Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/9e6f9d8f644c39d0e57724f9613f4b5bfa6b5acc
ネパール人男性と結婚し、ネパールに住んで10年以上が経つアキミさん。2人の子どもに恵まれたが、長男に発達障がいがあることがわかり、公的支援が整っていないネパールの環境を知った。現在は知的障がいを持つ人々への支援活動も行いながら「ネパールの環境を変えていきたい」と奮闘している。 【写真】封筒作りの作業中(アキミさん提供) そんなアキミさんに、ネパールの障がいを持つ人を取り巻く環境や支援活動について聞いた。
ネパールの知的障がい学校との出会い
アキミさんがはじめてネパールに行ったのは学生の頃だった。初日に現在の夫「ラムさん」と出会い、それからネパールに通う年月を重ね、結婚。ネパールの首都・カトマンズでお土産屋さんを営むラムさんを手伝った。 当初、その店は商品が壁にぎっしりとうずたかく積まれているような状態で、売上もよくなかったという。しかし、大学で芸術学科を専攻していたアキミさんがディスプレイを見直すと、徐々に売上も伸びていった。 「夫はすごくいい人で、この人と結婚できてよかったし、ビジネスもうまくいってるし、私はすごくラッキーだと思ってました」 そんなとき、青年海外協力隊としてネパールで活動していた日本人女性が店を訪ねてきた。 「知的障がいのある子どもが通う学校でものづくりを教えていて、その卒業生たちが作った紙袋を買ってくれないか」という相談だった。 ここからアキミさんはこの学校に紙袋をオーダーし、知的障がいを持つ人たちの仕事を生み出すことに注力していく。
長男の診断とネパールの支援状況
その後、アキミさんの長男に自閉症の診断が出る。3歳を過ぎても言葉が出ず、病院で受診して判明した。 障がいについて調べていくなかで、アキミさんは自身も「遅刻や忘れ物が多い」「こだわりが強い」「団体行動が苦手」などの発達障がいの特性に当てはまっているのではと気がついた。 「息子のことは悲しかったし、なんで?とも思いました。でも、自分も発達障がいなのかなって思って『ああ、だから今まで生きづらかったんだな』と気づき楽になった部分もあったんです」 ネパールは支援が行き届いていない部分もたくさんある。Instagramでイラストを投稿しているアキミさんは、長男が診断を受けたときのことも描いている。 病院に行っても2時間以上待たないといけない、先生と話す時間が短いなどの環境で、ペアレントトレーニングにも半年以上待ってやっと行けるようになった。 ※ペアレントトレーニング…障がいを持つ子どもの保護者が子どもの行動を理解し、その子に合わせた対応を身につけるためのトレーニング ネパールでは支援が受けられる施設の数も少ない。アキミさんたちが通うカトマンズの施設には、約200キロ離れた街からやってきて、数ヶ月部屋を借りて通うネパール人もいるそうだ。 周りからも「日本に帰った方がいい」と散々言われたが、家族と話し合って帰らない選択をした。 「長男のことをきっかけに『私がネパールに来た意味ってこれだったんだな』と思いました。ネパールはあらゆる支援が足りていません。私は教育の専門家ではないけれど、お土産屋さんとして私にもできることがあるって思ったんです」
アキミさんが描く夢
「お土産屋さんとして」アキミさんがやっているのが、前述の知的障がいを持つ人が通う学校への支援活動だ。ここの卒業生に紙袋や封筒をオーダーし、アキミさんが関わる前は月に300円ほどだった給料が、今では約3,000円まで上がった。 現在、ネパール政府がこの学校を約400人規模のものに改修する計画が持ち上がっている。アキミさんはここでものづくり教室を行い、政府に見てほしいと考えているそうだ。 「障がいを持った人でも働けることを知ってもらえたら、他にも展開できるんじゃないかって。そういうモデルケースになれたらいいなと思っています」 現在、卒業生たちは封筒ができると「こんなにできたよ!アキミを呼んで!」とうれしそうに働いているという。 「労働を通して社会とのつながりを感じられますし、自分が役に立てることがうれしいみたいです」 アキミさんには、他にも夢がある。ラムさんの田舎に、障がいを持つ人たちが集える憩いの場を作りたいという。 「遊具があって、子どもたちが遊べて、そこで紙の商品などを作って売る…。私の子どもたちも本人たちが望めば、そこで働いてもらうのもいいかなと思っています」 アキミさんの原動力は情熱的な父親譲りの性格から生まれているのと、やはり自分の子どもにも関わるというのも大きい。 「きっと神様が私にネパールでこれをやれって言ってる気がするんです」 「お土産屋さん」という自分の強みを生かして、アキミさんはこれからもネパールの障がいを持つ人たちへの支援活動を続けていく。
中谷 秋絵
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