Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/861e23568b1bd215f3ed1a4a9da88d2f28b0dcb0
(ブルームバーグ): ソーシャルメディア上のジョークとして始まった動きが、インドの政治体制にとって深刻な頭痛の種になりつつある。雇用不足や教育制度を巡る一連の問題に不満を抱く若者の支持を集めているのが、「ゴキブリ人民党(CJP)」と名付けられた運動だ。
今年5月の発足以来、ゴキブリ人民党はインスタグラムで約2700万人のフォロワーを獲得した。これはモディ首相率いるインド人民党のフォロワー数の2倍を超える。
この動きは全国規模の学生主導の抗議運動へと発展し、政府も無視できなくなった。7月25日には全国統一試験を巡る不祥事を受け、プラダン教育相が辞任に追い込まれ、初めての大きな成果を挙げたと位置づけられている。
ゴキブリ人民党とは何か
この風刺的な運動は5月16日に始まった。インド最高裁のスーリヤ・カント判事が法廷で、一部の失業中の若者を「寄生虫」や「ゴキブリ」と表現したことがきっかけだった。この発言はソーシャルメディアで反発を招いたが、その後、カント判事は自身の発言の一部がメディアによって誤って伝えられたと述べた。
これに反応したのが、米国で就職活動中だったインド人大学院生アビジート・ディプケ氏(30)だった。ディプケ氏は「ゴキブリ人民党」のパロディーサイトを開設。インドの「怠惰で失業中で、忘れ去られた」人々の政治的な居場所であり、既存政治から疎外されていると感じる何百万人もの若いインド人の声を代弁すると説明した。
このオンライン現象は急速に広がり、教育、雇用、政府の説明責任に焦点を当てた全国的な運動へと発展した。インド主要都市では定期的な抗議活動も行われるようになった。
勢いは、気候変動の活動家ソナム・ワンチュク氏がインドの教育制度に対する説明責任の強化を求めてハンガーストライキを開始したことでさらに加速した。ワンチュク氏は20日以上の断食の末に入院し、主催者側は7月20日にニューデリーの国会議事堂へのデモ行進を呼びかけた。抗議活動では、警察が催涙ガスや警棒を使って数千人のデモ参加者を排除したとの批判が出た。
インドの若者はなぜ不満を募らせているのか
インドは依然として世界で最も高い成長率を誇る主要な経済国だが、毎年労働市場に加わる何百万人もの若者に十分な質の高い雇用を提供できていない。政府統計では15-29歳の失業率は約10%とされるが、経済学者は実態を過小評価していると指摘する。アジム・プレムジ大学の調査では、25-29歳大卒者の失業率は2023年時点で約20%と推計された。
さらに、社会的に成功するための手段とされてきた教育制度を巡って、その信頼を揺るがす問題も相次いだ。
5月には、試験問題が事前に漏えいしていた証拠が見つかったことを受け、220万人超が受験予定だった医学部入学試験が中止された。同じ頃、インド最大級の高校卒業資格試験の一つでは採点ミスなどを訴える学生が相次ぎ、公的試験の質と信頼性に疑問が投げかけられた。
ゴキブリ人民党のリーダーたちは、若いインド人の実情からかけ離れた政治家が、若者の懸念に耳を傾けず、問題解決にも取り組んでいないと主張している。
インド人口の約65%は35歳未満だが、有力政治家の多くは60-70代で、モディ首相は75歳だ。
モディ首相にとってなぜ懸念なのか
教育相の辞任に至った一連の抗議活動は、モディ政権にとって異例の痛手となり、ゴキブリ人民党の運動が実際の政治的影響力を持つようになったことを示した。
ゴキブリ人民党は、南アジアで近年広がった他のZ世代運動と比較されている。隣国バングラデシュやネパールでは、現実感覚を欠いたエリート層に不満を募らせた若者が街頭に繰り出し、不人気政権を倒した。ただ、これらのデモでは暴力も発生しており、ディプケ氏は自身の団体はそうした手法を否定するとしている。
若いインド人の政治参加の高まりが、モディ首相率いるインド人民党の支持基盤を弱めている可能性を示す動きもある。
南部タミルナド州では、若い有権者の支持を受けた51歳の映画スターが5月の選挙で予想外の勝利を収め、長年州政を支配してきた政党を破った。インド最多人口を抱え、国内最大の選挙区でもある北部ウッタルプラデシュ州でも選挙が今後予定されており、若い有権者がインド人民党から離れているかどうかが注目される。同党は2024年の総選挙でも同州で期待を下回る結果となり、モディ首相は議会で単独過半数を確保できなかった。
政治的な好機とみたモディ首相のライバルの一部は、ゴキブリ人民党への支持を表明している。また、学生が催涙ガスや警棒で排除される様子が報じられたことで、この運動への認知は首都ニューデリーをはるかに超えて広がった。ただし、この勢いを維持したまま、全国レベルでインド人民党に対する深刻な脅威となるかどうかは、なお見通せない。
原題:Why India’s ‘Cockroach’ Movement Is a Worry for Modi: Explainer(抜粋)
(c)2026 Bloomberg L.P.
Aryan Gupta, Shruti Srivastava
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