Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/ee2b7ff3f37b1b13114da10329449bdd48f330e3
まさに「地獄」の様相を呈している――2021年に発生した軍部によるクーデター以降、ミャンマーでは軍事政権の国軍(ミャンマー軍)と、軍事組織としてのKNLAを有するKNU(カレン民族同盟)やカチン州、シャン州、カヤ州などの武装勢力が組織した反政府(反軍事政権)の連合的武装組織PDFの戦闘が激化している。今年に入り、軍事政権はついに18歳以上の国民を徴兵するとまで発表した。 2024年現在、ミャンマーに向けられる視線は「反民主的な軍事政権VS民主化を求めるレジスタンス的武装勢力」の構図一色に塗りつぶされているが、はたしてクーデターが発生する前のミャンマー、そのディテールに目を向けていた者がどれほどいただろうか。 本連載は、今では顧みられることもなくなったいくつかの出来事と、ふたつの腕で身体を引きずるように歩くカレン族の牧師を支えた日本人武道家を紹介するささやかな記録である。
日本庭園「合気苑」にたなびく星条旗
本間が日本館総本部に設置した「日本伝統民具展示館」は、杉本社長が創設した「小川原民族博物館」を参考にしたものだ。 情緒ある囲炉裏と床の間、そこに鎧甲と日本刀を飾った。その展示館の中には秋田県東成瀬村との交流の際に収集した古い農耕具や簑(みの)、或いは雪山を歩いたガンジキなどの伝統民具類を中心に、日本各地の古い漆塗りの食器類など約2000点を展示されている。 日本伝統民具展示館とDOMOレストランに隣接して、約300坪の日本庭園「合気苑」も作った。この合気苑は故斉藤守弘師範の監督指導のもとに造園されたものであり、日本風の松の木々を植え、太鼓橋を架けた池も作った。 春には桜が咲き、五月に青空には鯉のぼりが泳ぐ。秋は紅葉の紅葉も眺められる。夜になればかがり火が焚かれ風情のある庭園となる。この本格的日本庭園の野外レストランで、客は本間シェフが工夫を重ねて考案した居酒屋風日本料理の数々に舌鼓を打つことになる。 その日本庭園「合気苑」に、本間は高いポール(国旗掲揚塔)を立て、大きな星条旗を掲げた。日本館総本部建設に多大な貢献をしてくれたアメリカ人門下生に対して、本間が表した最大の感謝の気持ちであった。 改めて日本館総本部の全貌を紹介しよう。4000坪の敷地に総本部は建設された。160畳の大道場、120席の居酒屋風「DOMOレストラン」、約300坪の日本庭園「合気苑」、日本伝統民具展示舘、6室の内弟子部屋及び本部事務所。 この日本館総本部は1995年に完成した。本間45歳の時だった。ここから「本間学物語」の第二幕が上がる。
DOMOレストラン
DOMOレストランは、米国で権威あるレストラン・ガイド・ランキングブック『ZAGATS』(2001年版)で、全米での魅力的日本レストラン「内装の部」で、約6000軒のレストラン中トップに選ばれ、その後、毎年のように上位にランクされるようになった。 また、コロラド州および周辺諸州(150店余)におけるレストラン総合評価として、DOMO開店以来連続でトップレストランに選ばれている(ウエストワード紙)。 日本的田舎風情の外装内装と本格的日本庭園、そして居酒屋風料理を提供するDOMOレストランは、それまでの日本レストランとは全く趣を異にしていた。 たとえば、このレストランではテーブルに醤油を置かない。それだけでなく塩やコショウ、あるいはソースなどの調味料も一切置かないのだ。 DOMOレストランの特徴は、昆布や煮干しなどでダシを取る日本の伝統的な調理方法である。野菜類を豊富に使い、白米に加えて玄米ご飯も用意するなどヘルシー志向のメニューが多い。鍋物は豆乳を使ったDOMOオリジナルの健康鍋だ。 そんなオリジナリティ溢れる日本料理に本間がたどり着いたのは、デンバー貧民街でのアパート管理人時代の経験からだった。東南アジアの難民たちと、そして道場のアメリカ人の弟子たちと同じ釜の飯を食べた。その時、その料理を作っていたのは本間自身である。「毎日食べさせる彼らに、飽きさせない料理を作らなければならない」。本間はそんな思いで、乏しい食材を創意工夫しながら調理していたのだ。
スタッフの多様性
DOMOレストランのもうひとつの特徴は、コックをはじめとする従業員の多彩な人種構成にある。ほとんどが東南アジア難民の親を持つ子弟で、米国生まれのアジア人や難民認定で米国に帰化したアジア人である。山本が日参していた頃のコックはモンゴル人、ネパール人、ベトナム人そしてミャンマー人の4人であった。 前述したネパール人コックのダワは先祖代々シェルパであり、彼自身も以前はシェルパだった。伝統的なシェルパの職域はいくつかに分かれており、ダワは料理担当のシェルパであった。 国際色豊かなアジアの国々のコックがいると、それぞれの国の郷土料理をいつでも食べることができる。ウェイトレス、ウェイターは中国人、ラオス人、モン族(ラオス山岳民族)、モンゴル人、ベトナム人、ミャンマー人等だ。この従業員達の親もまた、その多くが米国への難民であった。 フロアマネジャーのシンディやウェイトレスのマエバやアナは、アメリカ生まれのモン族。米国で教育を受けた彼女たちはDOMOレストランで働きながら大学へ通っている。苦学するそんな彼女たちに本間は奨学金まで出していた。
Project Logic+山本春樹
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