2020年7月28日火曜日

現実と数字を見れば一目瞭然。PCR検査特異度が99.9999%と99%でも「議論が変わらない」のデタラメさ

Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/e729b4d71265bb9d0ec52635fa040152c3a4ee23

配信、ヤフーニュースより

HARBOR BUSINESS Online

いよいよ転換点の本邦だが、リーダーシップ不在

 ここまで、世界でもとりわけ目立ち始めた合衆国と本邦というコロナ二大失敗国について統計を用いて論じてきました。本邦は、東部アジア・大洋州を覆うコロナ禍の威力を1/100とする謎々効果(前回を参照のこと)に守られていますが、統計の挙動は世界では少数派の第一次第二波パンデミックの制御不能拡大中という合衆国と同じ事態に陥っています。  合衆国と本邦とでは、第一次第二波パンデミックが制御不能の大規模拡大というたいへんに困った事態の根本的原因はやや異なりますが、第一波パンデミックの制圧が不完全な状態で社会的行動制限を解除したために市中の未把握感染者から約1カ月をかけて社会にSARS-CoV-2(新型コロナウィルス)が蔓延して行き、更に1ヶ月で制御不能に至ったという点では共通しています。後半の1ヶ月は、ロックダウンを視野に入れた厳しい社会的行動制限無しにパンデミックを制圧できる最後の機会で、合衆国は既にその段階をとっくに過ぎ去っていますが、本邦は、いよいよその最後のチャンスを失いつつあると筆者は考えています。本邦市民による自発的な社会的行動制限で十分であるかは近くはっきりします。筆者は、国と自治体による社会的行動制限を行わなければ、死者こそ少ないものの合衆国と同様の状態に陥り、ロックダウン導入の可能性も含めた厳しい介入が不可避になると考えています。  今はまさに為政者のリーダーシップが問われているのですが、本邦では首相は雲隠れ、記者会見はまったくなく、夕方1時間だけ官邸に顔を出すだけの日が目立ち、最近ではそれすら無く、自宅から出てこない日が出始めています。東京都知事はTV映えを気にしてか連日コロナパンデミック統計の予告編がメディアに現れる始末、大阪も公務そっちのけでTV出演ばかりです。皆さん、なかなかトランプ大統領の真似が上手いものです。合衆国ではトランプ氏はリーダーシップの無い、歴代希にみる駄目な大統領と激しい批判を集め支持率がほぼ全属性で急降下*しています。合衆国の多くの州は、トランプ大統領とフロリダ州など一部の州知事のリーダーシップ不在によって地上の地獄の門をくぐってしまいました。 〈*フロリダ州、テキサス州、アリゾナ州などで病院がパンクし始め危機的状況の中でトランプ大統領のインスタグラム・アカウントに投稿された写真。  この写真を見て、CNNアンカーのクリス・クオモは、合衆国未曾有の危機のさなか、大統領が危機に対応せずに大統領執務室で豆のプロモーション撮影をしていた事に番組中でマジギレ大噴火**した。 **Chris Cuomo blasts Trump for promoting Goya products during coronavirus pandemic 2020/07/16 The Washington Post/ちなみに、クリス・クオモ氏は、コロナ・サバイバーであり、軽症のため3月30日から自宅地下室で自己隔離していた。遠隔参加でほぼ毎日短時間の出演をしていたものの、日に日に目に見えて弱って行く姿は衝撃的であった(参照:CNN〉

日米でまさかの政治問題化したパンデミック対策

 日米は、ともに世界最高水準の科学・技術と医療を誇っており、本来は新型コロナ・パンデミック対策でも世界で最優秀の成績を挙げる筈でした。ところが両国共にガッタガッタで大規模な第二波パンデミックを起こしています。  この両国では、パンデミック対策の重要な手段が政治対立の象徴となってしまい、正常な対策を妨げているという後世の歴史研究者が困惑することが起きています。  合衆国では「マスク」、本邦では「PCR検査」です。  合衆国では、マスク着用義務化は呼吸権の侵害、自由権の侵害だと主張する保守系市民の激しい抵抗を受けており、共和党系の集会でのマスク着用率は目に見えて低いものとなっています。逆に民主党系、独立系リベラルの集会では殆どの人がマスクを着用しています。新型コロナウィルス対策タスクフォースのファウチ博士らは、「僅かな我慢で大きな安全が得られる」と市民にあらゆる機会を使って呼びかけ続けていますが、ホワイトハウスの協力が得られず思わしい結果は得られていません。  本邦では、PCR検査がそれで、「PCR検査をすれば感染者が増える」「PCR検査をすれば医療崩壊する」などといった本邦独自のエセ医療・エセ科学デマゴギーが蔓延り、PCR検査の人口あたり密度は全世界で最低位に相当することとなりました。当然の結果として感染者の多くが把握できなくなった結果、第二波パンデミックを誘致したと言えます。感染症の制圧過程で、大規模検査を継続的に行い、市中の感染者を根こそぎ洗い出して隔離(多くは自己隔離や宿泊待機となる)、治療し、ウィルスを殲滅する。これは3月初めの時点ですでにBBCやCNNでは、免疫・ワクチン無き感染症対策入門として報じられていた基本中の基本です。  合衆国のマスク拒否運動にはトランプ大統領の言動が大きく関与しています。一方で本邦のPCR検査抑制エセ医療・エセ科学デマゴギーには医療関係者、専門家、医学・科学研究者、医療教育者の関与が極めて大きいことが特徴と言えます。  本連載は、本邦においてなぜ医療関係者、専門家、医学・科学研究者がこのような荒唐無稽のジャパンオリジナル・エセ医療・エセ科学デマゴギーにチョロくはまったのかを6月の新型コロナ感染症シリーズ第11回から解き明かしてきています。

本邦独自エセ医療デマの中心は、ベイズ推定のトホホ誤用(後編)

 前回、偽陰性が大量に発生して感染者が社会の中を闊歩して医療崩壊というまことしやかに流布されてきた説が、ベイズ推定に現実と乖離したPCR検査の「感度」を適用するというトホホ誤用によるデマゴギーであることを指摘しました。今回は、「擬陽性が大量発生して陽性者の殆どは健康な人、検査をすると陽性者の九割は擬陽性で、隔離病棟に放り込まれるぞ!」という恫喝について解説します。  世界の趨勢だけでなく、国内を見てもそのようなことは生じておらず、PCR検査の本質的誤りによる擬陽性は、最近迅速検査による一件が報告されただけです。幸い、医師が自動判定による検査結果に疑問を抱き、再判定の結果、陽性判定は撤回されました。医師の診察、所見はこのようにたいへんに重要です。臨床がすべての基本なのです。7月17日現在の本邦での総検査数(一部抗体検査含む)は、62万件ですので、擬陽性率は実績で2ppm(1ppmは、百万分の一)未満となります。これにより簡単に検出できるヒューマンエラーによる装置操作失敗が原因のものを擬陽性に含めても実績でせいぜい十万分の一の桁未満となりますから、実績での特異度は、99.999+%となります。  この数値は、世界の実績ともだいたいあっています。むしろ自動化率が著しく低く、報じられている映像からは20年は世界に遅れている本邦のPCR検査態勢でこれだけの数値がでたことはたいへんに賞賛すべきことです。なお、世界で使われている全自動化PCR装置は、Made in Japanです。  はて、現在ネットで大暴れしているある啓蒙医によれば、偽陽性率は90%のはずです。ところが実際には数ppmです。これは誤差では無く、全く異なる現象か、大外れの間違いというほかありません。更に言えばゼロと言っていいほどに極めて希な擬陽性*も医師によって誤りが検出されています。 〈*海外には、3種検体を更に6ないし9に分割し、別検査組織での検査、ダブルチェック、トリプルチェックが行われており、ppmオーダである偽陽性率は事実上ゼロとなっている国もある。また、今後の連載で取りあげる予定だが、感染研のSARS-CoV-2 PCR検査マニュアルを読めば、擬陽性デマゴギーはあり得ないと分かる〉  これが前回から指摘してきているベイズ推定に誤った数値を入れたことによる極めて初歩的な誤りに基づいたエセ医療・エセ科学デマゴギーなのです。この誤りは、筆者を含む大勢の学者、医療関係者によって本人達へ散々指摘されているのですが、今のところ誤りが訂正されていません。誤りが指摘される前は単なる「誤り」ですが、大勢が長期間にわたり指摘してきても訂正しなければそれは「嘘」になります。エセ医療・エセ科学デマゴーグの大量発生です。  ここで関連するキーワードと誤ったベイズ推定を再掲します。 【3つのキーワード】 罹患率:ある集団で新たに診断された罹患者(感染者)の数を、その集団のその期間の人口で割った値。 感度:実際に疾病にかかっている人が検査で陽性となる割合で、検査による疾病(感染)発見の能力を表す。値が高いほど良いものと考えるのが基本である。 感度=検査で発見された罹患者(検査陽性者数)/全罹患者(真の陽性者数)     特異度:疾病にかかっていない人が検査で正しく陰性となる割合で、非罹患者(未感染者)を陽性 としない能力を表す。値が高いほど良いものと考える。 特異度=検査で発見された非罹患者(検査陰性者数)/全非罹患者(真の全非感染者数) 〈参考:国立がん研究センター がん情報サービス、スクリーニング検査の効果指標〉

ジャパンオリジナル・エセ医療デマゴギーその2 特異度の操作

 ここで再び、東大保健センターの説明を引用します。 ”以下の仮想例(罹患率10%、感度70%、特異度99%)を想定して、具体的な計算法を記載します。” ”検査を受けた人1000人あたりの罹患者を100人(罹患率10%)とした場合、罹患している人のうち検査で陽性となるのは、100×0.7=70人、罹患していない人で検査が陽性となるのは、900人x(1-0.99)=9人、となります。 この場合、陽性的中率は、70/(70+9)=0.89となります。つまり、検査を受けた人のうち、真の罹患者は、89%ということになります。 この陽性的中率は、罹患率によって変化します。罹患率が低下すると、陽性的中率も低下することになります。PCR検査をより多くの人に施行すると、その集団内での罹患率は低下することが予想されるので、陽性的中率は低下、つまり実際には罹患していないにもかかわらず陽性と判定される人が増加することになります。”  実際には数ppmしかない擬陽性、しかも後日解説しますが、最新の擬陽性例は通常と異なり精度に問題のあるとおもわれる特異例です。それを全集団の9‰(パーミル:千分率)の擬陽性とベイズ想定によって推定したのですから、1000倍を超える過大想定となっています。  そもそも千人の検査集団で9人も擬陽性=健康な人を伝染病感染者と誤判定した場合、100万人では9千人もの誤診が発生します。合衆国では、これまでに4420万件の検査が行われています。これが9‰の擬陽性をだせば、擬陽性は約40万件となります。合衆国の陽性者累計は370万人ですので、全陽性者の一割以上が擬陽性というあり得ないほどに高い擬陽性率がもしも事実なら「報道の国」である合衆国は、大騒ぎになっています。合衆国のメディアは、日本のヘッポコ提灯メディアや、記事の品質が著しく低い一部医療メディアとは根本的に異なります。舐めちゃいけません。  ほんの少しでも現実を見れば、このベイズ推定が完全に誤っていることは自明なのです。なぜ、こんな裏付け無しに変数を定めた根本的に誤ったベイズ推定に全く疑問を持たずにその結論としてのデマゴギーを垂れ流し続けたのかは、全く理解できません。外電・外報、国内外の統計情報なり、感染研の公開情報、合衆国の公開情報に目を通せば、このようなあり得ない推定などポポイのポイなのです。犬も喰わず、猫はまたぎます。  繰り返しますが、現実と3桁ないし4桁も異なる推定は、その場で捨てねばならないのです。何かが完全に誤っています。

実際に計算してみよう

 ここで実際にベイズ推定の計算をしてみましょう。東大・保健センターの説明をもとに筆者もチョー苦手なエクセルワークシートを作りました。筆者はエクセルがことのほか苦手なので、二個あるApple Magic Mouse2が作業中に何度も勢いよく隣の部屋に飛んでゆきました。勿論、着地地点にはフッカフカのマットが敷いてありますのでいまも無事に動作しています。でも声が枯れちゃいました。  変数は基本的に実績値を使います。本邦はジャパンオリジナル検査抑制政策によって統計の精度が低いと考えられ、5月以降の東京都を除く道府県単位の統計など余り意味がありません。後日触れると思いますが、東京の統計にもメイキング(帝国海軍用語で、統計操作)の痕跡が多数見られます。そこで、少しでも精度を上げるために日本全体での統計を用います。  ここでも引き続きOur World in DATAを用います。Our World in DATAの原典情報は、欧州CDCによるものです。  7/18現在で、日本の感染者累計は、24,132名です。検査数総計は、617,049件です。単純計算では、検査陽性率は約4%となります。検査総数には、治療過程での複数回検査が含まれることになりますが、ここでは擬陽性が全検査でどの程度出るかの試算ですので補正はしません。  なお余談ですが、引用した図から見る通り、日本における感染者数累計は、誰がみても再度の指数関数的増加となっていますが、筆者の観察範囲内で「PCR検査をすれば患者が増える」「PCR検査で医療崩壊」とネット等で強硬に主張し続けている、あるネット啓蒙医者の目には「指数関数的増加ではない」とのことで、まさに「ドグマ(教義)は事実をねじ曲げる」です。こんな医者にかかれば命がいくらあっても足りません。これが日本の現実です。合衆国でも大統領が頑として現実を認めずに皆さん困り果てています。2020年7/19には、FOX Newsの老練アンカー、クリス・ウォーレス氏が大統領独占インタビューの場で目に見えて困惑していました。あまりに面白いのでCNNやBBCでもそのFOX Newsによるインタビュー映像が繰り返し報じられています*。 〈*President Trump defends response to COVID crisis in exclusive interview with Chris Wallace 2020/07/19 Fox News〉  医学的事実に関してオルタナ事実を主張されると大規模な犠牲が生じます。現実を見ましょう。  本邦におけるSARS-CoV-2検査実績から、検査陽性率≒罹患率を4%とします。そして総検査数を65万件とします。これで数字は揃いました。  統計の信頼性から有効数字はせいぜい2桁から3桁と考えられますが、ここでは有効数字を厳密には扱いません。理由は簡単で有効数字3桁でも現実の特異度は99.999+%なので有効数字3桁では100%になるためです。PCR検査の様な特異度が5桁代以上の検査では、ベイズ推定において有効数字3~4桁では特異度は100%の他をとリ得ないのです*。従って、無理矢理ベイズ推定を行う以上、「筆者は有効数字の扱いができない。高校からやり直せ。」などと言わないでください。もともと有効数字4桁でもベイズ推定などする必要が無いのです。 〈*縮退プライマーを使ってわざと特異度を60%程度まで下げることもある。これはPCR法の極めて優れた利用法で、プライマーの設計や処理の調整で類似の性質を持つウィルスや細菌を一網打尽に検出するという利用法である。PCR法の特異度は、100%が基本であるが、意図的に60%程度まで下げることもできるのである。勿論、SARS-CoV-2検出のPCR法は、特異度100%として設計されており、FDA(合衆国食品医薬品局)や感染研が評価結果や標準化マニュアル等を公開している。PCR法は、過去30年、分子生物学を飛躍的に発展させた素晴らしい技術である〉  では、PCR検査有害論で流布されてきた感度70%特異度99%の場合と、文献値と日本の実績から算出した二検体検査の合成感度90-95%を92%とし、特異度を実績から低値(悪い値)をとって99.999%とします。感度については、複数回検査が行われていますので本来は100%で良いですが、完全な独立事象と仮定して悪い値92%をとります。  実績値と文献値から導いたベイズ推定の結果は、当たり前ですが概ね妥当です。真の陽性者23,920人に対して偽陽性者6名ですが、医師の判断や、エラー検知の仕組みや手順によって誤検知を十分に排除できる範囲ですし、実際にそうされています。  偽陰性については、やはり医師の診断、諸外国では当たり前にやっている複数回検査、無症状接触者の14日間自己隔離(ファウチ博士などもホワイトハウス内での接触履歴があり、上院公聴会に揃って遠隔参加という実例が多数ある*)を行えば見逃しの可能性は殆ど無くなります。 〈*ファウチ所長も限定的な隔離措置、「低リスク」の接触で 2020/05/10 CNN/結局ファウチ博士を含め証言者は4人が全員遠隔参加、議会側も委員長他多数が遠隔参加となった。遠隔参加の委員長の後ろで大きな愛犬がグゥグゥ寝ていたため筆者は終盤聞き取り不能となってしまった。報道によれば、犬の名前はRufusで、話題の”犬”となった〉  なお、プロトコール上は3検体、9検査という話もあり、実際に現在は3検体が標準ですので、この場合は感度99.9%以上となり偽陰性も26人以下とほぼ生じないことになります。いずれにせよ医師の診断と接触者については少なくとも2週間の自己隔離という基本に則った運用がたいへんに重要となります。PCR検査は、デウス・エクス・マシーナ(機械仕掛けの神)ではなく、あくまで防疫・医療というシステムの中の一つの重要な道具なのです。  次に東大保健センターの公開しているベイズ推定を含め、最もよく見かける変数で試算したベイズ推定を見ましょう。感度70% 特異度99%です。  真の陽性者18,200人に対して偽陽性者6,240名となり陽性的中率は74%となります。極めて精度が低く、医師の診断や、誤り検知の仕組みでもどうにもなりません。  偽陰性についても7,800人となり、罹患者の30%を見逃します。もしもこれが最悪期のイタリアやニューヨーク市だったら、その陽性率の高さ、絶対数の多さから、見逃し感染者が市中で大勢死んでいたことでしょう。  勿論そんなことは生じておらず、米欧、韓国、中国他全世界の実例からこのベイズ推定は誤りであることが自明です。  次にある啓蒙医者がSNSなどで主張するベイズ推定の変数により試算してみましょう。感度70% 特異度90%です。  真の陽性者18,200人に対して偽陽性者62,400名となり陽性的中率は23%となります。もはや検査の体をなしていません。  偽陰性は7,800人とかわりません。  明らかにこのベイズ推定は誤りです。こんなベイズ推定の変数、感度70% 特異度90%を主張している人は、全く何も知らないし、調べても居ないたいへんに不誠実な人物であることが自明となります。  最後にネットで見かける自称医者などがSNSなどで主張するベイズ推定の変数により試算してみましょう。感度70% 特異度60%です。  真の陽性者18,200人に対して偽陽性者249,600名となり陽性的中率は7%となります。偽陰性は7,800人とかわりません。コメントする価値すらありません。  このベイズ推定はゴミです。

自身が藁人形になった藁人形論者

 さてここで東大保健センターの公開する根本的に誤っているベイス推定を保守的な正しい値で書き換えましょう。  実のところ、巷に溢れるこの程度の2×2マスで行われているベイズ推定に有効数字4桁以上の事象を扱えるとは筆者にはとても考えられません。変数そのものの精度がせいぜい有効数字3桁程度までしか期待できないからです。そしてSARS-CoV-2にPCR検査について 99%とか99.9%といった適当な特異度を入れて平然としている人は、有効数字が頭の中からスッコ抜けています。中学数学と中学理科の教科書を読みましょう。  PCR検査の様な高精度の検査をベイズ推定で扱う場合、特異度は、中学生でも知っている数学用語「一意に定まる」に該当し、100%で扱うほかありません。あるウィルス学者と感染症学者が、盛んに特異度99%を主張しますが、その人物らの発言を見ていると実際には99.95%を超える特異度があることを知っているようです。この場合、「仮に」特異度を99%とするというのは嘘です。有効数字からこの場合は100%以外を取り得ません。99.9%でも嘘です。やはり100%以外とリ得ません。これは中学生の数学・理科問題なのです。  このオモシロ学者は、特異度は99%でも99.9%でも99.99%でも違いは無い、この検査で擬陽性が出ること自体が問題なのだと最近主張をしているようですが、とんでもありません。感度92%で特異度を90%,99%,99.9%,99.99%,99.999%としたときの擬陽性の数を列挙します。変数は、日本の実績値から7月末を外挿して母集団65万人、罹患率4%とします。 全感染者数26,000人 擬陽性者数 90% 62,400人 99% 6,240人 99.9% 624人 99.99% 62人 99.999% 6人 99.9999% 1人  これで「違いは無い」というのはとても医学研究者、医師の言う言葉ではありません。またこの方々は、存在するか分からない「ゼロリスク論者」を自分で創り出し、激しく批判することをしばしば論拠と芸風にしていますが、なぜかPCR検査には「ゼロリスク」を求めています。まさに「ミイラ取りがミイラになる」のでは無く「藁人形論者が藁人形になった」わけで、筆者は腹を抱えて笑いました。鏡を見ましょう。

おわりに

 ここまで、本邦だけで流布されているベイズ推定を誤用したエセ医療・エセ科学デマゴギーについてその誤りを一つ一つ解明してきました。嘘は一秒で飛び出しますが、その否定はたいへんな時間とコストがかかります。このベイズ推定を誤用したエセ医療・エセ科学デマゴギーには、情けないことに一部の生物学者や物理学者、数学者までチョロく欺されたようですが、ようするに本来は99.999+%という桁数の特異度を99%と有効数字を無視して乱暴に丸めたことにより、全く異なる現象にしてしまうペテンなのです。目を覚ましましょう。  これは、過去20年間をこえて、とくに数学者、物理学者が激しく批判してきた円周率=3問題*と本質的には変わりません。 〈*問題化自体は誤解によるものという指摘がある〉  小数の概念がない小学校低学年には円周率は3で教えても仕方ありませんが、こともあろうに医学研究者や医師、科学者が、声を揃えて「円周率は3だ」と主張し、「3.14も3も変わらない」と強弁していると喩えることができるのがこの根本的に誤ったベイズ推定による「ジャパンオリジナルPCR検査抑制エセ医療・エセ科学デマゴギー」の核心と言えます。  さて本連載は、全く医学は専門外の野良学者が、「ジャパンオリジナルPCR検査抑制エセ医療・エセ科学デマゴギー」の氾濫を深く憂慮して記述してきました。従って医学用語の使い方には不安があります。しかし3桁も4桁も5桁も誤ったベイズ推定についてその誤りを指摘するには問題ないと思います。  次回は、PCR検査の基本から、なぜ高々有効数字3~4桁程度では特異度を一意に定まる=100%として扱えるのかを簡単に説明し、「ジャパンオリジナルPCR検査抑制エセ医療・エセ科学デマゴギー」に含まれる様々な誤り、嘘について述べます。また、検査数62万件で遂に発生した1件の擬陽性についても簡単に解説できればと考えています。  本件は、間違いなく後世、世界の感染症学者の教科書に悪事例として採用される、エセ医療・エセ科学によって汚染されたが故の大不祥事なのです。 ◆コロラド博士の「私はこの分野は専門外なのですが」新型コロナ感染症シリーズ17 <文/牧田寛> 【牧田寛】 Twitter ID:@BB45_Colorado まきた ひろし●著述家・工学博士。徳島大学助手を経て高知工科大学助教、元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授。勤務先大学との関係が著しく悪化し心身を痛めた後解雇。1年半の沈黙の後著述家として再起。本来の専門は、分子反応論、錯体化学、鉱物化学、ワイドギャップ半導体だが、原子力及び核、軍事については、独自に調査・取材を進めてきた。原発問題について、そして2020年4月からは新型コロナウィルス・パンデミックについてのメルマガ「コロラド博士メルマガ(定期便)」好評配信中

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