■外国人問題の根本は移民政策をどうするか?
高市政権は、2026年1月に、外国人政策に関する基本的な方向性を取りまとめるという。すでに自民党は、12月24日の外国人政策本部の会合で、政府に出す外国人政策をめぐる提言の内容を協議し、不動産規制、税や保険料の未納問題、永住や帰化要件の厳格化などが取り上げられた。
しかしこれらは、在留外国人が増えてトラブルが多くなったという問題の一部に過ぎない。問題の根本は、日本が国として移民政策をどうするかにある。
これまで、政府は公式には移民受け入れを認めず、外国人の受け入れは、あくまで労働力の補完や高度人材の獲得が目的と説明してきた。
この状況を、ビザや移民条件の厳格化だけで続けていくのか、それとも転換するのか、明確な方針は示されていない。現時点では、部分的な規制強化と、自民と維新との連立覚書に基づき、総量規制の是非が議論されているだけだ。
■単純労働者と高度人材の両者とも移民、定住へ
出入国管理庁によると、2025年6月末時点の在留外国人数は395万6619人で、過去最高を記録している。2019年に開始された特定技能制度により、外国人労働者の受入れが加速したことが大きな要因とされる。もし、このペースで外国人が増え続けると、2040年ごろには外国人比率が全人口の10%に達するという。
在留外国人を移民という視点で捉えると、大きく2つのグループに分けられる。1つは、技能実習や特定技能といった在留資格で、主に人手不足解消のために入ってくるグループ。もう1つは、「経営・管理ビザ」の取得で入国するグループと、日本に留学した後に「技術・人文知識・国際業務(技人国)」などへ切り替え、長期滞在や永住を目指すグループだ。
つまり、前者は主に単純労働に従事する「労働移民」で、後者はいわゆる「高度人材」である。そこで、現在の制度設計を見ると、全体として、定住者、移民を増やす方向になっていると言える。日本の深刻な少子化人口減による人手不足を、移民で補おうというのだ。
■シンガポールのように厳格管理を!という声
外国人問題が議論されるとき、よく聞くのが、シンガポールのように「働いたら帰れ、妊娠したら帰れという徹底したルールを設ければいい」という声だ。
たしかにシンガポールでは、建設や家事労働などの単純労働に従事する労働者には期限付きの「労働許可証」を出すだけで、家族帯同や定住を原則認めていない。それに反して、高度人材には「雇用許可証」を出して、定住への道を開いている。高度人材には、国の発展のためにどうぞ長くいてくださいというのだ。
しかし、日本でこれができるだろうか?
2025年度のシンガポール平均月収は7500シンガポールドル(約91万円)。それに比べ、日本は平均月収が約33万円である。高度人材にいたっては、報酬の差はもっと大きい。
また、単純労働では、日本が時給1000円ほどなどに対し、シンガポールは10〜15シンガポールドル (約1220円~約1830円)だ。
これではシンガポールの制度を導入しようがない。シンガポール並みの賃金を払えないのだから、どんな労働移民もやって来ない。しかも、日本では世界共通語である英語が通じないので、日本語を習得しないと仕事ができない。
■外国人労働者はどこの国から来ているのか?
「失われた30年」を続けている間に、日本にやって来る移民労働者の出身国は、大きな変化を見せている。
厚生労働省「外国人雇用状況」(2024年10月末時点)によると、日本で働く外国人労働者の国別ランキングは、1位がベトナム(57万708人、約24.8%)、2位が中国(40万8805人、約17.8%)、3位がフィリピン(24万5565人、約10.7%)、4位がネパール(18万5551人、約8.1%)、5位がインドネシア(16万9539人、約5.6%)となっている。
かつては、中国がもっとも多かったが、2019年にベトナムが逆転し、以来1位を続けている。中国以前には、ブラジル、ペルーなどの南米も多かったし、イランも上位に来ていたことがある。
それが、ここ数年では、ミャンマー、スリランカ、ネパールなどが急増している。いずれも、経済発展に取り残された途上国だ。
■いずれベトナム人もやって来なくなる
国連の統計を見ると、アジア域内では、年間約590万人の労働移住が新たに発生している。このうち約半数の282万人が、UAE、カタール、サウジアラビアなどの湾岸産油国に移住している。
そして残りの約230万人が、欧米の先進諸国とアジア域内の日本、韓国、台湾などに向かっている。アジア域内の労働移住先でもっとも多いのが日本の約48万人で、次は韓国の約37万人である。
しかし、この日本の優位は崩れつつある。それは経済衰退と円安により、賃金がどんどん目減りしているからだ。
いまや1人当たりのGDPで韓国、台湾に抜かれたため、アジア域内からの労働者は、日本より韓国、台湾を目指すようになっている。最近のベトナムの労働移民の傾向を見ると、このことは顕著だ。
また、フィリピンは、世界最大級の家事労働者と建設労働者の送り出し国だが、賃金が安く英語が通じない日本は見向きもされなくなっている。
■労働移民輸出国と1人当たりのGDPの関係
経済格差が労働移民を発生させる。貧しい国から豊かな国へと人々は移動する。世界に数多くある労働移民輸出国は、移民受け入れ国と比較して1人当たりのGDPが低い。
とはいえ、最貧国では国外への移動手段や費用を負担することができないため、移民受け入れ国の優遇措置や仲介業者が入らないと労働移民は発生しない。
したがって、経済がある程度になって、移動資金が確保できるようになると、労働移民は急増する。そのレベルは、1人当たりのGDPが6000ドルから1万ドル程度とされる。
ベトナムは、これまで5000ドル以下だったので、仲介業者が入ることが多かった。しかし、2025年は5000ドルを超える見込みとされるので、今後、ベトナム人は日本よりも稼げる国を目指すだろう。
近年、日本へのネパール、スリランカ、バングラデシュといった国々の労働移民が増えている。これらの国は、いずれも1人当たりのGDPが低い。
ミャンマーからの労働移民も増えているが、ミャンマーの1人当たりGDPは1000ドル前後とされる。ただし、軍事政権が支配して内乱状態にあるため、移民というより、国外逃亡する若者が後を絶たない。
■中東、アフリカの貧困国からしか移民は来ない
以上のことから言えるのは、今後、日本経済の衰退と円安が続く限り、日本が望むような労働移民はやって来ないということだ。単純労働者はもちろん、高度人材など、よほどのことがない限りやって来ない。
日本社会に馴染みやすい東南アジア諸国から労働移民が期待できないとなると、中東やアフリカの貧困国に頼ることになる。頼るというか、現在のような中途半端な移民政策を続けている限り、必然的にそうなる。アフリカの主要な移民送り出し国としては、ナイジェリア、ガーナ、ケニアなどが挙げられる。とくにケニアは、移民送り出しを国家プロジェクトして行っている。
はたして高市政権はどのような未来図を描いているのだろうか? 時代錯誤の現状認識で、小手先の規制強化と中途半端な移民政策では外国人問題は解決しない。そればかりか、近い将来、日本は移民受入国から移民送り出し国に転落する。