Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/f11820e9b81353bd63fea8a8f61158a88b256dbe
10月に閉幕した大阪・関西万博の跡地利用では、大屋根「リング」の一部を保存し、大阪市が周辺を含めて「市営公園」とすることで関係者が合意している。今後は残されたレガシー(遺産)を次世代にどう継承していくかが課題となる。何かヒントがないかと、1990年開催の「国際花と緑の博覧会」(花博)の会場だった花博記念公園鶴見緑地(大阪市鶴見区)を訪れた。 【写真で】花博会場跡地は今どうなっている? 花博は規模の小さい「認定博(旧特別博)」だったが、半年間の会期中に約2300万人が来場し、当時の特別博の動員記録を塗り替えた。期間中、国や国際機関、自治体などの参加団体がそれぞれの文化や造園技術を展示していたのが「国際庭園」だ。閉幕後はメインパビリオンの「咲くやこの花館」やランドマーク的展望塔の「いのちの塔」などとともに博覧会のレガシーとして残された。 60の庭園だった区画は現在も公園内に残っている。ただ、維持管理できない建造物は撤去され、ほぼ更地のようになってしまった区画も点在する。また中国庭園など建物の老朽化が進み危険なため立ち入り禁止になっている区画もある。一時は歩道なども荒廃し「廃墟(はいきょ)のようだ」と言われることもあったという。 独特な雰囲気を求めて、2010年ごろから週末になると全国から多くのコスプレイヤーたちが集まりにぎわい始めた。しかし、メークのため屋内施設やトイレを占拠したり、屋外で着替えをしたりする者が増え、一般の利用客とトラブルになることもあった。14年からは大阪観光局や区総務課、当時の公園事務所が主体となり、10分ほどの講習を受講した人を対象に、低料金の参加費で更衣室やクロークが利用できる仕組みを作った。現在も「鶴見緑地コスプレDay(つるコス)」として年に12日間ほど開催されており、トラブルはほとんどないという。 一昨年からの2度にわたる大規模改修工事で多くの区画や散策路が整備され、「廃墟感」はなくなりつつある。週末には散策の途中で弁当を食べる家族連れや、異国情緒を求めて犬などペットの写真を撮りにきた人たちの姿が多く見られる。ラジオ体操参加のためほぼ毎日公園を訪れるという高橋やゑみさん(78)は「庭園は季節によって咲く花が変わるので何度歩いても飽きない。35年通っているのに、この間歩いていなかった通路を見つけた。来るたびに発見がある」と話した。 庭園を整備する大阪市公園緑化部は、シンボル性が高く良好な状態を保てる4割程度の区画を残し、あとは形態や規模を見直して他用途への転換も視野に入れている。 中国庭園や同じく建物の老朽化が進むネパール庭園は残す方針だが、補修費用のめどがたたないため、立ち入り禁止の状態が今後も続くという。「いのちの塔」も10年以降、閉鎖されたままだ。レガシーを継承していくことの難しさを感じさせられた。【写真・文 西村剛】

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