Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/043247eb7096da3079f0e053fc684e67523ef31f
国の旗である国旗は当然ながら国の数だけデザインがあり、中にはユニークなものも存在する。しかし、太陽や星、海や川を描いたもの、似たような配色を用いたものや三日月や星を描いたものなど、共通点もたくさんある。そういった国旗の由来をひもとくと、国同士の「つながり」や歴史なども見えてくるという。 【図解】上下を間違え勝ちなユニオン・ジャックは3つの旗を組み合わせたことが由来 国旗にまつわるエピソードと世界の国々の「つながり」を紹介したのが『世界の国旗「つながり」図鑑』(グッドブックス)だ。たとえば国旗の「つながり」についての一例を紹介すると……。 世界の国旗には太陽がいっぱい 日本をはじめ世界の国旗にはいろいろな太陽が登場する。日本は〝朝日〟だが、ポーランドの赤は〝夕陽〟の赤。また、一見太陽だけど実は満月、という国も。 イスラム教徒の多い国の国旗には緑白黒赤が多い 緑白黒赤はイスラム帝国初期の4代のカリフ(宗教指導者)の色。預言者ムハンマドのターバンの色といわれる緑が特に多く、青を使用する国は例外的 赤黄緑はエチオピア国旗に由来する「アフリカの色」 1960年ごろに次々と独立したアフリカの国々は、いちはやく独立したガーナが「アフリカの連帯」を理想に最古の独立国であるエチオピアの国旗を手本にしたことから次々とこれにならった。 等々、200ヵ国の国旗が図版入りで紹介され、間違えやすい国旗もおぼえやすい構成となっている。 著者の吹浦忠正氏は大学2年生だった当時、すでに国旗に関する著書があったことから1964年の東京オリンピックの準備委員会に参加した人物だ。その際の話はNHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』や小学校6年生用の教科書でも紹介されている。 吹浦氏はその後も1972年の札幌、1998年の長野、’21年の東京をはじめ、数々のオリンピックや国際大会に関わった国旗に関するオーソリティーだ。国旗に関する著書がこれまで61冊、雑誌などでも国旗に関するコラムを連載しているという同氏に、国旗に関する面白エピソードを教えてもらった。 ◆間違えたら大変なのに間違えがちな国旗の上下左右 実は上下左右がない国旗は日本を含め14ヵ国しかない。国旗の扱いによっては間違えがちなことも。とくに公式の場では神経を使うという。 「よくある例で言えば、ユニオンジャック。ユニオンジャックには国の成り立ちがデザインされていて、イングランドの聖ジョージ、スコットランドの聖アンドリュー、アイルランドの聖パトリック、それぞれの旗を合体させています。このアイルランドの赤の斜めの線を左回りにずらしているのを分からずに逆さにしてしまうと、柄が変わってしまう。 都内にとある英国風パブがあるのですが、屋外・屋内合わせて13枚国旗があり、そのうちの9枚が逆さまになっていて、何度注意をしても改められません。そもそも、ユニオンジャックに上下があるということを分かっていないのでしょうね。 また、あるインド料理屋も、国旗が逆さまでした。旗を立てているのではなくて、もう看板に描いちゃっている国旗で。直すのに3年かかりました」 そういった間違いに気づいてしまうのは吹浦氏ならではかもしれない。 ◆「裏表」がある場合も……。サウジアラビアやブラジルは〝対策ずみ〟 「サウジアラビアの国旗は、そこで描かれている聖句(シャハーダ)が裏から見ても読めるように、2枚貼り合わせられています。また、半旗にはしないことになっています。 ブラジルの国旗では、青い円の中に『ORDEM E PROGRESSO(秩序と発展)』という言葉と星が描かれていますが、裏から見てもこの部分が逆にならないように、その部分だけもう1枚裏側にも貼り付けてあります。どんな小さいブラジル国旗でもそうで、感心しますね」 ◆カナダ国旗の赤は海をあらわしている? 国旗には、その地理的な状況も表される。国が面する海やその国土を流れる川を青で表すのは典型的な例なのだが、カナダの場合はいろいろな事情があったようで……。 「カナダの国旗は、1964年12月に法律的に変わり、翌年の2月15日から今の旗になりました。実は、タイミング的に1964年の東京オリンピックで一番泣かされたのがカナダの国旗でした。向こうは『東京オリンピック前に変えたい。なので、カナダの国旗はギリギリまで準備しないでくれ』ということでしたが結局間に合いませんでした。 それは、フランス系住民とイギリス系住民のぶつかりがあったからです。それまでの国旗はユニオンジャックと紋章が入っていたため、イギリス的ではないものに変えることだけは決まった。赤のメイプルリーフ3枚に、両サイドが太平洋と大西洋を表す青のものが提案されましたが、『それだと垂れている時にはフランス国旗に見える』と、イギリス系が反対。結果、メイプルリーフ1枚に海をあらわす両サイドが赤というものになったのです」 ◆ネパール、スイス、フィリピン…クセが強すぎる国旗たち 「ネパールは世界で唯一、四角形ではなく、三角形を合わせた形をしています。1962年に憲法で国旗を決めましたが、英文だと743単語で規定しているぐらいに厳密。2つのマークは、月と太陽、ヒンズー教と仏教を表しています。王様と将軍のマークでもある。現在は王政ではありませんが国旗は変えていない。それは珍しくて今はネパールだけです。 スイスの国旗はその形状が正方形です。ネパールやスイスについては、オリンピックなどでその国旗の扱いに苦慮するところです。『他国と同じ縦横比で』と求められます。 また、フィリピンの国旗は、戦時には勇気を表す赤を上にして、平時には太平洋や平和を表す青を上にします。そんな国は他にありません」 ちなみに日本の日の丸が〝昇る太陽〟であることについて法律的根拠はないそうだ。しかし、伊藤博文が明治4年にサンフランシスコで講演した中で、『日の出の太陽であって、今の我が国を象徴するもの』と語っており、また、当時の国家元首であった明治天皇の和歌に『ひがのぼるはた……』というものがあるため、公的に認められているという。 「私は82歳で、国旗にはまって、もう70年以上。それでも国旗には新しい発見が毎週あるんです!国旗は歴史・宗教・民族・哲学・産業などを集約しており、奥が深いのです」 吹浦氏が語るとおり、小学生以上向けの同書だが大人が読んでも飽きがこないほどに国旗の世界は奥が深いのだ。
FRIDAYデジタル
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