2017年11月24日金曜日

【特集】地域が支援…在留外国人を悩ます「高校入試」

Source: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171122-10000001-mbsnews-l27
11/22(水) 、ヤフーニュースより
外国人観光客が増えている日本ですが、日本に住む在留外国人も増えています。大阪ミナミの繁華街にある市立南小学校では約4割の児童が外国にルーツを持っています。日本語の習得などに苦労する子どもたちですが、中でも大変なのは日本の高校に入ろうとしている子どもたちです。入試問題に出てくるテストへの対応、いわゆる「受験勉強」が必要になります。“受験事情”と”サポート体制”について取材しました。

児童の4割が外国にルーツ
大阪ミナミのど真ん中、心斎橋筋商店街にほど近い東心斎橋にある大阪市立南小学校。全校児童174人のうち4割以上にあたる約80人が外国で育ったため日本語に触れることがなかったり、日本で生まれたとしても親が外国出身のため、日本語指導が必要だったりする子ども達です。

Q.どこから来たの?
「フィリピン」
Q.他にフィリピンから来た子は?
「ハイ!ハイ!ハイ!」
Q.他は?
「韓国」
「モルドバ」

ここにはフィリピンや中国など約10の国や地域から親の仕事などで日本にやってきた児童が通っています。9年前に市内で初めて学校内に日本語教室ができた小学校でもあります。基本的に日本人と同じ時間割で授業を受けますが、国語の時間だけは日本語教室で学びます。

「麦の粉からケーキやパンを作ります。おにぎりもご飯も米です」(フィリピン出身の女子児童)

来日したてでも2、3か月でコミュニケーションが取れるようになるといいます。そして学校内の看板は多言語表示、お互いの国や文化を理解するイベントも積極的に行っています。

「モンゴルの子がいたときは校庭にゲルを建てた。馬頭琴(ばとうきん)を弾いてもらったりホーミー(喉歌)もやってもらったら、モンゴルの子はいい顔をする。マイノリティの子がいきいきすることで自分たちのよさにも気づいていく」(大阪市立南小学校 山崎一人校長)

放課後の「居場所」に
子どもたちを支えているのは学校だけではありません。大阪市中央区にある「子ども・子育てプラザ」では午後6時毎週火曜日の夕方に「Minamiこども教室」が開かれています。通っているのは約30人で、ほとんどの児童が南小学校の子どもたちです。日本語を学んだり学校の宿題などをしています。

「これ『舌』って書いてあるでしょ。『舌を出す』って書いてある。舌出してみて?」(先生)
「(床の方を指さして)下」(フィリピン出身の男子児童)
「この『舌』は…ベロのこと」
先生は元教師や学生などのボランティア。楽しみながら日本語を学べて放課後の彼らの「居場所」にもなっています。

Q.ここで勉強してわかるようになった?
「うんうん。算数がわからないときはいつもここに来る」(ブラジル出身の女子児童)
「どんどんわかりやすくなって、テストで80点取れてうれしかった」(フィリピン出身の男子児童)

「学力の向上につながればいいと思うが、一方でここは学習塾ではないので、成績の上下に一喜一憂するのではなく、とにかく安心して過ごせる場所であってほしい」(教室の実行委員長 金光敏さん)

夜、親が働いている家庭も多い子どもたちを学校と地域が協力してあたたかく見守っています。

入試の壁「英語と数学ができても…」
一方で、大変なのが高校受験を控えて来日した人たちです。カンデル・ヒララルさんは大阪府摂津市にある両親が経営するインド・ネパール料理店を手伝っています。高校3年生ですが20歳です。そのわけは…

「ネパールでは英語も数学もできていたので、試験を受けずに高校にいけると思ったけれど、実際に来てみたら違った」(カンデル・ヒララルさん)

大阪府では来日して6年に満たない子どもは、通常より科目数は少ないものの日本語で書かれた数学と英語、作文の入学試験を受けなければ高校に入学できません。成績優秀だったカンデルさんは、日本語さえ習得できれば入試も乗り越えられると考えていましたが、そう簡単にはいきませんでした。

「出てくる問題のパターンが(ネパールと)まったく違って、慣れていない問題が多すぎた」(カンデル・ヒララルさん)

例えば英語。ネパールでは長文を読んで全体の意味を理解しているかどうかが問われていましたが、日本は細かい文法を理解しているかどうかを問う問題が多く戸惑ったといいます。

「はじめて来たときは楽しみにしていたが、勉強していたら難しくなって辛くなっていった」(カンデル・ヒララルさん)

そんな時、助けになったのがお父さんが調べた情報でした。

「ネットで探したり、この子が来る前にそこに通わせていた知り合いの紹介。『こどもひろば』に行ってすごく良かった。先生方もよく助けてくれて、高校も探してくれて本当にありがたいです」(カンデルさんの父 オムラルさん)

「こどもひろば」のサポート体制
カンデルさんが高校に合格するまで通っていた「こどもひろば」は大阪・天王寺区にあります。ここでは日本の高校を目指す子どもたちをサポートしていて、現在約30人がいわゆる「受験勉強」をしています。

今年4月にフィリピンから来日したジョンさん。16歳のジョンさんは来年春の高校入学を目指しています。

「日本語と数学がむずかしいです。一生懸命勉強して試験にパスします。そして日本の高校に行きます」(今年4月来日 ジョン・クリス・ルルさん)

ここは民間のボランティアが週に2日開いていて、去年は20人を高校に送り出しました。

「高校に行きたいけれど、どうやって高校に行けばいいかわからない、どうやって準備していいかわからない子がいることが明らかになったので、その子たちを支えることを主な活動にしている」(こどもひろば事務局長 鵜飼聖子さん)

また、勉強以前に日本の高校に入るためのシステムを知らないまま来日するケースも増えています。取材していた日も…

「どうして(娘さんと)日本に来たの?」(鵜飼聖子さん)
「一緒に住むため」(来日した親子)
「(高校が)終わってからきていたら大学いけるけど、終わってなかったら大学いけないよ」(鵜飼聖子さん)

18歳の娘はフィリピンの高校をあと1年残して来日しました。日本の高校に簡単に編入できると思っていたといいます。

「途中から入るとなったらすごいスペシャルケースだから、いっぱいお願いしないといけない」(鵜飼聖子さん)

事務局長の鵜飼聖子さんは、来日してからの行政のサポートが足りないと感じています。

「どこへ相談したらいいのかわからない。行政窓口は住民登録をするだけで(高校受験の)知識は何も与えてくれない」(鵜飼聖子さん)

「こどもひろば」のOBで高校3年のカンデルさんがやってきました。実はカンデルさん、来年春から大分県にある立命館アジア太平洋大学へ進むことが決まりました。今は同じネパール出身の後輩など、かつての自分と同じ境遇でがんばる子どもたちを教えています。

「時間があったらここに来て教えたい。自分も高校受験する前にここで教えてもらっていたので、自分もそういう人になりたかった」(カンデル・ヒララルさん)

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