Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/177a6db220dd651e2b4ae46ebe27245277f1f408
2026年度から所得制限を設けずに実施する高校授業料の無償化を巡り、自民党、日本維新の会、公明党の3党がこれまで支援してきた留学生や外国人学校を除外する方針を示し、日本人と外国人を線引きしようとしている。定住が見込めるかどうかでも金額を変えるため、同じクラスに支援額が異なる生徒が混在することになる。専門家は「排外主義を助長している」と指摘する。 【図】新たな高校授業料無償化のイメージ 「私はネパールから来ました」。東京都内のマンションの一室で11月下旬、日本人女性講師の質問に、ネパール人女子中学生がたどたどしい日本語でこう答えた。日本語などを指導するこの教室は中国やバングラデシュなどの数十人の小中学生らに対し高校入試向けの勉強も教えている。 運営団体の代表を務める男性(69)によると、子どもたちの大半は当初、日本語を話せない状態。言葉の壁に加え、一部は経済的な問題も抱えている。男性は、授業料に相当する就学支援金の額で日本人との間に差がつけば、外国人の学びの選択肢が狭まり、支援が必要と訴える。 現在詳細を検討中の新制度では、26年度から就学支援金の所得制限を撤廃し、上限額を引き上げる見通し。私立全日制の場合、日本人と定住が見込まれる外国人には最大45万7千円を支給する一方、外国人学校と留学生は制度から除外。定住が見込まれず、所得が年910万円超の場合も支援されない。対象でも支給額は日本人より最大約34万円少なくなる。 男性は「(教材費など)授業料以外の費用は都立高でも20万円以上かかる。私立はさらにお金がかかる」とし、物価高の中、定住が見込まれない外国人は私立を敬遠しかねないと予測する。 ■低い進学率 外国人の高校進学率は低い。群馬大の新藤慶教授(教育社会学)は「中学をドロップアウトする子どもが一定数いる」とみる。文部科学省の学校基本調査などを基にした独自試算では、12~22年度の進学率は54~69%にとどまるという。 新藤教授は高校に進学しない子どもたちは外国人学校に移ったり、就学しなかったりしていると推測。外国人学校を除外すれば、支援対象の日本の公立高に移る可能性があると予測し「公立高では日本語指導を必要とする生徒がさらに増え、負担が重くなるのではないか」と話す。 日本人と外国人の線引きは、政府が目指すグローバル人材を誘致する取り組みにも水を差しかねない。政府の「金融・資産運用特区」に選ばれた北海道と札幌市の「GX(グリーントランスフォーメーション)特区」はインターナショナルスクールの誘致を目指している。札幌市は「状況を注視している」(担当者)という。 ■「定住」が左右 対象に含まれても、定住が見込まれるかどうかが支援金額を左右する。「定住」の判断基準はどこにあるのだろうか。 例えば親の都合で来日し「家族滞在」の資格の場合、幼少期から日本で生活していることや、卒業後に日本で働く意思があることなどが条件となる見通し。自民の実務者である柴山昌彦元文科相は「きちんと面談や調査をする必要がある」と語る。定住するかどうかは本人の意思では決められず、親や本人の仕事の都合に左右される。 全ての子どもに教育の機会を与えるよう定めた国際人権規約や子どもの権利条約にのっとり、これまで15年間にわたり国籍に関係なく支援し続けてきた日本の無償化制度をなぜ今、変えるのか。 文科省によると、米国や英国、フランス、中国は高校に相当する私立学校で外国人生徒を支援していない。柴山氏は「日本が海外の方を支援しないのはお互いさまだ」とし「無償にすると、想定以上の海外の方が加速的に流入して何らかの問題が起きる」と訴える。 ■「世論に迎合」 人手不足で外国人の受け入れを拡大する半面、7月の参院選で「日本人ファースト」を掲げる参政党が躍進したのを機に、外国人の規制強化に力を入れる政府・自民の矛盾。白梅学園大学長の小玉重夫教授(教育学)は「排外主義的な世論が強まる中、外国人を恣意(しい)的に対象から除外しており、世論に迎合したとみられても仕方がない」と批判する。 教室に国籍という新たな線引きをもたらすのは、いわば政治の都合だ。国士舘大の鈴木江理子教授(移民政策)は、こう言い切った。「『日本人と外国人は対等ではない』というメッセージを打ち出している。ともに学ぶ生徒の間に線を引くようなことをしてはならない」

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