Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/df0ac0649f3b574f5122c77df77a40235fac2793
海外旅行を中心に、各地域の魅力を深掘りしたツアーを提供する「株式会社ワールド航空サービス」(東京都千代田区)。2023年に事業を引き継いだ菊間陽介代表取締役社長(40)は、海外旅行だけでなく日本人向けの国内ツアーにも注力。コロナ禍の2022年3月期には16億円までに減少した売上高を、2025年には71億円まで引き上げた。留学や現地の旅行会社での就業経験を持つ菊間氏に、日本と海外における働き方の違いや入社から代表取締役社長就任までの経緯を聞いた。 【動画】星野リゾートはこう変えた 創業家4代目の構造改革
◆子供の頃から世界を身近に感じた家庭環境
――ワールド航空サービスの会社概要や歴史について教えてください。 私の祖父・菊間利通が1971年に創業し、今年で55周年を迎えます。 添乗員が同行するパッケージ旅行を販売しており、有名な観光地を訪れる旅だけでなく、その地域の魅力や文化と繋がれるようなツアーを展開しています。 コロナ禍の少し前から、海外旅行で培った「文化を深掘りする」という理念を日本国内にも展開しています。 地域の魅力や日本人なら知っておきたい地方の良さだけでなく、受け継がれてきた伝統や文化を行程に組み込むことによって、より旅に深みが増せるようなツアーの企画を行っています。 また、基本的に当社で独自の教育を受けた添乗員がツアーへ同行するのも特徴の1つです。 旅行は旅の文化における一つの作品だと捉えています。 添乗員の能力によって旅の印象が大きく変わるため、当社独自の添乗員教育に力を入れています。 ――菊間社長の生い立ち、それから幼少期や学生時代に家業をどのように捉えていたか教えてください。 私は末っ子長男で、小さい頃はおとなしい子供で、運動とは程遠い生活をしていました。 しかし、中学生時代にひょんなことからラグビー部へ入部し、生活が大きく変わっていきました。 そこで、自分の人格や性格などの土台が培われたように感じています。 大学卒業後は留学して、英国で大学院を卒業しました。 その後、現地の日系旅行会社に就職してから当社へ入社し、今にいたります。 子どもの頃から、創業者である祖父や2代目社長の父の姿を見て、なんとなく将来は自分がこのような会社をやっていくのだろうという気持ちがありました。 父は家に海外の人を招くことが多くありました。 ターバンを巻いたインドの方が来ることもあり、その姿を見て当時は衝撃的でした。 幼い頃にこのような経験ができたり、海外の料理を食べる機会もあったりしたことで、家業について自然と関心を持っていました。
◆違和感があった日本的な働き方や価値観
――入社の経緯を教えてください。 留学後、現地の旅行会社に就職して2年間働きました。 その後、日本へ帰り、そのまま家業に入りました。 もともと父は、私が留学を終えた時点ですぐに帰ってくるものだと考えていたようです。 ただ、私としては家業へ入る前に外で働く機会が欲しいと考えていました。 海外で働ける機会は、めったにないからです。 日本へ帰るタイミングで、別の会社へ行く選択肢もありました。 しかし、当時すでに27歳であり、ここからまた外で働くと当社の社風に馴染めなくなるのではという考えもあり入社を決めました。 ――入社直後に感じた社内の良い点を教えてください。 入社直後に感じた良い点は、旅の哲学がはっきりと確立されていたことです。 有名な観光地を訪れるだけでなく、文化や人々の暮らしをどのように見せるかに焦点を置いてツアーを企画しているところに惹かれました。 また、社員は素敵な方が多く、本当に旅が大好きな方ばかりだと感じました。 手を抜く人もおらず、シンプルに仕事をしっかりする人が多かったので、職人集団のように感じましたね。 ――反対に、改善すべき点はどこだと感じましたか。 働き方に関しては、見直す余地があるのではと感じました。 私は英国で2年間働いていましたが、日本と海外では働き方における価値観の違いがあります。 当時は東日本大震災が起きた直後でした。 家族との時間などプライベートの重要性が一層感じられ始めたタイミングでした。 もちろん、社会環境や日本人の働き方の感覚もあるので、これまでの環境が決して間違っていたとは思いません。 日本の会社としての働き方に対する考えも当然あります。 そのため、片方を否定するのではなく、時代の変化に合わせた働き方があってもいいのではと感じました。
◆コロナ禍からの社長就任
――日本と英国で働き方における価値観の違いについて、驚いたエピソードがあれば教えてください。 英国の会社へ入社して驚いたのが、マネージャークラスの人たちが「今日は子供の授業参観だから帰る」と言って、12時ぐらいに退社したことです。 2010年当時は「仕事はいいの?」「しかも上司だよね?」などと、感じたことを覚えています。 今となっては、日本でも驚くことではないかもしれません。 一方で、英国では当時からそれだけ家族は大事であり、仕事とプライベートのバランスを取るという考え方や感覚がありました。 退勤時も、終業時間になったらパッと帰っていく感じでしたね。 また、上司と部下の関係性においても緊張感というよりも、非常にフラットな感覚でした。 上司とは歳が離れていたものの、当時若かった私に対してもファーストネームで呼び合うことがありました。 上司と部下の関係で飲みに行くと、その場で「もう俺の役割は終わったから」と、非常にフラットな接し方をされたので日本とは違うなと感じた部分です。 職場を離れれば、立場を超えて普通の人と人とのやりとりだという感覚だったので、私は当時の関係性や価値観が結構好きでしたね。 ――社長を引き継ぐことになった経緯を教えてください。 新型コロナウイルス感染症で旅行業界全体が大きなダメージを受けて、次の世代に新しい風を吹かせるべきという経営判断があったものと理解しています。 2023年の5月に、新型コロナウイルス感染症が2類感染症から5類感染症に移行したタイミングで、旅行業界も新たな局面を迎えました。 業界全体が数多くの困難に直面していたことで、さまざまなタイミングが重なり私へ話があったのではと思います。 ――代表取締役社長に就任した当時の心境を教えてください。 不安はほとんどありませんでした。 社員の方とは現場でずっと一緒にやってきたので、年上の方も年下の方も距離が近かったです。 いがみ合うこともまったくありませんでしたので、仮に私の立場が変わっても一生懸命やってもらえるなと感じていました。 日本の職場環境は、どんどん変わってきています。 私自身、時代の流れに合わせて変えるべきところは変えていかなければならないと考えていました。 ですので、社長へ就任するにあたって、職場環境と実務のバランスをとる難しさに悩まされながら、日々精進しております。
■プロフィール
株式会社ワールド航空サービス 代表取締役社長 菊間 陽介 氏 1985年、東京都生まれ。一橋大学大学院経営管理研究科修士課程(ホスピタリティ・マネジメント)修了。立教大学観光学部卒業後、英国サリー大学大学院修士課程(観光学)を修了し、現地の旅行会社で2年間勤務。帰国後、2013年に株式会社ワールド航空サービスへ入社し、2023年に代表取締役社長へ着任。主力事業となる海外・国内ツアー、ネパールでのホテル事業に加えて、発展途上国の子供たちに対する自立活動支援など、社会貢献活動にも広く取り組んでいる。
(取材・文/長島啓太)




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