2019年4月23日火曜日

新名神全面開通控え…バブル期上回る人手不足 生活に影落とす

Source:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190419-00000010-kyt-soci
4/19(金) 
 新名神高速道路の全面開通を2023年度に控え、開発が進む城陽市や京都府久御山町などの地域がバブル期を上回る人手不足に陥っている。運転士不足で民間バス会社は今春、大幅減便に踏み切り、同市では平成に入って初めて「待機児童」が発生。生活にくっきりと影を落とし始め、各市町議選の候補者は訴えに知恵を絞る。
 ■細る住民の「足」
 「駅までの交通手段を確保します」。鉄道の駅がない同町。16日告示された町議選の候補者は、出発式でマイクを握ると、力強く公約した。他の候補もコミュニティーバス復活や住民主体の交通網づくり、路線バス充実などを訴え、公共交通の在り方が今町議選の重要な争点となった。
 きっかけの一つは、主に宇治、城陽、京田辺、久御山、宇治田原の5市町を走る京都京阪バス(八幡市)が6日に踏み切った、かつてない規模の減便。始発は最大約1時間遅く、終発は最大約1時間半早くなり、平日午後10時台に出発する便はほぼなくなった。
 車に乗らない人にとって、同町での移動は、同バスと町の予約制乗り合いタクシーが頼みの綱。細る「足」に、住民の危機感は募る。「いよいよ何とか考えんといかん」と冒頭の候補者は言う。
 宇治市議選の候補者も「買い物や通院にも不便な地域が増えている。デマンドタクシー導入など新しい公共交通の仕組みづくりが必要だ」と訴える。
 バス減便の背景には、人手不足がある。同社の運転士は現在141人。7年で50人以上減った。採用広告費増加や定年延長も効果はなく、残業が増えた。
 運行補助を示し維持を求める自治体もあったが、断った。「人がおらず無理。運転士の健康は安全に直結する。一企業ではどうしようもない」と槻木章管理部長は話す。
 人手不足はバス会社だけにとどまらない。新名神の全線開通で京阪神や中部圏も含めた交通の要衝となる京都府南部では、企業の集積が急速に進む。
 宇治、城陽、久御山、宇治田原の4市町を管轄するハローワーク宇治の有効求人倍率は昨年12月に2・24倍(原数値)と過去最高に。2月も2・15倍と府内全体の1・58倍(季節調整値)を大きく上回り、東京都以上に深刻だ。製造業を中心に1600以上の事業所がある久御山町は8・52倍(原数値)に達した。
 運転士不足で通勤の便が悪くなり、雇用確保のハードルが高まる悪循環。通勤にタクシー代を支給する事業所も出てきた。
 ■平成で初の待機児童
 昨年、新名神インターチェンジ周辺の新市街地に事業所や店舗が増えた城陽市。住宅街に立ったある候補は「保育園新設の早期実現を」と訴えた。「保育士の増員や待遇改善も市に働きかけたい」と話す。
 地元企業の求人難を受け、市は商工会議所やハローワークと17年度から企業説明会を開催し、求職者の開拓に力を注いできた。一方、1日時点で市内10保育園に入れない「入所保留」が101人発生した。特定園を希望しなくても入園できない「待機児童」も含まれている。
 「働きたいのに、預ける場所がない」。別の候補の元には、子どもの入園希望がかなわなかった母親からそんな相談が寄せられる。少なくとも30年以上なかった事態に、市は園新設も検討。市全体で定数枠を増やす方針を打ち出す。
 ■「共生」は論戦低調
 人手不足打開へ、外国人労働者を受け入れる企業も増えている。北岡一星さん(22)=久御山町=が3月まで働いた町内の食品工場もそうだった。ワーキングホリデーや技能実習生の資格で働くベトナム人やネパール人、台湾人がみるみる増えた。
 一緒にボウリングを楽しみ、ベトナム料理を振る舞ってもらう仲間だったが、長時間労働で当日欠勤も。「人がおらず回らない」と上司に頼まれ、急きょ休日を返上して職場へ向かうこともたびたび。厳しさを増す労働環境に、日本人従業員は辞めていった。
 肩を傷め、職場への愛着と慰留にも関わらず転職を決めた今、振り返る。「重い物を持つ時に助け合えるほど人がいたら、肩を傷めずに済んだかもしれない」
 1日の改正入管難民法施行で外国人労働者の受け入れ拡大を検討する企業は少なくない。宇治市、城陽市、久御山町の商議所と商工会が1月に地元企業・事業所を対象に行った調査では、回答した372社の約1割が外国人労働者を「雇用している」、約2割が「雇用予定・検討中」とした。
 地域で暮らす外国人は増えているが、日本語教育や子どもの教育など、外国から多様な人を社会に迎える態勢は整っていない。共生社会をどう築くのか。ビラで訴える候補はごく一部いるものの、論戦は低調だ。

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