2017年5月18日木曜日

出稼ぎネパール人を狙った「SNS結婚詐欺」事件が多発しているワケ お釈迦様の生誕地「聖なる国」の呆れた実態

Source: https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170516-00051689-gendaibiz-int
ヤフーニュースより
現代ビジネス 5/16(火) 
 「日本で稼いだおカネのほとんどを失いました。結婚詐欺にあったんです。警察からその事実を聞かされた時、 “ここで自殺する! パシュパティ(火葬場)はすぐそこだから焼いてくれ! ”と叫んでいました。本当に死んでしまいたかった……」

 そういってうなだれるラケッシュさんは、ネパールのチトワン出身の28歳。4年前、東京都内のネパール料理店で働くため来日。一時は自分のレストランを経営するまでになるが、昨年、結婚を約束した女性に大金を奪われるという悲劇に見舞われた。

 ラケッシュさんの母国・ネパールの1人あたりGDPは752ドル(約85,000円)。1日1.25ドル以下で暮らす人の割合が55%と、国民の半数を上回る。そんなネパール経済を支えているのは、出稼ぎ労働者からの送金だ。在ネパール日本大使館のデータによれば、2012年時点の新規出稼ぎ労働者数は38,4000人。送金額は 3,595.5 億ルピー(約3595億円)と、GDPの 23.1%に相当する。

 主な出稼ぎ先は、中東諸国やマレーシアなどがあげられるが、日本もまた人気が高い。治安がよく、高賃金であることがその理由だ。出稼ぎを決めたとき、ラケッシュさんの頭に浮かんだのも日本だった。
3年も頑張れば家が建つ
 ラケッシュさんの家族は、農業に従事する両親とトラック運転手の弟、小学生の妹の4人。食べるに困るほどではないものの、豊かとはいいがたい暮らし向きだった。

 結婚するまでに家を新築する。それがラケッシュさんの夢だった。その資金を作るため、日本でネパール料理店を経営する同郷の知人を頼ることにした。“3年もがんばれば、小さいながらも家が建つ”と聞いたからだ。日本までの旅費は、父親が水牛を売って工面してくれた。

 月給は16万円。日本の平均賃金からすれば決してよいとはいえないが、給料の半分を故郷の家族に仕送りした。ネパール人の同僚2人と1DKのアパートで共同生活し、朝食以外の食事はまかない。欲しいものがあっても我慢し、遊びたい気持ちも封印した。

 来日して1年が過ぎた頃、職場とアパートを往復するだけの毎日に変化が訪れた。常連客の日本人女性から、“ネパール語を教えてほしい”と頼まれたことがきかっけだ。その日以来、休日を彼女のアパートで過ごすようになり、3カ月後には結婚話が持ち上がった。

 「結婚した後も日本に住んで、一緒にネパール料理レストランをやろうといわれました。13歳年上の女性でしたが、そんなに気にはなりませんでした」

 入籍を終えた後、妻の貯金を元手に小さな店を開いた。経営者となれば、収入も大幅にアップするだろうと期待したが、客足はなかなか伸びなかった。赤字の月は妻に叱責され、激しい口論になることも度々だった。
フェイスブックを通じて恋に落ち
 夫婦喧嘩の後は、決まってネパール人のフェイスブックを閲覧した。来日して約3年。望郷の念が募りつつあった。「ナマステ! (こんにちは! )」と送ったメッセージに返事が来ると、少しだけ気持ちが晴れた。

 その女性にも「ナマステ!」を送ると、すぐに返信があった。ラケッシュさんのプロフィールを見たらしく、「日本に住んでいるのですか? と書かれていた。「東京でレストランを経営しています」と返信した。それから、毎日のようにメッセージを交換するようになった。

 「変な目的はなかった。プロフィールの写真を見てきれいな人だなぁと思ったので、なんとなくメッセージを送っただけなんです」

 相手の女性の名はアヌパさん。カトマンズのビュティーパーラーで美容師として働く24歳。偶然にも同じチトワン出身だった。

 ラケッシュさんは既婚者であることを伏せた。そのうち、お互い恋心を抱くようになり、結婚の約束をするまでになった。

 「奥さんはケンカすると、もう別れる! と言っていました。だから、別れましょうと言ったのです。でも、いつも別れると言っていたくせにイヤだといいました。だから、私は家を出て行きました」

 ネパール人の友だちのアパートに身を寄せ、その友人の紹介でインド料理レストランに就職した。別れ話は半年ほどもめたが、ラケッシュさんが財産分与を放棄することで離婚成立。2年間、生活をともにした日本人妻とはそれきりとなった。

 新たな職場での給料は約20万円。朝10時から夜10時までの長時間労働だったが、アヌパさんとの結婚に向けて必死に働いた。

 「1年後にネパールに帰り、結婚するつもりだったんです。だから、自分の家族ではなく、アヌパにお金を送るようにした。それがあんなことになるなんて……」

 新居をカトマンズに構えるため、ラケッシュさんはその費用として定期的に送金し続けた。新しい職場のインド人オーナーの人使いは荒かったが、スカイプでアヌパさんの声を聞くと疲れも吹き飛んだ。あと10ヵ月、あと半年、あと3ヵ月――。アヌパさんに会える日を指折り数えながらがんばった。
プロフ写真とは似ても似つかない中年女が
 そして今年1月、待ちに待った日を迎える。日本での生活をたたみ、結婚式の費用として貯めた45万円を携えて帰国したのだ。

 ラケッシュさんはカトマンズ国際空港に着くなり、アヌパさんの携帯電話に連絡を入れた。ところが、何度コールしてもつながらない。聞いていた住所を訪ねてみたが、そこにアヌパさんの住まいは存在しなかった。

 「パニックになりました。友だちに助けてもらって1週間探しました。それでもみつからないので警察に届け出ました。それから10日ぐらい経った後、警察から署に来るようにと連絡があったのです。そこで、とんでもない事実を知らされることになりました」

 警察署を訪れたラケッシュさんの前にひとりの女が連れてこられ、「探しているのはこの女性か? と聞かれた。しかし、目の前に立っているのは、アヌパとは似ても似つかない小太りの中年女性だ。

 もちろん「この人ではない」と否定するが、警察官はたしかに本人だという。ラケッシュさんが送金した計85万円をたどり、ネパールの銀行で受取人記録を調べてつきとめた、たしかな事実だというのだ。

 「アヌパは偽名、本名はギータ。年齢38歳。無職。既婚。娘2人。夫に棄てられ、国際空港近くのガウシャラ地区に家を借り妹と同居。」

 これが、女の素性だった。

 女がフェイスブックにアップしていたプロフィール写真は、10年以上前のものだったという。しかも、アプリで眉目麗しく画像加工までしていたらしい。さらには、詐欺用のフェイスブックとは別に、もうひとつのフェイスブックを開設し、後者では娘2人をお嬢様学校に通わせている様子など、リア充ぶりを披露。学費には、ラケッシュさんからの送金を充てていたという。

 警察は、女から所持金8万ルピー(約8万円)を取り上げ、ラケッシュさんに返してくれたそうだが、85万円には遠く及ばない。日本人妻と店を捨ててまで走った恋の代償は、あまりにも大きいものだった。

SNSを通じての愛人ゲットが流行
 SNSを通じた詐欺事件は増加の一途をたどっている。狙われやすいのは、ラケッシュさんのように、ネパールより高い賃金で働き、貯えが期待できる出稼者だ。そしてもうひとつが、ネパール国民の1~2割といわれる富裕層。なかでも、一代でビジネスを成功させた、いわゆる成金層である。

 筆者の知人に、輸出入業で財を成した50代前半の男性がいる。彼から聞いた成金層の遊びはなかなか破廉恥だ。

 たとえば、最下位となったら、参加者全員に一晩のお相手を用意しなくてはならないという罰ゲーム付きのゴルフ大会。腕に自信のある彼としては、負けるとは思わず参加したそうだが、まさかの最下位となり、売れない女優やモデルの調達に奔走する羽目となったそうである。

 その知人によれば、最近の成金層の間では、SNSを通じて愛人をゲットするのが流行っているらしい。いわく、

 「フェイスブックをチェックして、好みの子がいたら “かわいいね”、“きれいだね”とメッセージを送る。無反応の場合ももちろんあるけど、返事も結構あるらしい。

 そうなれば、あとは簡単。おカネを持っていることを匂わせ、会う約束を取りつける。豪華な食事をして、服を買ってあげて、1回ベッドをともにすればそれでOK。

 “ネパールの女は1回落とせば離れない”なんてうそぶいているけど、仕事を紹介してあげたり、スクーターを買ってあげたり、部屋を用意してあげたりと、結構、おカネも使っている」

 ターゲットは14~18歳。世間知らずの年齢にあるため、たやすく甘言に乗ってくるらしい。知人のビジネス仲間4人も、SNS経由で知り合った10代女性と愛人契約を結んでいるそうだ。

 しかし、まんまと騙されてしまったビジネス仲間も2人ほどいるらしい。少なくない金銭を貢いだにも関わらず、1度も会えないまま逃げられてしまったという。

 そのうちのひとりに、名前も顔も明かさないことを条件に話を聞いた。

 「フェイスブックにメッセージを送ったら、すぐに反応があった。地方出身の子で、親元を離れてカトマンズの大学に通っているという。父親が病気で仕送りが途絶えてしまったというので、何回かに分けて彼女の銀行におカネを入れてあげた。合計35万ルピー(約35万円)。

 ところが、会う約束をしてもなにかと理由をつけてはドタキャンされる。そのうち、連絡がとれなくなってそれっきり。今から思えば、大学生というのはウソだろうね。同じような手口で何度かやっているプロの詐欺だと思う」

 明かに詐欺事件であるにもかかわらず、被害届は出していないという。体裁的に、表沙汰にはできなということなのだろうが、その悪びれない表情から、今後も火遊びを止めるつもりはなさそうに思えた。
 
遠く離れたネパールから、詐欺の餌食とされたラケッシュさん。大金を投じたものの、野望かなわぬままに終わったビジネスマン。お釈迦様の生誕地ルンビニを擁する聖なる国にあっても、色恋に関しては律しきれないということなのかもしれない。
長谷川 まり子

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