Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/b09e61049a4f467535e5718fc343897e9ca4f146
世界各地で異常気象が相次ぎ、ヒマラヤ山脈では近年、温暖化が影響したとみられる大規模な災害が多発している。8月に水害に見舞われたインドの集落を訪ねた。 【写真】インドネシア西スマトラ州で、洪水の被災地でがれきに埋まったバイクを運び出す地元住民 雪に閉ざされる前の11月、インド北部ウッタラカンド州にある集落「ダラリ」に入った。州都デヘラドゥンから車でさらに約8時間。6千メートル級の山々に囲まれたガンジス川源流域のこの地を8月5日、濁流が襲った。地元当局によると住民ら4人が死亡し、今も52人が行方不明だという。 災害から3カ月以上経っても、復旧は進んでいない。急斜面を走る川の両端に、柱や壁がひしゃげた家々が十数軒残っている。周辺の宿や商店は、2~3階まで土砂に埋もれていた。近くに泥まみれの子どものサンダルが転がっていた。 「家も牛も、農園も。全てを失った」。リンゴ農家のスビール・シンさん(60)はそう話す。 数日前から集落では雨が続き、その日も朝から雨が降り続いていたという。午後1時過ぎ、何かが爆発したような音が響いた。ダラリを見渡せる隣集落のスーリヤ・プラカシュさん(40)が音のした方に目を向けると、濁流が土砂を巻き込んで川を下っていた。 「鉄砲水は時々起きる。だが、今回は見たことのない規模だった」 鋭い指笛の音が谷に響いた。災害や緊急時に、周囲に危険を知らせる集落の決まりごとだ。 バルウィンダル・シンさん(42)は自身が経営する宿で指笛を聞いた。直後、大量の水と土砂が流れ込んできた。階段を屋上まで駆け上がったが、建物は少しずつ押し流され始めた。 「全てが、20秒ほどの間に起きた。どうしようもなかった」 住民によると、3時間ほどの間に複数回、土砂が斜面から流れ込んできたという。行方不明者の大半は、リンゴ農場に出稼ぎに来ていたネパール人らだった。生存者の多くも仕事や家を失い、暮らしを破壊された。被災者に健康支援を提供するNGOで活動する、医師のサウラブさん(28)は「多くの人が心の問題を抱えている」と言う。 計測手段の不足から原因は分かっていないが、地元メディアのタイムズ・オブ・インディアは今回の水害はウッタラカンド州でモンスーン期に急増している異常気象の一つだとして、「気候変動の影響への懸念が高まっている」と報じた。 国の調査機関「インド地質調査所」は11月発表の論文で、ダラリを襲った災害は、高度4600メートル付近で起きた土砂崩れが引き金だった可能性を指摘した。地表の温度や雪解け水の量などの数値から、高地で温暖化が進んでいるとした上で、そこに数日間降り続いた雨が直接の原因だとした。 州幹部は取材に、気候変動が影響した可能性が「濃厚だ」とし、「温暖化がヒマラヤにニューノーマル(新たな常態)をもたらしている」と明かした。
朝日新聞社

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