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RKB毎日放送
就労や留学で日本に滞在している在留外国人の数は、395万6619人(今年6月末)と過去最多となりました。 【画像で見る】在留外国人のために教材を制作 授業を行う取り組み また、国連が「妊娠出産が可能」としている15歳から49歳の女性は128万7千人あまり。 日本では今、環境の違いや誤った情報で誰にも相談できないまま1人で出産する外国人の「孤立出産」が後を絶ちません。 このような事態を未然に防ごうと、日本語教師たちが、教材を制作し授業を行う取り組みを始めました。 ■「皆さんの国でコンドームはいくらですか?」「無料です」 「まだ子供を産みたくなかったら恋人と一緒によく避妊について話をしましょう」 福岡市の短期大学で講義を受けている留学生たち。 ネパールやスリランカ、ベトナムからやってきました。 この日行われたのは、性や妊娠・出産に関する健康と権利「リプロダクティブヘルス/ライツ」をテーマにした講義です。 教師 「どんな避妊の方法がありますか。教科書は48ページ」 「1つ目はコンドームを使います。これを使うのは男の人です。女の人が使うのはピルと緊急避妊薬」 教師「皆さんの国ではどうですか。コンドームはいくらですか?」 生徒「無料です。無料でもらうことができる。病院で」 教師「ピルは日本ではどこで買うことができますか」 生徒「病院」 教師「病院はどんな病院?」 生徒「薬局?」 教師「薬局じゃなくて・・何科?」 生徒「産婦人科」 ■受けられるサービスに違い「孤立出産は誰にでも起こり得ること」 生まれ育った国と日本とでは性や妊娠・出産にまつわる制度、受けられるサービスなどに違いがあり、母国の常識が日本で通じないことも多々あります。 生徒たちが使う教材を制作した1人、西日本短期大学の高向有理教授です。 教材を制作しようと思った背景に国内で相次ぐ技能実習生の孤立出産をあげます。 西日本短期大学 高向有理 教授 「技能実習生や留学生の若い人が孤立出産をして結果、死産になると保護されるのではなく罪に問われるおそれがあるということで。これはもしかしたら私が教えている若者たち誰にでも起こりうることだなと思いました」
■罪に問われた女性「妊娠したら帰国させられる」 福岡市でも去年2月、交際相手の家で子供を死産し、ごみ箱に遺棄したとしてベトナム人技能実習生のグエン・テイ・グエット被告が死体遺棄の罪に問われています。 福岡高裁は、懲役1年6か月・執行猶予3年の有罪判決を言い渡しました。 これまでの裁判の中でグエット被告は、 「遺棄していません」 「妊娠したら帰国させられる。とても怖くて誰にも相談できなかった」 などと話し、無罪を訴えてきました。 グエン・テイ・グエット被告 「当時病院に行きたかったのですが行けませんでした。判決を受け入れられません。無実になるまで最後まで訴えます」 ■留置所で受けた衝撃「産後すぐの状態で・・・」 高向教授は、グエット被告が逮捕された直後に面会、現在も弁護団とともに支援者として裁判を傍聴し続けています。 西日本短期大学 高向有理 教授 「拘束された時に寒いから着るものを持っていきました。産後すぐの状態でこんなところに入れられているんだ、普通だったら病院とか家でゆっくり休養している人だと思うんですけど、拘留されているところに行ったことで現実味を帯びたというか。きちんと日本に来る前、来日したすぐの段階から情報提供していく必要があるなと思いました」 ■生む時、産まない時、細かく記載した教材を制作 高向教授たちが制作した教材には、日本で妊娠したときにどうすればよいのか、産むとき、そして産まないときはどんな方法があるのか、マニュアルのように細かく記載。 イラストを使って分かりやすく工夫されているほか、「考えさせる」構成になっています。 ■ネパールから来日した22歳の女性 去年10月にネパールから日本に留学してきたパルさん(22)です。 アルバイトをしながら福岡市内のアパートで暮らしています。 ネパールから来日 パルさん 「10年くらい日本で就職するつもりですけど、その後は国に帰って自分の小さなお店を開きたいです。あと5年後くらい27歳で結婚したい。多分彼氏ができたら」
■授業受け、起きた気持ちの変化 今後日本での結婚・出産も考えているというパルさん、笑顔でライフプランについて話をしていますが、授業を受ける前は間違った情報を信じていました。 ネパールから来日 パルさん 「日本に来た時はいろいろな嘘の情報を聞きました。『妊娠したら国に帰れ』ということを私も信じていました。今はもう困らないです、相談したり一緒に(病院に)行ったらいい結果になると思いますから安心です」 ■「性教育ではなく”人権教育”だと思っています」 授業を担当した 西日本短期大学 志田華奈子 助教 「日本人も外国人も関係なく、孤立出産ののち子供の遺棄する事件が絶えないということに問題意識を持っています。そうならないようにどういうことを教えていくか課題にしています。より具体的により正しい情報を教えていきたいなと常々思っています」 目標と夢を持って日本にやってくる留学生や技能実習生たち。 誰もが持つ権利を正しく理解すること、また受け入れる側も正しい情報を提供することが求められています。 西日本短期大学 高向有理 教授 「技能実習生とか留学生、日本に来る人たちは基本的に18歳以上の成人なので、いわゆる日本人がイメージする性教育ではなくて、必要な情報を提供する、人権教育だと思っています。自分の気持ち、周りの人の気持ちを大事にして、もし理不尽な扱いを受けた時にはどのような行動をとるか、目撃した時にどのように手伝うかといったことを総合的に学べることが必要かなと思います」 ■日本人への性教育、今のままでいいの? 授業では外国人が妊娠した場合、4つの選択肢があると説明しています。 (1) 自分たちで育てる (2) 母国の家族に育ててもらう (3) 特別養子縁組 (4) 産まない(中絶) しかし留学生や技能実習生によると、SNSなどには「妊娠してはいけない。すぐに帰国」などと誤った情報があふれています。 このため、望まない妊娠に至った時、「帰国させられるかもしれない」との理由から誰にも相談できない状況がうまれています。 孤立出産は、外国人だけではなく、日本人にも起きています。 孤立出産を未然に防ぐために、日本人に対する性教育の見直しも同時に考えなければいけません。 RKB毎日放送 記者 下濱美有
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