2018年8月21日火曜日

激変する中国人留学生のアルバイト事情。今や人手不足日本の救世主――就労時間制限超えが常態化

Source:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180820-00010000-binsider-bus_all
8/20(月) 、ヤフーニュースより

「日本留学は、あまりいい思い出はないんですよ」

中国のハイテク産業団地で企業誘致を担当する朴瑞洋さん(49)は苦笑した。

1990年代、中国で修士号を取得後、東京の国立大学大学院に博士留学した。奨学金だけでは生活できず、池袋の中華料理店でアルバイトをした。中華料理店を選んだのは、「中国人を受け入れてくれるバイト先がそこしか見つからなかった」からだ。

朴さんは、中国の大学進学率が数パーセントだった時代に海外の博士過程に進んだエリート層。しかし留学した日本では、多くの時間を中華料理店での皿洗いに費やした。

「お客さんにも、中国人ってだけでバカにされたりしましたよ。僕たちの世代の留学生のバイト先は、中華料理店か新聞配達くらいでした。今の留学生には想像もつかないでしょうね」
来日時は駐車場の誘導員、今は百貨店で訪日客の案内
中国人留学生のバイト事情は、この10年で激変した。2000年代までは日中の経済格差が大きく、親戚中からお金を集めても渡航費用と学費に消え、生活費は完全に自分頼みのことが多かった。アルバイトできる場所も新聞配達、飲食店などに限られた。2008年に九州の大学を卒業した馬青さん(34)は、飲食店でのバイトに明け暮れた。

「学費も自分で稼がないといけないので、指導教授にバイトを減らしなさいと言われてもどうしようもなかった。クラスメートやゼミの飲み会にも出たことがない」と振り返る。

しかし2010年代に入ると、日本の人口減少と、中国の経済成長が、留学生の立場も変えた。

「外国人という理由で差別を受けたと感じたことはないです。もちろん、怖い先輩はいますが。そういう先輩は、日本人に対しても厳しいですから」

関西の大学院に通う包天花(24)さんは、大学3年生のときに単位互換制度で関西の大学に交換留学し、そのまま日本の大学院を受験。日本での生活は5年目に入った。

来日当初は、中国人留学生の間で代々引き継がれている駐車場の誘導員のアルバイトをした。皆でバスに乗って、その日の勤務場所に向かう。体力的にはきついが、中国人の先輩が多く、高度な日本語も必要ないため、気持ちが楽だった。半年ほど経つと、求人情報誌を見て大学近くのお好み焼き屋のアルバイトに応募した。開店当初は時給が100円上乗せされ1000円だった。

「最初は怒られることが多くてつらかったけど、慣れてきたら楽しくなり、結局大学を卒業するまでそこで働きました」

大学院進学後、2017年冬から2018年5月までは就職活動でバイトを中断した。内定が出た後は、百貨店のインフォメーションで主に中国人客対応の仕事をしている。時給は1500円という。
少子化で大学の門戸も広く
厚生労働省によると、日本で働く外国人労働者の数は2017年10月末に約128万人に達し、届出が義務化された2007年(約49万人)から80万人近く増えた。

このうち、「資格外活動(留学)」の外国人労働者は、前年同期比約5万人増の約26万人だった。

日本学生支援機構(JASSO)の調査では、日本で学ぶ外国人留学生は約26万7000人(2017年5月時点)で、10年前の倍以上に増えた。増え続ける留学生がそのまま、日本の労働力になっている形だ。

最近はベトナム、ネパール国籍の労働者が急増しているとはいえ、中国人は外国人労働者の3割近くを占め、最大戦力となっている。

日本の人口減は、留学生に2つの側面で影響を与えている。まず、少子化で定員割れや入学者減に直面した日本の大学・大学院が留学生の受け入れを拡大した。その結果、外国人にとって日本留学が急速に身近なものとなり、交換留学を含めた留学生の数が劇的に増えた。

特に中国は経済成長で金銭的な負担感も薄れており、前述の包さんは、実家から月7万円の仕送りを受け取っている。

次に、本音では日本人を雇用したい企業も、人手不足で外国人を雇わざるを得なくなり、留学生の働き先が拡大した。中国人を中心とする訪日外国人旅行者の増加で、外国語で接客できる人材の必要性も高まった。

日本語を身に着け、中国語や英語もできる留学生は引く手あまただ。ベトナム人留学生のスーさん(24)は、ホテルのレセプションとベンチャー企業の通訳のアルバイトを掛け持ちしている。ホテルからはこのまま正社員にならないかとの打診があったが、就職活動で第一希望の商社から内定を得たため、断った。
交換留学生はコンビニでデビュー
一方、日本に来たばかりの留学生は、コンビニか飲食店でのアルバイトを選ぶことが多い。特にコンビニは、日本語がそれほど流暢でなくてもこなせると見なされ、日本語学校の留学生や交換留学生の間で人気が高い。

交換留学で2017年10月に来日した高富一さん(23)は、翌月大手コンビニでアルバイトを始めた。日本語での日常会話は問題ないレベルだが、仕事に慣れるまでは1カ月ほどかかった。一番難しいのはタバコの販売だったという。

「銘柄がたくさんあるし、お客さんは商品名を略したり番号で言うことが多い。どのタバコがどこにあるかを覚えるのも大変で、タバコを買いそうなお客さんがレジに近づくと、ものすごく緊張しました」

同じ時期に来日した郭宇奇さん(22)は、別のコンビニチェーンと居酒屋のバイトを掛け持ちした。

時給は居酒屋のアルバイトの方が100円以上高かったが、半年ほどすると、コンビニ1本に絞った。

「1つのバイトだけで生活費が工面できると分かって、コンビニを選びました。居酒屋はいろいろなお客さんが来て、忙しいときはすごく忙しいし、酔っぱらっているお客さんは言葉が聞き取りにくく、対応が大変。僕が働いていたコンビニは常連さんが多くて、慣れると居心地がよくなりました」
就労時間の上限超えが常態化
家庭が貧しく、授業に出られないほどバイト漬けになったり、あるいは、当初から“出稼ぎ”目的で留学ビザを取得する中国人留学生は今も少なくない。

東京都内の大学院に通う房金星さん(28)は、学費と生活費のため、飲食店のバイトを掛け持ちして月15万円を稼ぐ。住まいはルームシェア、食事は極力バイト先で食べさせてもらう。「本当にぎりぎり。修士論文も就活もあるので、毎日厳しい」と疲れた様子で話す。

ただ、仕送りがあり、比較的余裕のある留学生でも、アルバイト先の人手不足が理由で、入管法で定められた上限(授業がある時期は週28時間)を超えて働くケースは珍しくない。

コンビニでバイトをする高さんと郭さんは2人とも、就労時間の上限を大きく超えて働いている。高さんは週4日、午後11時から早朝までの夜勤をこなす。時には10時間連続の勤務もある。店長がどうやって高さんの勤務時間をごまかしているかは知らないし、自分からも聞かない。

郭さんは、「本部が厳しい」ため、コンビニでは28時間の範囲内で働いているが、居酒屋の勤務時間を足すと、制限を超えていたという。
良くも悪くも日本社会を学ぶ場に
取材した留学生の大半が、学業とアルバイトを両立しているというよりは、バイトの合間に授業に出ている状態だった。郭さんはバイト先で3日以上連続した休みが取れず、留学中は1度も旅行に行けなかったという。バイト代はできるだけ貯金し、中国での就活費用に充てた。

包さんは、「バイト先のデパートでは中国人旅行者に応対し、大学院の研究室の同級生も、実は半分以上が中国と台湾からの留学生だったので、日本語ができなくても何とかなる環境にずっと身を置いています」と苦笑いする。

一方で、「バイトを通じて、大学では学べない日本社会のことを知ることができた」という感想も多く聞かれた。

ファミリーレストランでアルバイトした20代の中国人女性は、「いろいろな年代のスタッフがいて、年配のパートの女性に面倒を見てもらったし、日本人の考え方をたくさん教えてもらった」と振り返る。ファストフードチェーンで働いた別の女性(24)は、男性店長のセクハラに悩まされ続けた。日本人の同僚に相談すると、「あまり気にしないで、相手にしない方がいい」と笑って言われ、びっくりした。

「その後、日本のセクハラやパワハラの報道に関心を持つようになりました。自分が体験したことで、中国にいたころには見えなかった日本の一面を、実感をもって知ることができました」

2018年3月に留学を終えて帰国した郭さんは、バイト仲間に3回送別会をしてもらい、50代の女性の同僚の発案で、寄せ書きももらった。

「このコンビニは、中国にも進出しているので、見かけたら必ず立ち寄ります。今は中国のIT企業で働いているけど、日本のバイト仲間とはずっと縁を持ち続けたい」と話した。

(文中仮名)

(文・浦上早苗)
浦上 早苗

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