2018年10月24日水曜日

コンビニから病院まで外国人労働者 「移民大流入」でどうなるニッポン

Source:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20181023-00550533-shincho-soci


10/23(火) 、ヤフーニュースより
「移民大流入」でどうなるニッポン(1/2)
 少子高齢化対策を諦め、移民大流入へと政策は大転換された。コンビニから病院まで外国人労働者が従事する現況は更に変貌することになる。憎悪のマグマが滞留する欧州の失敗、東京五輪でのテロ攻撃、新たな犯罪ネットワーク……。悲劇だけが映る漂流ニッポン。

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 世界遺産に指定されるトルコ・トロイ遺跡にある木馬像を見たことがあるなら、疑問に思った方もいるはずだ。小屋や覗き穴が設(しつら)えられているのだから、中に人がいないはずはないのではないか。国家の悲劇は透けて見えていたのではないか。それを承知で破局の原因を引き入れたのではないかと。

 そんな哀しき木馬の姿が瞼の裏側に見え隠れしたのが、

〈外国人労働者 永住可能に〉(読売10月11日)

〈外国人材受け入れ拡大 政府が改正案の骨子“単純労働者にも在留資格”〉(NHK10月12日)

 といった報道だった。

 現在は大学教授や医師など、「高度な人材」に限られている就労目的の在留資格を、単純労働者を含めた人材にも広げるというのだ。

 これは、第4次安倍改造内閣が発足して最初に手をつける重点政策で、10月24日召集の臨時国会で審議される。法案が通ると、来年4月から外国人材の受け入れが拡がって行くことになる。現在127万人いる外国人労働者が、2025年までに建設や農業、介護などの分野で177万人以上に増える見通しだ。

 新たな在留資格として、「特定技能1号」と「特定技能2号」とが設けられることになった。前者の在留期間は最長で5年。後者は、1号を上回る熟練した技能を持つと認められた外国人に与えられる。在留期間に上限はなく、永住や家族の帯同も可能となる。

 要するに、安倍首相は移民受け入れ策へと大きく舵を切ったと言えるのだ。
少子高齢化対策を国外に…
「安倍政権は17年から家事支援事業や農業支援事業などについて外国人労働者の入国、在留を認めてきました。しかし、それはあくまで国家戦略特区に限った措置でした。それがここに来て、全国に跨る恰好で外国人労働者の受け入れにシフトしたのは、菅さん(義偉官房長官)の役割が大きかったんです」

 と、政治部記者。

「横浜市西区などを地盤とする菅さんに、支援者の中小企業の経営者から“労働者の不足で、このままでは経営が持たない。人手不足で倒産しかねない”といった声があがりました。それを受け、菅さんは安倍さんに熱心に働きかけたんです。移民受け入れ反対の人々を支持基盤とする安倍さんも意外に乗り気で、話は進んで行ったのです」

 日本の少子高齢化および労働生産性の低下はかねて課題であり続けてきた。人口は10年を境に右肩下がりになり、このペースで行けば65年に人口は8808万人にまで減少すると推計されている。1人の女性が産む子供の人数である合計特殊出生率は1・43だが、その一方で、結婚した女性の平均出産数(完結出生児数)は1・94に届く。少子化は非婚と少なからず関係はある。しかし、政府は手を拱(こまね)いてきたのだった。

 今回の安倍政権の政策は、少子高齢化対策の処方箋を国内ではなく、国外に求めることにした――。そのようにも読み取れる。

 東京・新宿歌舞伎町。試みにコンビニで働くネパール人男性に話を聞くと、

「働き始めて2、3年ほどになります。日本語学校を卒業し、現在は大学生で、就職は日本でしたいと考えています。この店舗は店長以外全員外国人で、ネパール人やベトナム人が多い。もう仕事には慣れたし、困った時は英語のマニュアルがあるし、先輩に聞くことができるので働きやすい。行政手続きの代行や(公共料金など)料金の支払いは対応が大変ですが、何回もやっているうちに慣れてできるようになりました。歌舞伎町のコンビニでは日本人は働きたがらないので、ほとんど外国人しかいません。たまに日本人の新人が入っても、外国人が仕事を教えることも当然多くなっています。コンビニのアルバイトは接客で日本語を使う機会が多く、勉強にもなってよいと考えています」
ロヒンギャが来たら…
 また、ある牛丼店のアルバイト3人はいずれも東南アジア出身の外国人。汁たっぷりを意味する「汁(つゆ)だく」にも難なく対応し、精励恪勤(かっきん)する姿がそこにあったのだった。

 そして日本全国の病院にも、外国人看護師が散らばっている。彼らは経済連携協定に基づいて、インドネシア、フィリピン、ベトナムから来日し、3年以内に日本の国家試験をパスしたのである。その数は18年までの累計で344人となる。

 ジャーナリストの出井康博氏によれば、

「コンビニや飲食店で働いている人はエリートです。日本人の目につかない、弁当や総菜の工場、宅配便の仕分け現場にホテルの掃除や新聞配達の現場で働いている外国人留学生たちがもっといます。日本語ができないまま日本にやってくるので、それでもこなせる職業に就くのです。彼らは酷い状況に置かれていますが、新聞やテレビでは取り上げられません。それは、新聞配達の現場で、外国人留学生が働いているという隠したい現実があるからです」

 新聞が取り上げなければテレビも報じない。それで、何もなかったことになる。

「彼らには留学できるような経済力はありません。でも政府は08年にぶち上げた『留学生30万人計画』を進めたい。人手不足の解消手段として使いたいという思惑もある。それで本来留学の対象にならない外国人にもビザを出し、出稼ぎ目的の人たちを受け入れているのが、今の外国人留学生の問題です」(同)

 他方、評論家の徳岡孝夫氏は、

「コンビニの店員や建設現場など日本の若者が敬遠する仕事をしてくれているとひと括りにするのは危ない。外国人にも色々あるんだということを言いたいです。外国人が来てくれて嬉しいとか、それが日本の明日を拓くことであるかのように言うのは早計でしょう。外国人が日本へやってくるのは、自分の国で儲からないから。例えば、ミャンマーからそういう外国人労働者を呼んだらいいというけど、竹山道雄の『ビルマの竪琴』に出てくるミャンマー人ばかりなのか。ミャンマーで問題になっている少数民族、ロヒンギャが来たらどうするのか。そして、その少数民族を抱え込んでしまったらミャンマーと日本の政府の関係はどうなるのか」

 と疑義を呈するのだった。
不良外国人
 ある捜査関係者がこんな打ち明け話をする。

「去年以降、警視庁および各道府県警は、特にベトナム人研修生が作った銀行口座が、オレオレ詐欺などに利用されていると警戒し、捜査に当たっている。彼らは来日中に作った口座を帰国時、同じ国出身の人間に売ってしまう。フェイスブックなどのSNSを通じて、何の悪気もなくね。売る相手というのが半グレや、そうしたグループと接点を持っている不良外国人なんだ。キャッシュカードと預金通帳の組み合わせで、2万から3万円で取引されているんだよ」

 例えば昨年10月、警視庁組織犯罪対策1課が、ベトナム国籍の無職の男(当時23)を犯罪収益移転防止法違反容疑で逮捕した。この事件では男の所属する犯罪グループが、同じベトナム国籍の技能実習生などから約1800口座を購入。それらを日本の特殊詐欺グループに転売したと見られている。新たな脅威としてベトナム人犯罪ネットワークが浮上しているのだ。

 こちらは些か旧聞に属するが、13年には広島県江田島市でこんな物騒な事件が起こっている。社会部デスクに振り返ってもらうと、

「カキ養殖場に当時30歳だった中国人技能実習生の男がいましてね。スコップや熊手で、経営者や従業員ら8人を殺傷したんです。男はあまり日本語が得意ではなかったため、周囲と馴染めず、別の会社に勤める同じ中国出身の知人に“一生懸命やっているのに叱られる”“社長の言うことが理解できない”と相談していました。言語の壁が孤立を招き、結果、暴発したケースです。社会の誰からも承認されないと不満を募らせ、公共の場において単独で銃などを乱射し大量殺戮を行なう、いわゆるローンウルフ型のテロが欧米で問題になっていますが、広島の事件はそうしたテロの類型に近いものだと言えます」

 東京五輪を前に耳にしたくない言葉に違いない。

(2)へつづく

2018年10月25日号 掲載
新潮社

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