Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/5fe2d5e3c4ce83b49fb65ad863b3ab80ef76fbca
新宿立ちんぼ・2026夏#2
かつて、新宿・大久保公園周辺に並んでいた「立ちんぼ」の女性たち。警察による取り締まりが続く現在、大久保公園前で客待ちする女性の姿はかつてより目立たなくなった。一方、女性の一部は周辺のラブホテル街へ場所を移し、歩きながら相手を探す“歩きんぼ”と呼ばれる形で客待ちを続けている。 【画像】かつて「ヘイ!」と過激な服装でいきなり腕をつかんできた立ちんぼの現場写真と、ほとんど誰も立たなくなった現在の大久保公園 一方で、公園周辺には今も、目当ての女性を探して歩き回る男性の姿が目立つ。女性が減り、警察の目も厳しくなったこの場所に、なぜ彼らは通い続けるのか。歌舞伎町になじみのない29歳の女性記者が、大久保公園近くのホテル街を1人で歩いてみた。
「レアな子を狙う」大久保公園に残る“買う側”の歪んだ論理
8月某日の夜、東京・歌舞伎町の大久保公園にほど近いラブホテル街には、何人もの中年男性が立っていた。 道行く女性に目を向ける者がいる一方、顔見知りらしい男性同士で言葉を交わしながら、周囲の様子をうかがう者もいる。「立ちんぼ」とみられる女性よりも、女性を探す男性のほうが多いほどだった。 記者がホテル街を1人で歩き始めると、同じ中年男性が何度か目の前を横切り、ほどなく「すみません」と呼び止めてきた。取材目的で訪れていることを伝えると、男性は「残念です」と答えて立ち去った。 この日、ホテル街には、SNS上で“交縁ハンター”を名乗る「キング」と呼ばれる男性の姿もあった。本人によると、ここ4〜5年で買春した女性の数は「4桁には届かないが、3桁は確実」だという。取り締まりによって女性の数が減った一方、頻繁に姿を見せる女性ほど、男性客から買われにくくなると話す。 「いつも立っている女の子を“いつメン”と呼んでいるんですけど、今日残っているのも、その子たちです。ただ、おじさんたちは、なかなか来ないレアな子を狙うので、“鬼立ち”している女の子はあまり買われません」(キング) “鬼立ち”とは、何日も続けて路上に立つ女性を指す、男性客の間で使われる隠語だという。 女性の数が減り、目当ての相手が見つかるとは限らない。それでも路上に立つ女性を選ぶ理由を尋ねると、キングと呼ばれる男性は、性風俗店とは異なる点を挙げた。 「性風俗店だと、写真と実物がかなり乖離していることがあります。でも、ここなら顔を直接見られるので、ごまかしようがないですし、自分好みのルックスを選べるのが大きいです。あとは店に支払う分がないので、金額も交渉できます」(キング)
「男祭り」「キョウダイ」常連客同士で生まれる独自のつながり
20年以上前から歌舞伎町で立ちんぼの女性を買ってきたという男性A(70代)も、「立っている回数が多くなると、バリューが下がる」と話す。では彼は女性に何を求めているのか。 「普通の女の子と遊びたいんです。ホストやメンコン(メンズコンセプトカフェ)が好きな女の子もいますが、コロナ禍には、アルバイトのシフトを削られ、足りない生活費を稼ぎに来る子も珍しくありませんでした。高額な学費や留学費用を工面するため、短期間だけ稼いで、ぱたっと来なくなる子もいます。 遊んでいる僕が偉そうなことは言えませんが、昼間も頑張っていて、それでもお金が足りない普通の人がいいんです。夢を買いに来ているようなものです。 同じ短期間でも、地方から旅行感覚で来る女性とは遊びません。実家に暮らしながら親の知らないところでこんなことをやっているのかと思うと気の毒になります。 最近は携帯代を払うために立っている子もいますが、『そんなことのために、これをやるのか?』という気持ちになります。やっていることは同じなんですけどね」(A) Aは、女性の親を「気の毒」としながら、「お父さんだって、できれば娘くらいの子とやりたいと思ってるんですよ」とも話した。その身勝手な倫理観に、記者は言いようのない気味の悪さを覚えた。 実際、男性客の中には、娘を持つ父親もいるという。何度も足を運ぶうちに男性客同士が顔見知りとなり、独自のつながりも生まれているようだ。 月に2度、千葉県から通う男性B(60代)の言葉からも、男性客同士の距離の近さがうかがえた。 「もともとは近くの出会いカフェで遊んでいたんですけど、そこで知り合った友達に勧められて、5年くらい前から来るようになりました。今日は15時くらいから来ていますが、その時間にはすでに警察官が歩き回っていました。 女の子も隠れたり、戻ってきたりしていますね。女の子が少なく、男ばかりのときは、仲間内で“男祭り”と呼んでいます。顔見知りの男性客は何人もいますし、同じ女性を買った“キョウダイ”もいます」(B) 取材を終えようとしたところ、Bは「独身で持ち家もあります」と切り出し、「僕の子孫を残しませんか。かわいい女性との間に女の子が生まれたら、きっと溺愛すると思うんです。ダメですか?」と記者に持ちかけてきた。記者が「ダメです」と即答すると、Bは気に留めた様子もなく笑った。 週に3回ほど訪れる男性C(40代)は、大久保公園周辺の現状について、女性を買うためだけの場所ではなく、中年男性たちのたまり場にもなっていると話す。常連女性を指す“いつメン”だけでなく、“いつメンおじ”と呼ばれる男性客も100人以上いると言い、それぞれにあだ名がつけられているそうだ。 「ここに来ると、誰かしら知り合いがいるので、女の子も交えてしゃべったりしています。定年退職した高齢者が、女性を買わずに会話だけを目的に来ることも珍しくありません。女の子も『暇だしいいよ。その代わり、コンビニでおごって』みたいな感じで応じてくれます」(C)
「立ちんぼ」がいなくなっても…消えない需要
いっぽうで、周辺を行き交うのは、日本人の常連客だけではない。取材を続けていると、自転車に乗った外国人男性から「イチゴー、いい?」と声をかけられた。取材で訪れていることを伝えて話を聞くと、近くで働いているという、ネパール出身の男性(30代)だった。 ホテル前で待機する立ちんぼの女性たちを「迷惑に感じている」と話す一方、「好みの女性がいたら、たまに買う」とも明かした。 日本人男性客らによると、「以前は観光で訪れた外国人が多かったが、最近は、日本で働く外国人男性の姿が目立つようになった」と話す人もいた。前出のCは、その変化についてこう話す。 「フードデリバリーの配達員などもよく見かけますよ。日本人のおじさんよりもアクティブです。女性をじっくり見定めるというより、片っ端から声をかけています。観光客のように羽振りがいいわけではなく、値下げ交渉にも積極的です」(C) 取り締まりによって、大久保公園前に並んでいた女性たちが並ぶ光景は目立たなくなった。しかし、買い手となる男性たちは周辺に残り、顔なじみを増やしながら通い続けている。 約2時間にわたってホテル街を歩くなかで、記者は10人以上の男性に声をかけられた。「いくら?」と尋ねられたほか、取材で訪れていると伝えた後にも、「見返りある?」「何かしてくれる?」と聞かれることがあった。 女性たちが“歩きんぼ”となり、買い手も相手を求めて歩き回るようになった今、その声は買春目的とは無関係にホテル街を歩く女性にも向けられていた。 ※ 現行の売春防止法では、売春することだけでなく、その相手方となることも禁止されている。ただし、成人同士の売買春そのものには罰則がなく、売春目的で公然と客待ちや勧誘をする行為などが処罰の対象となっている。 買い手側への規制強化や罰則の導入の是非など、法務省では2026年から売買春をめぐる法制度の見直しについて検討が進められているところだ。 取り締まりの強化によって、大久保公園前に女性たちが並ぶ光景は見えにくくなった。しかし、場所を移した女性たちと、その相手を探し続ける男性たちがいる。「立ちんぼ」が見えなくなっても、買う側の需要まで消えたわけではない。罰則の導入も含めた、買い手側への対策が急務だろう。 取材・文・撮影/山川りんか 集英社オンライン編集部ニュース班
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