光景を嫌悪しており、再びこのような光景を見るのは嫌なのです。
【アメリカの2つの提案】
(Q・アメリカとハマス間の交渉はどうなったのでしょうか。結果は出なかったのでしょうか?)
交渉はカタールのドーハで終了しました。しかし双方から公式な結果発表もまだありません。いくつかの宣言があるだけです。
ア メリカ側は、この段階、あるいはこの交渉の局面は、おそらく継続されるだろうと示唆しています。今後、数週間のうちに次の交渉が始まるかもしれません。アメリカ国内では、交渉の結果はアメリカ人にとって期待していたものではないと伝えられています。ハマスとの交渉に満足していないのです。
この問題について語るとき、トランプ大統領が派遣したアメリカの特使、ウィトコフ氏についてお話ししなければなりません。ウィトコフ氏は、ハマスとイスラエルの間の闘争を解決するための提案を行うために、トランプ大統領がドーハに派遣したアメリカの特使です。
ウィトコフ氏は先週、2つの提案を提示しました。そのどちらも第2段階に移行しないというもので、第1段階の延長を目的としています。つまり、アメリカはイスラエルのネタニヤフ首相と同じように、第1段階を延長し、第2段階に移行しないことを望んでいるのです。
最初の提案では、60日間の停戦で、ハマスは生存している10人の人質と遺体の一部も解放すべきだと提案しました。もちろんイスラエル側も数百人のイスラエル人捕虜を解放することも含まれています。
この提案をハマスは拒否しましたが、イスラエル側はこの提案を受け入れました。
そこで、アメリカ側は別の提案を昨日、提示しました。2つ目の提案は、ハマスに5人の生存中の人質のみの解放を要求しています。停戦期間は4~5週間です。つまりほぼ1か月間です。一方、イスラエルはパレスチナ人受刑者数百人を釈放するというものです。ハマスはまだ公式な回答をしていませんが、おそらくハマスは拒否するだろうと人びとは考えています。なぜなら、ハマスは第2段階の進展を主張し、次のステップに進めたければ、停戦交渉の2段階に移行すべきだと主張しています。これが現在の状況です。
ハマスが再び拒否すれば、戦闘の再開につながると思います。
【ガザ住民の“痛み”を感じないハマス】
(Q・なぜハマスはこれら2つの提案を拒否したのでしょうか?なぜハマスは第2段階に固執するのでしょうか?)
海で船が沈没しようとする時に使う「救命胴衣」をご存知でしょう?人質はハマスにとって「救命胴衣」のようなものです。人質でハマスは自分たちの生存を維持しています。ハマスが人質を確保している限り、ハマスは消滅、完全な破壊から身を守ることができます。つまり、人質はハマスにとっての「救命胴衣」なのです。または人質は「酸素ボンベ」のようなもので、ハマスに息を吹き込む酸素を供給しているのです。ハマスは人質を確保したいのです。特に、生存している人質は24人しかいません。そのうち22人はイスラエル人で、残り2人はタイ人かネパール人などです。
10月7日の攻撃直後の人質の数は251人でした。251人から22人ですから、非常に少なく、10%にも満たない数です。
ハマスは少なくなった人質を「救命胴衣」として確保しておきたいのです。自分たちの存在を守るためにです。だからハマスは人質解放の条件として、イスラエル軍をガザ地区から完全撤退される第2段階に移行することを求めているのです。第2段階に移行することは、自動的に戦争が終了したことを意味します。
停戦交渉の第2段階を開始すれば、イスラエルは戦闘を再開することはできないことになります。つまり戦争は終結する。だからハマスはこれを望んでいるのです。
(Q・もちろん、ハマスの指導者たちは、厳しい封鎖にためにガザの人びとがどれほど苦しんでいるかはわかっているはずです。それなのに、なぜハマスはガザの住民のことを気にかけないのでしょうか?)
ハマスは自分たち自身、ハマスの権力や存続を守りたいのです。彼らはガザ住民のことを全く気にかけていません。残念ながら、これが今起きていることです。だから人びとはハマスに対して非常に厳しい批判をしているのです。
ハマスの幹部たちに対して非常に厳しい批判が起こっています。彼らはドーハの高級ホテルに滞在し、アメリカ人やイスラエル人、カタール人、エジプト人と実りのない交渉に時間を無駄にしています。ハマスは自国民つまりガザの住民に対する責任を理解していません。ハマスは自分たちが引き起こしたこの狂気の冒険を終わらせなければなりません。
残念ながら、ハマスはガザの人びとの“痛み”を感じていません。人びとの“痛み”や“苦しみ”に共感することができないのです。だからこそ、人びとはハマスを非難するのです。カタールの衛星放送「アルジャジーラ」を観れば、ハマスのプロパガンダがわかります。アルジャジーラは、「ガザの大勢の人びとがハマスを支持し、その抵抗を支持し、抵抗の継続を支持している。ハマスの抵抗運動でイスラエルの戦車を破壊し、イスラエルを打ち負かすのだ」と主張します。しかし残念ながら、ガザの人びとの実際の状況、彼らの心情、ハマスに対する感情と、アルジャジーラなどのメディアで報道されている内容の間には、非常に大きな隔たりがあります。メディアでは、まったく現実と全く異なる内容が報道されています。非常に厳選されたインタビューが行われています。
カメラの前には、アルジャジーラが望み、必要とする主張を語らせるために、人が連れてこられます。私たちは、ガザ地区についてアルジャジーラや他のメディアやチャンネルのカメラレンズを通して映し出される、捏造されたイメージと、実際の現実との間に大きな隔たり、矛盾があるという事実を目の当たりにしています。
現地のメディアは、ガザ地区のパレスチナの人びとの鼓動、心臓の鼓動を反映していません。ジャーナリズムにとって最も重要な倫理観、つまり“信頼性”を失ってしまったことは悲しいことです。残念ながらその信頼性はありません。悲しいことです。
ハマスのメンバーや活動家を街で見かけることはありません。彼らは完全に隠れています。これは私たちに示唆を与えています。おそらく彼らは、イスラエルが突然、戦闘を再開する可能性があるかを予想しているのかもしれません。イスラエルは宣言なしに戦闘を再開できるのかもしれません。今回、宣言をしないつもりなのかもしれません。現時点では、戦闘再開の準備をしているという兆候です。おそらくウィトコフ特使の第2提案を拒否すれば、戦闘が再開されるでしょう。
【破壊された家屋の倒壊と不発弾】
私たちはガザ地区のさまざまな場所からたくさんのニュースを聞いています。ジャバリアでは、さらに多くの事件が発生し、壁が崩れ、人びとが死傷しています。私たちは建物の崩壊を目撃しました。ジャバリアでは建物全体が崩壊し、多くの重症の負傷者が出ています今後、数日のうちに何人かが亡くなるでしょう。
これはジャバリアで起こったことです。2階建ての建物が突然、崩壊しました。当初から部分的に崩壊していましたが、建物の半分が崩れ落ちたのです。
残念ながら、人びとは自分たちの安全や家族や子どもの安全を気にしてはいません。南部から北部に戻ってから、建物の残っている半分に住むことにしたのですが、突然、残りの半分が崩壊したのです。お話したように、負傷者が多数出ています。そのほとんどが重傷です。おそらく何人かは亡くなるでしょう。これはジャバリア難民キャンプとその南部で起きた最も重要な事件です。
さらにイスラエル軍の残した不発弾によって負傷した人もいます。瓦礫はそのままで、イスラエル軍の不発弾も除去されていません。場合によっては、これらの兵器が爆発します。それによって人びとが被害を受け、死傷しています。その、ほとんどの被害者は子どもたちです。いつも瓦礫の中で遊び回っていますから。
【調理用ガスがなく、靴も燃やす】
(Q・あなた個人や家族、親戚、ある周囲の人びとはどのようにしてこのような厳しい状況の中で、生活しているんですか?)
率直にお話したいと思います。おそらく、言葉では言い表せないほど厳しい状況であり、非常に大きな苦難です。
食事を作るのは、私たちにとってとても大変なことです。ラマダン(断食月)の食事は、1日1食です。断食が終わった後の食事を私たちはそれを「イフタール」と呼びます。あなたとのこのインタビューが終わったあと、その食事の準備にかかります。その食事を作るには5~6時間かかるからです。
まず木の枝を集め、火を起こさなければなりません。それから料理にかかります。戦争前は1時間で食事の準備ができたのですが、今では5~6時間かかります。調理用はガスがないんです。モノを燃やさなければなりません。古い靴を燃やしている人もいます。先日、私は窓からその隣人を怒鳴りつけた。彼は、使わなくなった靴や子どもや妻の古い靴を家の中で燃やしていた。私は窓から彼に怒鳴りました。
「君は非常に有害な煙を出している。正気なのか?何をしているんだ!」
私は彼に、これは癌を引き起こす可能性があると言いました。プラスチックを燃やすのはよくない。靴のプラスチック部分を燃やすのはよくないと言ったんです。
すると、彼は私に言いました。
「許してくれ。燃やすものが他にないんだ。薪がないんだ。今、薪を金で買えと言うのか。薪代を払う金はないんだよ。食料を買う金もないのに、薪を買えと言うのか!」
【この悲劇を終わらせてほしい!】
市場には今、多くのものが不足しています。砂糖も不足しています。小麦粉が減り始め、姿を消し始めています。おそらく、数日のうちに完全に姿を消すでしょう。野菜も、一部は手に入りません。手に入る野菜も、非常に高価です。
非常に厳しい状況で、特にこの聖なる月、ラマダンの間は、子たちを満足させるために、何か食べ物を作らなければならない。そして、非常に悪いことが起こっています。
子供たちはアニメ映画の中で果物を見たり、食べ物を見たりして、自分たちのためにそういった種類の食べ物を料理するようにと要求します。彼らはリンゴが欲しい、バナナが欲しい、マンゴーが欲しいと言います。どこからマンゴーを持ってこられるというのでしょうか?
数日前に市場に行ったら、粉末ジュースを見つけました。水に粉末を少し入れるとジュースになるのです。嘘をつくために、マンゴージュースの粉末を2袋買ってきました。
(Q・ガザ地区の住民の一人として、今、国際社会に何を要求したいですか?)
ガザに住むパレスチナ人として、私は、この悲劇を終わらせてほしい。この状態は非常に長い悲劇です。もう1年半にわたってこの悲劇、苦しみが近づいています。もう終わらせたいほしい。
私たちは暗いトンネルの中を歩いています。このトンネルの先に光、明るい光、輝く光が全く見えません。それはとても長いトンネルです。真っ暗です。その彼方に光はありません。
以前にもお話ししたように、私はこの戦争が終わったらここガザには留まらないつもりです。なぜなら、ハマスが何らかの形でここに留まるだろうと思うからです。ハマスと生活を共にするのは不可能です。数年ごとに彼らは私たちに新たな戦争、新たな破壊、悲劇をもたらすからです。
今、私にとって最も重要なことは、国境の状況のニュースを追うことです。国境の検問所がどうなっているのかを知るためです。国境が開かれ、人びとがそこを通れるようになるという知らせを待っています。ガザを脱出するためにです。
私はここを去りたいのです。私はここにはいられません。私は親友を失いました。親戚を数十人失いました。友人を失いました。子供たちとともに、とても汚い「ゲーム・オブ・スローンズ」(架空の大陸・ウェスタロスを舞台に、王座をめぐる陰謀と策略が渦巻く権力争いを描く映画) の犠牲になるためにここにいられません。ガザの状態はいくつかの国家間の「ゲーム・オブ・スローンズ」です。
この戦争は「パレスチナの解放」のためではありません。「パレスチナ人の大義」のためでもありません。イスラエル、イラン、アラブ諸国、米国、トルコの覇権を巡るこの汚いゲームのために、私たちの血が流されたのです。(続く)

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